<駐在員コラム>【インドネシア】インドネシアでの顧客コミュニケーション インフルエンサーが持つパワーとは?
日本では多くの人がツイッターやインスタグラム、YouTubeなどを利用して普段起こったことを発信したり、ニュース等の情報を収集したりと、ソーシャルメディアは生活の一部となって消費者の暮らしに浸透している。
ここインドネシアでも日本と状況は同じで、ソーシャルメディアは情報を発信するだけでなく、情報収集のツールとしても利用されている。
インドネシアには現在、ネットユーザーが約1億7千万人(*1)いるが、
ソーシャルメディア利用者数は、約1億6千万人(*1)と、約2億7千万人(*2)いる全人口の半数以上がソーシャルメディアを使っている計算になる。
(情報元 *1:Datareportal / *2:populationPyramid.net)
図表1に、インテージのASIAN PANELに対するインターネット調査から得られた、ネットユーザーにおける主なSNSの利用率を示す。
図表1
インテージ自主企画調査
ベース:ジャカルタのスマホ保有者
サンプルサイズ:20代 (n=405), 30代 (n=443), 40代 (n=432)
若者を中心に多くのユーザーから注目を集めているのはインスタグラムやYouTubeであることがわかる。この国にもインスタグラマーやユーチューバーと呼ばれる、インフルエンサーが存在する。
今回のコラムでは、各分野で活躍する4名のインフルエンサーに焦点を当て、紹介していきたい。
自動車業界で知らない人はいない
先ず、最初に紹介したいのは、ユーチューブチャンネル登録者数129万人、インスタグラムのフォロワー数66万人いるFitra Eri(Instagram: @fitra.eri / Youtube: @Fitra Eri)だ。
自動車関連の定性調査で、対象者が話しているのを聞いていると、自動車購入に影響を与えた理由として、「知人・家族からの推薦」の次くらいに、「ユーチューバーの情報」という回答が多く聞かれる。車を購入する前に、ソーシャルメディアを使ってインフルエンサーのコメントを聞いてから購入を検討する対象も多く見られた。
Fitra Eriのユーチューブチャネルの中で、日系某自動車メーカーが数年前に発売し好調な売れ行きだったモデルを紹介しているが、再生数が77万回を超えていることからも、彼の影響力の大きさが伺える。
自動車メーカーに転職したインドネシア人の元同僚に聞いたところ、「業界内で彼を知らない人はいない」ほどの有名人で、彼が発信する情報はそれなりに影響を持っているとのことだった。
伝統と今風メイクをミックスさせた美容系インフルエンサー
2人目は、美容系のインフルエンサーとして活躍するAbel Cantika (Instagram: @Abellyc / Youtube: @Abel Cantika)で、インスタグラムは93万人フォロワー、ユーチューブでは50万人のチャンネル登録者数がいる。有名な美容系インフルエンサーは他にも何名か存在するが、あえて彼女をピックアップしたのは、インドネシアの伝統的な民族衣装姿とモダンなメイクを融合させるテイストが、マスのインドネシア人女性にウケやすいからだ。欧米のビューティーブロガーを真似て、完全に西洋よりのテイストにする美容系インフルエンサーもいるが、彼女の場合、上手くミックスさせることで独自路線を形成し、多くのフォロワーを集めている。また、彼女のインスタグラムの掲載写真には、数多いるインスタグラマーと同様、スポンサー商品とメーカーアカウントのタグ付き写真を掲載して、商品の使用感や仕上がりをPRする宣材用ポストも多く見受けられる。
フォロワー数270万人、日本で学びながらカルチャーを発信するインフルエンサー
彼女が発信すれば翌日は売り切れ必死
そして、最後は食を中心にライフスタイルを提案するインフルエンサー、Anak Jajan (Instagram: @anakjajan/ Youtube: @Anak Jajan)だ。フォロワー数こそ今まで紹介した3名と比べ少な目に見えるが(約38万人)彼女の影響力は大きいようで、最近聞いた話では、彼女がインスタグラム内で紹介した調理器具が、翌日には大型スーパーで売り切れてしまったという逸話をいくつも持つほどのようだ・・・
彼女のインスタグラムを見ていると、インドネシア人が好きそうなインドネシア料理から旅(雪の景色からお恐らく北海道旅行)まで食を中心にしたライフスタイルを発信している。インドネシアなら誰でも手に届きそうなミーゴレン(麺を野菜などと炒めた料理)からラグジュアリ―な旅の写真まで、フォロワーを飽きさせない様にバラエティ豊かな情報を発信している。
既存メディアとインフルエンサーを融合させたコミュニケーション
筆者が社会に出たころは、ATL(Above the line) BTL(Below the line)なんてマーケティング用語が存在して、「新聞やテレビの方がデジタルよりも上」みたいな暗黙の空気が存在した。しかし、それもうん十年前の話で、今やデジタルコミュニケーションなしには、消費者(特にミレニアルズ)へのリーチは難しい。
昨今、若者がテレビを見なくなったといわれるが、ここインドネシアでもその兆候はみられる。しかし、全世代(特に40代以上)を考慮すると既存メディア(テレビ)の影響は未だ健在だ。そのため、今後は既存メディア(テレビ、新聞、OOH等)、ソーシャルメディア、インフルエンサーを融合させたコミュニケーション施策で、若い世代からシニア世代まで幅広くリーチをしていくことも良いのはないだろうか。
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執筆者プロフィール
髙山 貴芳(たかやま たかよし)
ジャカルタに赴任してもう3年目。インドネシア国内出張で島から島へ旅する、さすらいリサーチャー。
【共著者】Rezky Nugraha (レズキー ヌグラハ)
インテージ・インドネシアに入社して2年目。前職ではアートディレクター。日本の大学院に留学経験もあるバイリンガル・リサーチャー。 -
編集者プロフィール
インテージ
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- 2020/08/03
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