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<駐在員コラム>【ベトナム】フォーだけじゃない 麺大国ベトナム

フォーだけじゃない、ベトナムの多彩な麺料理

ベトナム料理と言えば、おそらく多くの人がフォーを思い浮かべると思います。「フォー」は北部発祥の平たい米粉麺で、北部ではさっぱりとした味付けながらダシが効いたスープ、南部では少し甘めのスープが特徴的です。しかし、ベトナムにはフォーだけでなく、様々な米粉麺が存在します。特に「ブン」と呼ばれる米粉麺は、フォーよりもベトナム全土で馴染みが深い麺のようです。フォーは平たく蒸した生地を細く切ったものですが、ブンは麺のタネを型に入れて、ところてんのように押し出して作られます。

ブンを使った名物料理はベトナム各地で見られます。ハノイの「ブン・チャー」は、炭焼きされた豚肉やつくねが入った甘めのタレに、ブンをつけ麺のようにつけて食べます。中部フエ名物の「ブン・ボー・フエ」は、辛めのスープに太めのブンが入った麺料理です。南部の「ブン・ティット・ヌオン」は、ブンにグリルした豚肉や揚げ春巻き、香草、ピーナッツなどをのせ、甘めのタレをかけて混ぜて食べる汁なし麺料理です。

フォー、ブンの他にも、「フー・ティウ」という、生地を半乾燥させてから細く切った米粉麺が南部ではよく食べられています。フォーが柔らかく喉越しが良いのに対して、フーティウはコシがあるのが特徴的です。
中部ダナンでは、「ミー・クアン」という、きしめんのように幅が太めの米粉麺に、具材を煮込んだ濃いめの汁をからめて食べる料理が有名です。

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左からブン・チャー、フー・ティウ、ミー・クアン

インスタント麺の大量消費国

麺料理の種類が豊富なだけあり、インスタント麺もかなりのバリエーションがあります。ベトナムでのインスタント麺シェアNo.1であるエースコックの商品ラインナップはなんと50種類以上に上ります。王道の黄色い縮れ麺を始め、ベトナム名物のフォーやブン・ボー・フエ、フー・ティウなどの米粉のインスタント麺もあります。これら米粉のインスタント麺は、生麺が作られるのと同じ製法(フォーであればシート状の素材を切り、ブンであれば押し出して作る)で商品を製造しており、食感に差を出しているようです。日本式のこだわりのある製造方法が、シェアNo.1の地位を築いているのかもしれません。

そして、実はベトナム、インスタント麺の大量消費国であり、2017年の消費量は50億6000万食で、世界第5位にランクインしています(2017年世界ラーメン協会) 。また日本とは異なり、カップ麺よりも袋麺が主流。但し、茹でずにお湯で戻すタイプです。弊社オフィスのパントリーにもどんぶりが置いてあり、お昼に袋麺を食べている社員をよく見かけます。お昼はもちろん、朝食に麺を食べる習慣のあるベトナムでは、朝食にインスタント麺を食べている人もいます。

また、インスタント麺の麺だけを使うこともよくあります。鍋に入れたり、焼きそばにしたり、更には牛や豚の骨肉を煮込んだ自家製スープにインスタント麺を入れて食べたりします。スープを一からわざわざ作るのであれば、麺もインスタントではなく、フレッシュな生麺を使えば良いのに・・・と思うのですが、それだけインスタント麺が日常食に溶け込んでいるということかもしれません。

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週末に屋外で同僚と鍋をする風景

丸亀製麺のローカライズ成功事例

独自の麺料理が多彩なベトナムですが、特にホーチミン市では外国の麺料理、うどんやラーメン、パスタのお店が近年増えてきています。その中でも「丸亀製麺」は、商品・サービスを上手くローカライズし、人気となっている店の一つです。まず、日本店舗と違うのが麺のコシ。ベトナム店ではうどんのコシが弱めです。比較的柔らかい米粉麺に慣れ親しんでいるベトナム人には、コシがあまりない麺の方が食べやすいからでしょう。また、スープも醤油ベースだけでなく、豚骨やスパイシー海鮮、スパイシーポークなど、バリエーションが豊富です。

更には、取り放題の薬味コーナーにはパクチー(コリアンダー)が用意されています。ベトナムの麺料理には香草が欠かせません。お店で麺料理を頼むと、様々な香草がのったお皿が一緒に出てきて、それらを手でちぎって麺に載せて食べます。そんな香草好きのベトナム人にとって、パクチー載せ放題は嬉しい限りのサービスなのかもしれません。

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独自の麺文化を持つベトナムで、日系企業であるエースコックや丸亀製麺が成功を収めている裏には、日本ブランドとしてのオリジナリティを保ちつつ、現地の食文化・ニーズに合わせたローカライズという試行錯誤があるのではないでしょうか。ベトナムにお越しの際は、バラエティ豊かなベトナム麺料理を堪能しつつ、ちょっと変わったパクチー載せうどんを楽しんでみてはいかがでしょう。

余談ですが、ベトナムで140店舗以上を展開するKFCには、フライドチキンとご飯のセットがあります。こちらはお米好きのベトナム人に合わせたローカライズですね!


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    執筆者プロフィール
    山﨑 伊都子(やまざき いつこ)

    ベトナム在住歴2年の女性リサーチャー。東南アジアを中心に数多くの市場調査に携わる。消費者の生活を直に観察する家庭訪問調査やエスノグラフィーを得意とする。

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