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<駐在員コラム>【タイ】セブンイレブンは無敵?! バンコクのコンビニエンスストア事情

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はじめに

私の自宅は会社から徒歩で約20分程度の距離にある。会社の最寄り駅はBTS(高架鉄道)のサラデーン駅で、周囲はオフィス街となっており日系企業も多く、ちょっと裏手に行けば日本人には有名なタニヤ通りという日本料理店が多数ひしめく繁華街がある。

会社と自宅の中間地点にはルンピニー公園がある。周囲3kmの程よい大きさと緑に囲まれていることもあり、夕方5時を過ぎると付近に勤める会社員がこぞってジョギングを楽しんでいる。最初はマラソン大会でもあるのかと思ったが、あまりにも毎日同じ様子なので皆が日課として走っているという事が分かった。健康ブームは今後も益々盛り上がるだろう。

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自宅の周辺は30階建て程度のコンドミニアムと、グローバルブランドのホテルが立ち並んでおり、旅行客とタイ人のみならず外国人の住人が入り混じっているエリアとなっている。この徒歩で20分、約2km弱にある3つのセブンイレブンはどのような違いがあるのだろうか。

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エリア別セブンイレブン比較

●会社付近にあるオフィス街のセブンイレブン

日本のセブンイレブンでは淹れたてのコーヒーをセルフサービスで飲めるが、ここの店舗はオフィスワーカーが多く利用することもあって、30種類以上の様々なカフェを店員がその場で作るスタイルを導入している。もちろん、カフェコーナーがあるセブンイレブンはここ以外にもあるが、今回紹介する3つのセブンイレブンの中で店員がカフェを作っているのはこの店だけだ。値段は1杯60バーツ(約200円)からと、1個30数バーツから買える弁当と比較しても安くはないが、スターバックスだと1杯120バーツ(約400円)からなのでそれに比べればお手頃と言えよう。

タイ人はおやつを買ってきて同僚とシェアすることが多い。一般的なセブンイレブンの場合は、入口付近に化粧品類が並べられていることが多いが、この店に入ると最初にスナック類が並んだ特売品の棚が目に入るようになっている。やや高級な焼き菓子などもあり、商品構成が間食ニーズに対応したものになっている。

朝昼晩と店舗の前には屋台があり、特に夕食時にはイスとテーブルも出され一寸した食堂に様変わりする。夕食をセブンイレブンの前の屋台で済ませるオフィスワーカーも多くみられ、食事は屋台、飲み物はセブンイレブン、というように“冷蔵庫”代わりに重宝されている。ここに限らず、ストリートサイドにあるコンビニエンスストアの前には、多くの場合屋台が軒を連ねて共存関係を保っているのもバンコクならではの特徴と言える。

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因みに、毎年4月に行われるソンクラーン(水かけ祭り)の中でもサラデーン駅周辺はとりわけ異常な盛り上がりを見せる。いわばメッカのようなエリアとなっているため、ソンクラーン前には小型から超大型に至るまで様々な水鉄砲、防水グッズと言った“攻めと守り”を固めるグッズが多数販売される。ずぶ濡れになった客等からの水害を避けるため、キャッシャーやクレジットカードリーダーといった電子機器類は厳重にビニールに包み、万全に備えて当日に臨む。

●ルンピニー公園付近のセブンイレブン

先ほど触れたように、公園内でジョギングを楽しむ人々は平日の夕方に多く現れる。また、平日のみならず週末にもわざわざ車で乗り付けて来るランナーやサイクリングを楽しむ人がいることもあってか、この店舗では他の2か所に比べて栄養ドリンクや健康を意識した飲料が多く取り揃えられている。ポピュラーな豆乳をはじめ、アーモンドを使った飲料、乳酸菌飲料など種類も豊富。その他美容系飲料やツバメの巣由来のものなど、他店でも見かける商品もあるが、他店舗に比べて“健康押し”の色合いが強い。

