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<駐在員コラム>【インドネシア】近代文化と伝統が融合するインドネシア

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目まぐるしく発展を続けるインドネシアの大都市

この記事を読んで頂いている読者の皆さんは、「インドネシア」と聞いて何を思い浮かべるだろうか?もしかすると、南国のリゾート地「バリ」をイメージされる方も多いのではないだろうか。

私が住むここジャカルタは、日本から直行便でおよそ7時間、人口は約1,000万人の大都市。ジャカルタ都市圏(インドネシアでは周辺都市の頭文字を取ってJABODETABEKと呼ぶ)まで含めると人口約3,100万人で、インドネシア総人口約2億4000万人のうち、10%以上がこの地域に集中している。

ジャカルタ市内ではインフラ整備が進んでおり、年内にMRT(都市高速交通)が完成する予定だ。ただし、現在のところは都市渋滞が激しく、日によって何時間も車内に缶詰状態になることもある。街中には大型モールがいくつもあり、週末になると買い物客でごった返し、周辺道路は大渋滞する。ジャカルタは、ヒト・モノが動き、インフラ工事が至る所で行われ、目まぐるしい成長を日々続けている。

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伝統文化が近代生活にうまくブレンド

大小約1万3000もの島々によって構成(出典:Wikipedia)されるインドネシアは、本当に多民族国家だと感じる事が多い。ここジャカルタだけでも、ジャワ人やベダウィ人、スンダ人や中華系、バタック族などの多くの民族が共存している。

ここで暮らして一番印象的なのは、伝統と最新トレンドがうまく融合されていることではないだろうか。街行く人々のファッションを観察していると、頭にはヒジャブ(*1)を被り、トレンドファッションに身を包む若い女性や、バティック(*2)シャツを着て足元は欧米系スポーツメーカーの最新スニーカーを履く若い男性など多く見受けられる。
また、筆者は頻繁に配車アプリ・Grabを利用するのだが、スピーカーから流れてくる音楽も多種多様だ。ローカルミュージックから、宗教的な音楽、西洋ポップスやロックなど、非常に幅広い。

伝統や宗教を生活の主軸としながらも、外の文化やトレンドを生活の一部として入れていく、そんな柔軟性をもった人々だなというのが、一年暮らしてみた筆者の印象だ。

1:イスラム教の女性が頭を覆う布製のスカーフ

2:伝統的なろうけつ染め布地

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ローカライズした商品で日本企業も参戦

外のものを柔軟に取り入れるインドネシア市場に参戦し、活躍している日本企業の例を3つ紹介しよう。一社目は、ファッションの分野でこの市場に入り込み、成功を収めている世界的衣料品メーカー、ユニクロだ。筆者の自宅近くのモールに新装オープンした際に覗いて驚いたのが、ユニクロ製バティックシャツが売られていたことだ。一般的なバティックシャツよりもモダンな柄とカットだが、「バティックモチーフ」として販売されていた。毎週金曜になると、公務員はバティックシャツの着用が義務付けられているようだ。また、一般企業でも金曜になるとバティックシャツを着用する男性が多く見受けられる。衣料品メーカーとして製造・デザインの強味を活かし、この生活習慣にうまく入り込んだ良い一例ではないだろうか。

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https://www.star2.com/9より引用

1社目で紹介したバティックシャツに関連して、消費財メーカー花王がインドネシアで発売している
バティック洗剤の例を紹介しよう。水の違いなのか、洗濯機の性能か、または染料の違いかは分からないが、洗濯をすると度々衣類が色落ちしてしまう。筆者も何度かお気に入りのシャツを台無しにしてしまった経験がある。カラフルな発色のバティックシャツなど洗った日には、全てがミックスされ変色してしまうのではないかと不安になることもある。そんな消費者心理とインドネシアの生活実態をうまく掴んでいるのが、このバティックシャツも洗える色柄用洗剤ではないか。ジャカルタオフィスで働くスタッフの家族にも、この洗剤を愛用している者がいる。バティックシャツには特別なケアが必要なため、洗濯の必需品になっているようだ。

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https://www.kao.com/id/より引用

最後に紹介するのは、生活に欠かせない照明器具のデザインにバティック柄を取り入れたパナソニックだ。LED照明にインドネシアの伝統文化を取り入れることで、エレガントな生活を演出してくれるというのが、この製品のデザインコンセプトのようだが(ウェブサイトから)、技術と文化がうまく融合した、非常に興味深いケースではないだろうか。

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https://panasonic.net/es/idより引用

今後の可能性

インドネシアはバティックのように非常にカラフルな文化だ。様々な色の糸が折りあい、独特のカルチャーを形成している。今後進出を検討されている日本企業が、インドネシアが織りなす布の一本の糸となり、この市場に参入されるのを応援できれば嬉しい。某歌手の歌に出てきそうな締めくくりになってしまったが、是非インドネシアにお越しの際には、このカラフルなカルチャーを体験して頂きたい。


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    執筆者プロフィール
    髙山 貴芳(たかやま たかよし)

    インドネシア・ジャカルタ在住の男性リサーチャー。ジャカルタに越して早1年。悪名高いジャカルタの渋滞にも慣れ始め、中華系インドネシア人に間違われる事も・・・インドネシア国内出張で島から島へ旅する、さすらいのリサーチャー。

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    編集者プロフィール
    インテージ

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