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【中国】ガソリン車の廃車にインセンティブを導入/EV車への移行が進む北京

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キャンペーン効果でEV車販売台数は120万台を突破

2020年4月から2021年12月まで、北京市ではガソリン車の廃車を推進するキャンペーンを行っている。廃車手続きに掛かる経費の全てを北京市が負担し、さらに車の所有者に対して、車種により異なるが2,200元(約37,000円)以上をインセンティブとして支払うというものだ。さらにEV車への移行を促すため、ガソリン車の廃車後1年以内にEV車を購入すると、最大で1万元(約168,000円・車種やブランドにより異なる)が支払われる。北京市の大々的なキャンペーンや宣伝効果もあり、ここ1年でガソリン車からEV車への移行が進んでいる。EV車の売り上げも右肩上がりで、2020年の中国におけるEV車の販売台数は、自動車販売市場の約6.3%、120万台を突破した。

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現地を取材したトレンドウォッチャーが、実際にこのキャンペーンを利用して、日本製ガソリン車を2020年11月に廃車した。まず北京市の廃棄統轄部署に廃車にする旨を連絡し、その後、業務を請け負っている業者からWeChatで連絡があり、手続きを行う日時の設定をする。後日、指定した日時に業者がレッカー車で来て、車の引き渡しを行う。引き渡しから約1週間で、「廃棄終了証明書」と「インセンティブの銀行振り込み要項」が郵送で届く。書類の提出後、約1週間でインセンティブが指定の口座に振り込まれた。

これまでEV車に乗っている人は、エコ志向というよりはステータスの象徴か、ガソリン車のナンバープレートの抽選に外れた人が殆どであった(北京市では2011年からガソリン新車のナンバープレートが抽選方式になっている)。ここ1~2年で中国産の手頃な価格の小型EV車(6万元 /約100万円~)が普及したことで、富裕層だけでなく幅広い所得層にEV車が拡大している。EV車の中で人気が高いのは、アメリカの「Tesla」(Model Yは約34万元/約570万円)と、上海に本社のある蔚来(NIO)のSUV車(約35万8000元/約600万円~)だ。

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2035年には新車販売のすべてを新エネルギー車とハイブリット車にする方針

北京市では2011年からガソリン車のナンバープレート取得に抽選方式を導入して、ガソリン車の新規登録の台数を規制をしている。しかし闇市場でナンバープレートが売買されるなどの新たな問題も起こり、本来の目的である交通渋滞や大気汚染の解消が達成されたとは言えない状況であった。

ガソリン車の廃車インセンティブのキャンペーンにより、北京市内でEV車が急激に浸透をしてきて、充電設備を街中や住宅街のいたるところで見かけるようになった。2020年に北京市がガソリン車に交付したナンバープレートは6,366台(約3,000分の1の確率)。それに対し、EV車には抽選なしで登録を許可(上限設定100万台)した。

2020年10月、中華人民共和国工業情報化部(工業界向けの企画の制定及び実施を担う行政機関)は、2035年に新車販売の全てを電気自動車(EV)などの新エネルギー車(NEV)と、ハイブリット車にする方針を発表した。これにより中国では、2035年にはガソリン車が新車市場から姿を消すことが決定した。

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本記事はTNCライフスタイル・リサーチャー(http://lifestyle.tenace.co.jp/ )とインテージのグローバル・リサーチャーの共同執筆記事です。


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