<駐在員コラム>【ベトナム】コロナ禍のベトナム渡航 出国準備から隔離生活まで体験レポート
はじめに
ベトナムでの感染者は、感染者累計1,134人、市中での感染者0人が1ヶ月以上続いており、ASEAN各国と比較すると少ない状況です。(2020年10月16日時点)
この実態を受けて、日本政府は、アジア大洋州地域ではベトナムを含む9か国(ベトナム、韓国、シンガポール、タイ、台湾、中国(香港、マカオを含む)、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランド)について、感染症危険情報を渡航中止勧告に該当するレベル3から、不要不急の渡航を控えるレベル2に引き下げました。これに伴い、一部アジア大洋州地域への必要な出張が実施しやすくなります。
今後増えるであろうアジア出張。本コラムでは、私が7月にベトナム赴任が決まり、コロナ禍での渡航を体験したレポートをお届けします。
出国準備
私は7月にベトナム赴任が決まったのですが、実際に渡航できたのは9月末でした。
この間の紆余曲折を紹介します。
大きな流れは以下の通りです。
ホーチミン市人民委員会へ入国許可を申請
↓(許可が下りれば)
出入国管理局が招聘番号を発行
↓
ベトナム大使館でビザを取得
↓
渡航に必要な書類の準備(PCR検査陰性証明書など)
これになぜ約3ヶ月かかったか、時系列で説明します。
7月〜8月:【当時の対応】特別便の運行&政府の用意した施設にて隔離
当初は、受け入れ体制や特別便の運航が少なかったこともあり、個人ではなく日本商工会議所(JCCI)などが一括して希望者リストを提出していました。
日本商工会議所へ渡航希望の応募をしたものの、隔離施設のキャパシティの倍近い応募があり、私は落選しました。
労働許可証を持っている一時帰国の大企業の重役や高い技術を持った専門家などが優先されたようです。
9月初め:ベトナム側の受け入れ体制ができたことや特別便が増えたため、個人申請へ変更になりました。この変更を受け、本格的に準備を始めました。
9月1週目:飛行機のチケットと隔離用ホテルを手配し、ホーチミン市人民委員会へ入国許可を申請
9月2週目:出入国管理局で招聘番号を取得し、在大阪ベトナム領事館でビザを取得
9月28日:PCR検査を受け、陰性証明書を取得(入国日の5日前に検査を受け、3日前までの陰性証明書が必要)
9月30日:渡航
入国許可がおりてからは、約2週間のスピード出国となりました。
手続きで大変だったのは、どういう申請をすれば入局許可を取得できるのかという手続きについて、はっきりしたガイダンスがなかった点です。
入国許可に関して問い合わせをしても、「特別な技術を持った人でないと許可が下りない」という回答のみで、どうやったら許可が得られるのかさっぱりわかりませんでした。
結局、航空会社から特別便の案内をいただいて、
航空会社からの情報でどういう書類を集めればよいのかというのがようやくわかりました。
また、渡航一週間前に、PCRの陰性証明書の発行日が5日前から3日前に変更になったりと、規定が変わる&規定が明確ではないことに振り回されました。
また、ホーチミンではホーチミン市人民委員会の入局許可が必要ですが、
他の地域では省人民委員会が入国許可を出しておらず、駐在員が入国できない状況が続いているとも聞いています。
地方によって差があるのも、情報収集が難しい要因になっています。
ちなみに、入国にあたり必要な書類は以下となっています。
①市省人民委員会からの許可のコピー
②入国管理局からのVISA発給承認レターのコピー
③隔離指示書のコピー(ホテル予約、ホテルまでの輸送手段手配等)
④PCR 検査(Real Time-PCR)陰性証明
⑤入国後、PCR 検査陽性の場合の医療費を会社(お客様)が負担する」旨確認する書類
⑥入国後、隔離施設までの輸送手段(車番、ドライバー名、ドライバー携帯番号の情報)
⑦入国前 24 時間以内にオンラインで医療申告(https://tokhaiyte.vn/)。
出国当日
旅程は、関西空港→成田空港→タンソンニャット国際空港(ホーチミン)でした。
閑散とする空港は異様な雰囲気でした。
機内では、防護服を着るよう指示されることもあるようですが、マスクのみでした。
着いたらPCR陰性証明書など必要書類を提出し入国しました。入国手続きに数時間かかると聞いていましたがスムーズな対応で30分ほどで入国できました。
空港の出口には数十台のバスが待機、そのままホテルへ移動しました。
ホテルでは、徹底的に荷物を消毒され、最低限の手続きだけ済ませてすぐに部屋へ移動しました。
隔離生活
ホテルでの隔離は12日間で、費用は渡航者負担となっています。
ホテル到着後は、部屋からは一切出られず、清掃もありませんでした。
タオルなどのアメニティや食事は部屋の前に置かれ、強めのノックでお知らせがありました。何かあれば、ホテルのフロントに電話で依頼すれば対応してもらえます。
一日2回ほど体温測定があり、到着後とチェックアウト前日にPCR検査を受けました。
食事は、朝昼晩それぞれで、アジアンまたはウエスタンの二つから選択可能でした。
ちなみに、デリバリーも頼めますが、接触を避けるため電子決済のみ対応していました。
二週間の隔離生活に向けて、先に中国で隔離を経験した先輩から大変なことを聞いて日本から持って行ったり、現地のメンバーに必要なものを差し入れしてもらいました。
隔離生活であってよかったものは、
・小型洗濯機:タオル以外はすべて手洗い。意外と手洗いが大変なのでおススメです。
・インスタントコーヒー(紅茶):一日中部屋にいると目が覚めず、カフェインが必須でした。
・塩、醤油、ふりかけ:これさえあれば料理が口に合わなくても大丈夫でした。
運動はYouTubeで、暇つぶしはNetflixやKindleで過ごし、思いの外、快適な隔離生活でした。
今後も、長期(14日間以上)出張の場合は、ホテルでの14日間隔離(※ベトナムに自宅がある場合は、ホテル7日+自宅7日)が必要なようです。
しかし、10月19日の日越首脳会談を受け、11月1日より、短期(14日間未満)出張の場合は、隔離が不要となる旨発表されています。
※ただし、あらかじめ承認を受けた用務で外出する場合を除き、隔離施設(ホテル)に滞在が必要
11月1日から適用と発表されていますが、実際に適用されているのかは定かではないのが実情です。
結局は、省や市の人民委員会の許可が必要になるので、申請する省や市がどこかによって対応が異なることが想定されます。
この辺りの明確な規定がなく、個人での情報収集と問い合わせが必要になる点が、今後の渡航においても困難な要因の一つとなりそうです。
参考:https://www.vn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/20200731nyuukoku.html
最後に
日本ではビジネス目的の一部の国からの入国は隔離をなくすなど、少しずつ緩和はされていますが、自由に海外への行き来ができるようになるのは、まだまだ先になりそうです。
私たちも、お客様のビジネストリップが減るなか、オンラインビジットなど新しい方法を模索しています。
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執筆者プロフィール
杉山 萌(すぎやま もえ)
ベトナム在住歴1ヶ月半のリサーチャー。一般消費財(食品・飲料など)をメインで担当。
現地を知るために、スーパーやモールの店頭観察、ローカル店での食べ歩きを実施中。 -
編集者プロフィール
インテージ
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- 2020/11/26
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