<駐在員コラム>【インド:地球の暮らし方】地方の生活から見る・感じるインドの多様性
- 公開日:2021/05/26
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【都市ごとの人口:2011年国勢調査】
アーメダバード (Ahmedabad)
インドの西部、グジャラート州は現インド首相のモディ氏を輩出した地であり、首都デリーと商都ムンバイの間、中東アフリカ方面へのアクセスの良さなどの地の利を活かして発展を続けている。その州都アーメダバードは、人口500万人を超える大都市である。街の中心地には、近代的なショッピングモールやスーパーなどがあり、コンドミニアムの建築ラッシュが進んでいる(Knight Frankによると、コロナ前の2019年下期は新規着工件数が対前年で176%)。
【左】中心エリアの商業施設。
【右】コンドミニアムからの眺め。周囲ではコンドミニアムが多数建設中。(出典:著者撮影)
この地方の生活スタイルの特徴としては、食材を多く備蓄するという点があげられる。これは昔からの風習の様なのだが、グジャラートの方は、食材は収穫された時期=旬のものを買うことがいいと考えており、主食の小麦や米、スパイスなど保存がきく食材を、収穫期に大量購入するそうだ。そのため、アーメダバードのお宅を訪ねると、キッチンと併設した広いストレージルームが合ったり、キッチン自体にも食材の保管スペースが多かったりといった特徴を見ることができる。スペースだけでなく、他の地域よりもタッパーの様な保存容器の数も多い印象を受ける。 【右】コンドミニアムからの眺め。周囲ではコンドミニアムが多数建設中。(出典:著者撮影)
【上】ストレージスペースの様子 (出典:生活者データベースConsumer Life Panorama)
【下左/右】保存用の容器が並ぶ、キッチンの収納スペース(出典:著者撮影)
【下左/右】保存用の容器が並ぶ、キッチンの収納スペース(出典:著者撮影)
グワハーティー (Guwahati)
次に、インドの北東部をご紹介する。この地域は、ブータンやミャンマーなどとも国境を接しており、モンゴロイド系の人種も多く居住し、生活スタイル・食生活も異なる。この地域の玄関口であるグワハーティーは、北東部で消費者調査を行う際に対象として選択される主要都市である。 まず、街の様子だが、デリーなどの大都市と比べると発展の度合いは高くなく、10年以上前のデリーに戻ったのでは感じる。街行くクルマは小型のハッチバックが多く、大都市で見かけるような高級輸入車は目にする機会はなかった。流通面では、モダントレードはまだ少ない印象があり、パパママショップ、キラナなどのトラディショナルトレードが中心である。現地の消費者と話をすると、生鮮食品などはまとめ買いして冷蔵庫などで保存するというよりも、近くのマーケットや八百屋で必要なものを必要な分だけ購入するというスタイルが多い様子である。【上左】街のマーケット・ 【上右】キラナ
【下左】小規模のスーパー・ 【下右】モダントレード(出典:著者撮影)
続いて、食生活を見てみると、多くの方が想像するインドの食生活とは異なる様子がうかがえる。まず、大きな違いとしては、ノンベジタリアンの食事が多いことである。他の地域でも食されるチキン・マトンだけでなく、ポークやダック、川魚も多くの家庭で食されている。ご家庭では、川魚はほぼ毎日食卓にのぼり、ポークも週に数回は食べるという話をしていた。また、主食は米であり、インド料理と聞いてイメージするナンやチャパティの様なインディアン・ブレッドを食べる頻度は多くないということであった。実際、キラナやスーパーを訪問すると、多様な種類の米が販売されていることに驚く。 【下左】小規模のスーパー・ 【下右】モダントレード(出典:著者撮影)
【左】地元で有名な定食屋のメニュー:ベジタリアンむけのメニューは3種類のみで、あとはノンベジタリアン。
【中】ポークターリー(定食):ポークカレーは豚バラブロックがゴロゴロ入っている。ライスはさらさらとしたインド米。
【右】ポークチャツネ・チキンチャツネ:デリー・ムンバイ・バンガロールなどでは見ない食材も店頭に並んでいた。ジャーキーの様な味。(出典:著者撮影)
【中】ポークターリー(定食):ポークカレーは豚バラブロックがゴロゴロ入っている。ライスはさらさらとしたインド米。
【右】ポークチャツネ・チキンチャツネ:デリー・ムンバイ・バンガロールなどでは見ない食材も店頭に並んでいた。ジャーキーの様な味。(出典:著者撮影)
【左】キラナの店内には、多様な米が販売される
【右】ポークを前面に押し出した精肉店。(出典:著者撮影)
【右】ポークを前面に押し出した精肉店。(出典:著者撮影)
最後に
今回は、アーメダバードとグワハーティーの2都市を紹介したが、インドは「15 マイルごとに方言が変わり、 25 マイルごとにカレーの味が変わる。100マイル行けば言葉が変わる。」と言われるほど多様性がある国である。デリーで評価が高い商品が、他の地域でも同様に高評価を得るとは限らないため、複数の地域で成功を収めるには、各地の生活・嗜好性を知ることが肝要となる。 コロナ禍が続くインドでは地方都市へ出張することが難しいため、インテージインドでは、ビデオ通話インタビューなどデジタルツールも併用して生活者の理解を続けている。こうした生活者へのオンラインインタビューは、日本にストリーミング中継することも可能である。コロナ禍でインド現地へ赴くことが難しい中で、日本にいながら地方都市に限らずインド生活者を理解したいというご要望があれば、ぜひお気軽に弊社へご相談いただけたら幸いである。Consumer Life Panoramaのご紹介
Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、デジタルライフをご覧頂くことができます。本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。カスタマイズした調査によらず、手元で海外生活者の住環境を観察したいという場合においてご活用いただけるサービスです。
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執筆者プロフィール
中村 亮介(なかむらりょうすけ)
インド駐在歴3年の間、ムンバイ、デリー、バンガロールにそれぞれ1年ずつ滞在。プロジェクトを通してインド全土の習慣、文化に触れてきたインドのエキスパート。ロックダウン中もインドに残り、現地の生の情報を顧客に届けている。