<駐在員コラム>【インドネシア:地球の暮らし方】インドネシア(ジャカルタ)の台所事情
- 公開日:2021/08/05
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はじめに
インドネシアでは日本と同じく「米」が主食で、料理は地域ごとの特長がある。インドネシア料理といえば、ナシゴレンやサテが有名だが、ジャワ島を中心とした「ジャワ料理」は甘辛い味付けが特徴。一方で、西スマトラ島を中心とした「パダン料理」は香辛料が使った煮込み料理が中心。
ジャカルタの街を歩いていると、屋台で食事をする人をよく見かける。コロナウィルス感染拡大による活動制限(PPKM)が行われてからは、レストランや屋台の利用者は減っているが、一方で緑のジャンバーを来たGojekドライバーがレストランのテイクアウトを運ぶシーンがすっかり街の風景となった。私が住むアパートの入り口には常に3-4名のドライバーがテイクアウトの料理を届けるために住人を待っている。 では、人々は家でどのように食事をとっているのだろうか。実際に社会経済クラス(SEC)ごとの家庭のキッチンをみながら、特長を紹介したい。
SEC A(社会経済クラス A)
料理の付け合わせに使われる「クルプック」(えびせんのチップス)は複数の種類が容器にはいって、常備されている(上写真 右奥の瓶)。
SEC B(社会経済クラスB)
Aクラスと比べるとキッチンのスペースは限られているが、ガスコンロ、シンク、冷蔵庫、ウォーターサーバー、炊飯器など料理に必要な家電・設備は揃っており、不便は全く感じていない。食器棚のスペースは限られているためが、鍋やバケツは棚の上のスペースを活用し、整理されている。
時間をかけて手の込んだ料理を作るという意識はなく、自炊する際にはなるべく時短に済ませたいようだ。
SEC C(社会経済クラスC)
Cクラスのこの家庭は、イスラム教に対する信仰が強く、西洋や他のアジアへの関心は低い。母親の趣味は料理と掃除ということだが、家事・育児の全てを一人でこなす必要があるため、料理に費やせる時間は限られているようだ。
さいごに
社会経済クラスはもちろんのこと、メイドの有無、料理に費やせる時間、自国/他国料理への関心により、使用している調味料は異なる。Aクラスは経済・時間的にも余裕があり、料理に時間をかけられる分、厳選された調味料を使用している印象を受ける。家族のために料理をすること、その料理を家族で楽しむ時間を重視しており、海外の食文化に対してもオープンである。B、Cクラスになると、Aクラスのような余裕はなくなり、常に時間に追われている印象を受ける。Bクラスは外食やテイクアウトなどにより時短を意識するが、Cクラスは経済的な事情があり、時短を意識しながら家族のために自炊を行う。
どの経済クラスでも共通するのは、朝食は家で家族揃って食べるということ。朝食として出されるものはシリアルや果物など簡単なものが多いが、料理そのものよりも、1日の始まりを家族で過ごすということが重要と考えられているようだ。
インドネシアは今後10年で富裕層、中間層が倍増すると言われている。現在B・Cクラスの人々が、今後どのように料理に関する意識や習慣を変化させていくのかを注目していきたい。
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執筆者プロフィール
芝崎 すみれ(しばさき すみれ)
インテージインドネシア シニアリサーチマネージャー
インテージグループで約8年の国内リサーチ担当後、日本からのアウトバウンドリサーチとしての海外調査や海外現地法人の事業を統括する部門で勤務。これまでに担当した国数は、20カ国以上。
2020年に念願の駐在員デビューを果たす予定だったが、コロナウイルスの影響を受けて延期に。約1年間、日本からのリモート駐在員としてインドネシアの調査を担当し、21年5月にようやくインドネシアに着任したばかり。 -
編集者プロフィール
高浜 理沙(たかはま りさ)