最近、他の店では一度も見たことがないクリーニングサービスのボックスが設置された。このボックスにお金を投入し必要な金額分のレシートを受け取り、店員に服とともに手渡すと、クリーニングセンターへの配送を代行してくれるという仕組みだ。受け取りに際しても、スマホとの連動でITの活用がされていて利用しやすいように工夫がされている。ただ、残念なことにまだ利用者を一度も見たことはない。

●コンドミニアム街のセブンイレブン

ここは実際に暮らす周辺住人と、観光客の利用が混在する。枕が売られていたり、少し大きめのおもちゃ類、南京錠など他の店舗と比べて日常生活で使われたり、長期滞在者向けの雑貨が目立つ。実際、私が駐在して最初にした比較的大きな買い物は実は枕であった。備え付けのものもあるが、新品を使いたくなるものである。

旅行者を意識した品ぞろえとしては、化粧品類、身だしなみグッズであろう。他のセブンイレブンと比較してもそのラインナップはかなりのものだ。またほとんどは平べったいゼリー飲料の包装に似たスクリューキャップ付きパッケージになっていて1回~数回で使い切る量が中心である。

オフィス街店舗と品ぞろえの違いが一番際立つのが、トイレタリー用品、調味料、生鮮食品であろう。日本と異なりアイテムが絞り込まれておらず、豊富な品ぞろえが特徴である。洗剤や柔軟剤についてはそれぞれ20種類以上ある。トイレットペーパーについても、1ロット当たりの個数が多い上、フェースもそれなりに取っている。おむつ類は1パックの入数こそ少ないが複数のブランドが並べられている。

調味料や油脂類のサイズは大きく、普段使いを前提としている取りそろえだ。米のブランドも数種類おかれている。このエリアは屋台が禁止なのでそういうことはないが、他のエリアになると屋台などの仕入れ先としてもセブンイレブンの商品が利用されているのを目にする。この場合は、むしろ緊急利用目的としての意味合いが強い。

実際、色々な店で買い物をしてみるとセブンイレブンだからと言って、割高かというと意外とそうではない。安売りで有名なBig Cまで足を運べば安い商品は中にはある。例えば、ビールは1缶1~2バーツ(約4~7円)程度安い。が、実際1缶2バーツを節約するためにかける労力と、家から30秒の場所にある利便性を天秤にかければ、わざわざ往復20分かけて重たいビールケースを買いに行くことは割に合わないことに気が付く。

セブンイレブンが屋台と共存して、冷蔵庫代わりになっている話をした。類似する使われ方が、“屋外飲み会会場”だ。プラカップ、氷、炭酸水またはジュース、そして、ウィスキーをボトルで購入し、2~5人ほどで車座になってソーダ割を楽しむタイ人は平日の夜でも非常によく見かける。棚にうずたかく積まれたプラカップはそれを物語っている。

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まとめ

圧倒的な店舗数の優位性がセブンイレブンの強みではあるが、それが全てではない。立地に応じてきめ細やかに取りそろえる商品を変え、陳列方法を工夫することによって、生活者のニーズを上手くとらえることに余念がない。特売品コーナーを設けるなどしてより手に取りやすい価格を実現しつつ、多くの品ぞろえによって“日常的な買い物の場”として支持されようとする取り組みが、たった3店舗を比較しただけでも良く理解できた。

統一された店舗フォーマットで展開する方が余程効率的なのは間違いない。しかし、フォーマットを完全に統一しないことによって、セブンイレブンの持つブランド力を背景に、店舗間のカニバリを最小化し、近接しながらもエリア毎に異なる来店客固有のニーズへの対応を実現していると言える。


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    青葉 大助(あおば だいすけ)

    タイ在住40代男性リサーチャー。過去に訪問した調査実施国数は30か国以上。当該国の消費者にとってのベストを求め、常に彼らの気持ちに寄り添うことを信条としている。
    1日約1000回閲覧される自身の世界グルメ投稿もタイを中心に意欲的に継続している。

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    編集者プロフィール
    インテージ

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    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
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