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【インドネシア:地球の暮らし方】“Kamar mandi” トイレとバスと洗面所が一体型のインドネシア

インドネシアの住居設備において、日本と最も大きな違いがあるのはトイレとバスだろう。特にトイレは日本とは大きく勝手が違っており、来イした人が最初に戸惑うことではないだろうか。今回はインドネシアのトイレ・バス事情について紹介したい。

トイレ事情:手動の洗浄便座

インドネシアのトイレは、水洗であっても日本のような全自動の洗浄便座はほとんど見かけない。一般家庭ではもちろん、高級なホテルやショッピングモールなどでも見かけることはない。
一般的なのは洋式便座の横に蛇口が付いているタイプ。この蛇口をひねると常温の水が噴き出す仕組みになっており、使い終わったら蛇口を締める。さながら「手動洗浄便座」と言える。
 また、この蛇口がなくホースがついているタイプもある。ホースの先端を握ると勢いよく水が噴き出す仕組みになっており、これをあてて洗浄をする。ちなみに勢いはかなり強いので慣れが必要である。

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(写真左 出典:生活者データベース Consumer Life Panorama
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(写真右 出典:筆者撮影)

また、和式便座もまだ見かけることが多く、この場合は便座の横に水を張った大きなたらいと手桶が用意されており、右手で手桶を持って水をかけながら、左手を使って洗い流す。このため左手は「不浄の手」とされており、他人に物を渡す際に左手で渡したり、握手を左手でしたり、手を使って食事をする際に左手を使うことは大変失礼なこととされているので気をつけたい。用を足した後は、便器の中も手桶の水で洗い流し、その後、自分の手も手桶の水で洗い流す。ちなみに和式便座は日本とは逆向きにしゃがんで使う。
トイレットペーパーが備え付けられている場合もあるが、あくまで洗浄後の水気を拭くためのものであり基本的には水を使って洗い流す。

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(写真出典:筆者撮影)

お風呂事情:水浴びが主流

日本では湯舟に浸かるスタイルが習慣となっているが、インドネシアでは湯舟に浸かる習慣はなく、Mandi(マンディ)と呼ばれる水浴びをすることが習慣となっている。水浴びは朝と夕、または外出前など日に数回行う。高温多湿の気候の中、汗を流し、体をひんやりさせるためである。
そのため、浴槽がないのが主流であり、浴槽があるのは高級なホテルやマンションなどに限られる。シャワーが取り付けられているのが一般的であるが、中流層以下の家庭ではシャワーがない場合もあり、その場合は手桶を使い水浴びをする。バスの隅に水溜がある家もあり、ここから手桶で水をすくい水浴びをする。
 シャワーブースが仕切られているケースもあるが、仕切られていないことの方がはるかに多い。

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(写真出典:筆者撮影)

トイレとバス、洗面所が一体化

また、日本では、洗面所とバスルーム、トイレが分かれていることが多いが、インドネシアではトイレとバス、洗面所が一体化していることが多い。やや高級なマンションやホテルなどではシャワーブースが透明板で囲われていることもあるが、トイレが別室になっていたり洗面所が別室になっていたりすることはほとんどない。インドネシア語ではトイレのことを少し上品に言う際に、Kamar mandi(水浴びの部屋)またはKamar kecil(小さい部屋)と言うこともあるが、小さな部屋にバス(水浴び場)、トイレ、洗面所を一体化しているこの形式を表している言葉だと言えよう。
一体化しているとすべて水で洗い流せるため、ある意味で衛生的な反面、シャワーを浴びる度にトイレ便座や浴室一面が濡れてしまい、床も滑りやすくなるという問題もある。床はタイルであることがほとんどであり、日本の様に樹脂製の床ではないため水はけも良くはない。そのため、シャワーブースを後付けで囲って床一面が濡れるのを防ぐようにしている家庭も見られ始めている。以前、筆者が家庭訪問調査で水まわりについてのヒアリングを行った際にも、床が水浸しになるのを嫌がり、水除けのカーテンをつけている家庭が見られた。
一部の日本メーカーではユニットバス導入の動きも見せているがごく一部の上流層向けマンションに限られている。シャワーブースが囲われる方向には進んでいくと思われるが、日本の様にトイレ、バス、洗面所が別室となるにはまだまだ時間がかかるだろう。

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(写真出典:筆者撮影)

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    執筆者プロフィール
    土橋 将行(どばし まさゆき)

    2018年まで4年半ジャカルタに駐在。現在は国内で消費財・サービスなどのリサーチを担当。
    コロナ禍で在宅時間が増えたため断捨離したいが、なかなか思い切って物を捨てられないのが最近の悩み。

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    編集者プロフィール
    高浜 理沙(たかはま りさ)

    アジアを中心に、消費財メーカー様の海外マーケティングリサーチに携わり、現在はGlobal Market Surferのサイト運営担当。インドネシアなどで見かける「手動洗浄便座」は、何度か試すものの未だうまく使いこなせず。

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