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<駐在員コラム>【アメリカ】コロナ下で成長する、アメリカの新しい小売業・飲食業のビジネスモデルとは

はじめに

アメリカは、コロナパンデミックが始まって以来、世界で最も感染者数が多い国となり、社会的にも経済的にも大きな影響を受けることとなりました。特に、州別に実施されたロックダウンによるビジネス環境へのインパクトは大きく、多くの会社やそこで働く従業員がコロナ前とは違う形での業務スタイルを模索し続けることとなっています。
今回はその中でも最も消費者に近く、かつロックダウンによる影響をダイレクトに受けた業態である、小売業・飲食業に注目して、コロナの影響により変わるアメリカの最新事情と、これからの新しいビジネスモデルの方向性を示しているであろう具体的なサービスの実例をいくつかご紹介します。
※なお、取材先はすべて筆者が居住しているカルフォルニア州ロサンゼルス周辺となります。

1.Amazon Fresh  コンタクトレスショッピング形式のスーパーマーケット

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写真:筆者撮影

コロナ下においてAmazon Freshは生鮮食品デリバリーの取り扱いを拡大してきましたが、次の段階として、現在カルフォルニア州を中心に、実店舗形式のAmazon Freshスーパーマーケットが次々とオープンしています。
従業員の感染対策を考慮すると、店舗内で働くスタッフ数は少ない方がよく、買い物客にとっても、従業員との接触が極限まで抑えられたコンタクトレスショッピング方式は感染のリスクも少なくなる。また、店舗の広さに応じた買い物客数の入場制限を考えると、大型店舗の方が有利という点もあります。もちろんコロナとは別の視点でみても、Amazon社のECと実店舗での購入をミックスさせていく経営戦略の一環として、 Amazon Freshのビジネスモデルを拡大していきたい意図があるはずです。
※Amazon社は2017年にWholeFoodsスーパーマーケットを買収

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店舗の広さ・品ぞろえは、アメリカの他の大型スーパーマーケットと比べても遜色ない大きさです。品数もかなり多く、従業員はしょっちゅう品の補充のためあちこちを回っています。

写真:店内イメージ(Amazon Fresh Woodland Hills)
(出典:Amazon Press Center)

ショッピングカートには、4つのカメラ+バーコードリーダーが付いており、基本的には商品をカートに入れるだけで、自動的に画面に登録されます。レジで改めて商品を登録する必要はありません。

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写真:Amazon Freshのショッピングカート「Amazon Dash Cart」
(出典:Amazon Press Center)

商品の場所はAlexa端末に聞けば教えてくれます。

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写真:店内に設置されているAlexa(イメージ)
(出典:Amazon Press Center)

買いたい物をすべてカートに入れて登録が終わったら、そのままカートの画面の支払いボタンを押して、クレジットカードなどで支払いを行えば買い物終了です。Amazonアプリがあれば、レシート代わりに、購入した商品の履歴も登録されます。
最後にチェックアウトレーンでカートを返却します。(ここでは人間による購入手続き完了の最終チェックあり)

2.Order pickup専門のファストフード店舗

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アメリカのロックダウン実施時には、レストランの店舗内での飲食は全面禁止されました。レストラン各店舗は、テイクアウト中心での運営にシフトせざるを得ない状況になりましたが、その状況に最適化した店舗形態として主にファストフードを中心に、「Order Pickup専門」の飲食店が増えてきています。Uber EatsやDoorDash、Postmatesといったアプリでの注文の他に、レストランのホームページ上で直接注文できる飲食店もあります。
写真だとわかりづらいとは思いますが、この店舗は、店内に接客・飲食スペースがありません。顧客は、基本的に購入した商品を持ち帰る前提のため、どうしてもこの場で食べたい人のために屋外にテーブルがいくつか設置してあるだけです。
あらかじめオンラインで注文・決済を行えば、あとはMobile Pickupカウンターに行って商品を受け取るだけなので簡単・早く、とてもファストフード向けの形態だと思います。

3.Patio Diningレストランの屋外飲食の拡大

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屋外飲食スペース
(写真:筆者撮影)

店内での飲食が制限されるなかで、従来型のレストラン店舗も、コロナ下における営業形態を模索しさまざまな対策を実施しています。特にカルフォルニア州では、地方自治体とレストラン経営者たちが協力し、屋外での飲食スペースを増やす取り組みを官民一体で進めているエリアも多いです。
写真のように、コロナ前では法律的に営業許可が出なかった店舗前の道路スペースを利用して、Patio Diningスタイルの飲食スペースを店外に設置するレストランが今急速に増えています。

4.個人型店舗レス飲食店の誕生と、それを支えるVenmoなど個人間決済型電子マネーサービスの伸長

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写真:Venmo公式Facebookページ

コロナの影響が続く中、従来のようにレストランを新しく起業・オープンすることは難しい状況にあります。その中で出てきた新しい業態として、店舗を持たずに、個人が自宅やゴーストキッチンなどを利用して、オーダーピックアップやデリバリーに特化したレストランビジネスをスタートするケースが増えてきています。
例えば、自宅のキッチンでケーキやドーナッツを作ってオンライン販売する、何人かで投資しあって巨大なBBQピットを購入しケータリング専門の会社を立ち上げるなどです。
このような新しい形態のレストランを支えるオンライン決済システムとして、従来はPaypalなどの電子決済サービスが主流でしたが、今アメリカの若者の間ではVenmo に代表される個人間電子決済サービスの利用が急速に増えてきています。
もともとVenmoは友人同士での割り勘利用などでユーザーを増やしてきましたが、ユーザー数が5千万人を超えた現在、紹介したような個人ビジネスにおける、より手数料が安く・仕組みが容易な決済方法として徐々に浸透してきています。

おわりに

ここまでに紹介した、コロナ下において成長している新しいビジネスモデルは、今後コロナが終息しても業態としてはさらに拡大していくと予測しています。経営的視点でみても、従業員数を削減し、店舗のスペースを縮小し、キャッシュレス決済をシステム化していくような効率化の仕組みは、利益最大化という意味で理にかなっているためです。
今後も、アメリカ現地における新しいサービスの兆しを取材し、みなさまに紹介してきたいと思います。


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    執筆者プロフィール
    砂塚 雅司(すなずか まさし)

    アメリカ・ロサンゼルス在住のリサーチャー。次々と新しいモノ・サービス・トレンドが生まれるアメリカのチャレンジ精神と多様性に驚き戸惑いつつも、自分も常に好奇心を持って体験し、日本人の視点からみたアメリカの今のリアルな情報を発信しています。

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    編集者プロフィール
    高浜 理沙(たかはま りさ)

    Global Market Surfer運営担当。コロナ禍で生鮮食品デリバリーのサービスを使い始め、便利さを実感。野菜だけは近所の直売所で購入している。

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