<駐在員コラム>【タイ】タイ人は香り好き?! バンコクの香り系商品事情
はじめに
2018年、バンコクに赴任した当初に住んでいたコンドミニアムの部屋のニオイを解決するため、消臭剤を散々探し回った挙げ句、日本では当たり前と考えていたような無臭化する効果のある製品が1つもないことに気付かされた。一方で日本とは異なり、シャンプーやボディーソープ、柔軟剤といった商品を始め殺虫剤に至るまで、多くの日用品には様々な香りが取り揃えられていることにも驚かされた。今回は店頭で目にすることができる多様な香り系商品について紹介したい。果たして、タイ人はそういった色々な香りのする商品をどのように生活に取り入れているのだろうか。
ボディー洗浄剤
香りに重点を置いたブランドとしては、Sabai Aromが見られる。気持ちいい香りという意味である。
フランスからの輸入ブランドYVES ROCHERのような99%オーガニックというような商品であっても、やはり香りのバリエーションは少なくない。
直接香りとは関係ないものとしては、アーモンド、ティーツリー、きゅうり、トマト、アロエのような商品もある。近年流行した炭をふんだんに使ったようなChacoalogyというブランドもボタニカルや天然素材などの謳い文句とともに200バーツ以上の高価格帯として目にするようになった。
それぞれどれだけメジャーなのかは定かではないが、消費心をあおるような意欲的商品は後をたたない。因みに、こういった商品はただ単にタイ人だけをターゲットとしているとは限らないと感じる。年間3800万人もの外国人観光客を抱えるタイだからこそ、お土産需要という観点からも捉えてゆく必要があると考えている。
制汗剤
制汗剤に関しては、香りの訴求もあるものの、どちらかと言えば機能訴求が中心の印象だ。持続効果が48時間と謎に長い制汗効果、ドライ、あるいはホワイトニングというようなものが見られる。このカテゴリーに関してはもしかすると日本の方が香りのバリエーションが多いのではないかという気もしている。
洗剤・柔軟剤
ボディー洗浄剤に並んで香りバリエーションが豊富な商品といえば、洗剤・柔軟剤だろう。ボディー洗浄剤との違いは、食べ物系の香りではなく、花や香水が中心となっていることである。柔軟剤については、香りの訴求がほぼ全てで、柔軟剤と言いながらも、繊維への効果や仕上がりに関する機能訴求は無いに等しい。TVのCMを見ても汗のニオイといった悪臭に対する効果を中心にしている。あるCMでは、主人公が太った小学生の男の子という設定で、確かに遊び盛りで汗のニオイや汚れなどが気になるとは思うものの、子供のワキのニオイを取り上げている点で、日本のように靴下の汚れを扱う感覚との違いを感じさせられた。
手洗いで洗濯をしている家庭もそれなりに多い中、洗濯機を使用している家庭では柔軟剤は確かにニオイ消しとしての役割が期待されていると思う。実際、とりわけ縦型洗濯機の洗濯槽について言えば、カビが発生しやすいのだ。以前住んでいたコンドミニアムの縦型洗濯機の洗濯槽は相当カビが発生していて、柔軟剤を使って洗濯をしても何か特殊なカビ臭さが残っていた。水質が硬水ということもあって、洗剤成分が洗濯槽から完全に洗い流されにくいという話を聞いた。それが原因でカビが発生しやすいそうである。そのため、洗濯槽洗浄サービスも一定数存在している。現在はドラム式洗濯機のあるコンドミニアムに転居したので、洗濯物を干した後に柔軟剤の香りを強烈に感じる。洗濯時の水温が60度と高温のため、洗濯槽にカビがないことと使用水量が少ないことと関係があるのかもしれない。
殺虫剤
南国生活のつきものとして、害虫はどうしても身近な存在となる。蚊やゴキブリがそれだ。蚊取り線香は伝統的な商品として、未だに定番の蚊よけ商品となっているが、その中でも一番人気はラベンダーの香りが不動の存在となっている。ラベンダーの効果がどのように認識されているかは定かではないものの、多くの人がこれを好んで選んでいるのは事実である。 ゴキブリ用の殺虫スプレーについても、ラベンダーを始め、アロエなど複数の香りが用意されている。使用後のニオイは不快なものよりも、好ましい香りの方が良いとはアタマでは分かるものの、ニオイを嗅ぐということは吸気することなので、できれば意識したくないと考えるのは私だけであろうか。
芳香剤
前述のように炭を使った商品がボディー洗浄剤等で人気を博している。同様に芳香剤カテゴリーにおいても、炭を訴求した商品がある。炭成分が不快なニオイを吸着し消臭するという効果を期待して購入をしたのだが、驚くべきことに何らかの香り(嗅いだことのないニオイ)が、浮遊するニオイを上書きするという文脈の商品であることを購入後に知らしめられることになった。しかも、全くもって良い香りではなく、商品の目指すところは未だ持って謎である。
まとめ
香り系商品文化圏という言葉は、タイ、少なくともバンコクには当てはまっているだろう。ショッピングモールに行けば、ほぼ全てのフロアにディフューザーを取り扱うお店があり、色々な香りがない混ぜになって漂っている。スーパーやドラッグストアを見渡しても、様々な香りバリエーションが目白押しだ。
一方、街中やオフィス、飲食店に行っても明らかに香りをまとっていると感じるようなタイ人に出くわすことは稀で、多くの場合は欧米人の香水がほとんどだ。
これだけ香り系の商品が流通していて、消臭系商品が見当たらないところも見ると、少なくとも日本人のような「完全無臭」に対する飽くなき探求という方向性は今の所見いだすことは出来ない。
これは完全に想像だが、タイ語で「ジュート」という味覚を表現する言葉に関係するのではないかと思っている。「ジュート」という言葉の意味は「味が薄い」で、日本の懐石料理がその典型だと思うが、要するに「不味い」ということだ。タイ人が日本旅行に限らず海外から帰ってきて最初に食べたい、または早く帰って食べたいと思う料理はソムタムだ。辛くて、甘くて、はっきりしたソムタムの味。香りも芳醇でガツンと来る。こういった味覚をベースに持っていることと、香りに関する感受性は無関係とは思えない。それは仄かな出汁文化ではなく、より分かりやすい味や香りに対して抱く安心感なのかもしれない。
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執筆者プロフィール
青葉 大助(あおば だいすけ)
タイ在住40代男性リサーチャー。過去に訪問した調査実施国数は30か国以上。当該国の消費者にとってのベストを求め、常に彼らの気持ちに寄り添うことを信条としている。
1日約1000回閲覧される自身の世界グルメ投稿もタイを中心に意欲的に継続している。 -
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インテージ
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- 2019/04/22
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