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【インド】妊娠・出産・新生児のケアに関する文化的習慣・好み

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妊娠編:

インドでは、妊娠はとてもポジティブに受け止められている。妊娠は非常に注意すべき期間であると同時に、非常に喜ばしいことでもあると捉えられている。既婚女性は、友人や家族に妊娠の知らせを伝えることに非常に喜びを感じるが、ほとんどの女性は、妊娠を発表するのを妊娠第1期(~妊娠第12週まで)の終わりまで待つ。この時期まで待つ主な理由は、妊娠損失のほとんどが第1期内で起こるため、流産のリスクを避けるためだ。

「ゴッド・バライ(Godh bharai)」とは、妊娠中に行われるインドの伝統的なベビーシャワーで、生まれてくる赤ちゃんを家族に迎え入れ、母親となる人に豊かな母性の喜びを与えるためのもの。インドのベビーシャワーは、主に妊娠第3期(妊娠24週~)の7ヶ月目か9ヶ月目に行われる。「ゴッド・バライ」は、生まれてくる赤ちゃんを祝福し、妊娠中の母親に祝福と贈り物を与えるために行われる。伝統的に、「ゴッド・バライ」は「女性だけ」の集まりだ。家族の中の年配の女性たちは、母親になる人に宝石をつけたり、バングルをつけさせ、膝の上にプレゼントや果物、お菓子を詰め込み、彼女の前にごちそうを並べる。フルーツバスケット、ジュエリー、きれいなサリー、現金封筒は、インドで妊婦に贈るベビーシャワーの伝統的な贈り物だ。インドの伝統では、生まれてくる赤ちゃんに贈り物をすることはお勧めされなかったが、最近では、母親だけでなく生まれてくる子供も祝福するために、おむつ用バッグ、おもちゃ、歯固め、ガラガラ、寝具、赤ちゃんの部屋の装飾品、ベビー用品、マタニティ用品などを贈る人も多いようだ。

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出典: インドのギフトショッピングサイトhttps://www.giftcart.com/buy-online-gifts-for-godbharai-and-baby-shower.html

他の国とは異なり、インドでは男児1000人に対して女児の出生数が減少していることを憂慮し、1994年から胎児の性別判定が違法となっている。

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男性1000人あたりの女性の数
出典: Census 2011 https://www.census2011.co.in/sexratio.php

出産編:

インドの家庭では、新しい赤ちゃんの誕生は大きな喜びとお祝いの機会だ。風習や伝統は、赤ちゃんが生まれる前から始まり、生後1年まで続くのである。
インドでは、出産後40日間は母親は家に閉じこもっているべき期間であるとされる。特に第一子の場合、母親はこの期間を実家で過ごす。これは、彼女が最高のケアを受け、十分な休息をとり、実の母親とより安心して過ごせるようにするためだ。この40日間の休息は、出産後の母子が脆弱な状態にあると考えられているため、母子を病気や悪霊から守るために行われる。
生まれたばかりの赤ちゃんは、「邪気眼」(evil eye)の影響を受けやすいと考えられている。この影響を防ぐために、乳児の額にコール(カジャル)を塗るなど、予防のための習慣がとられている(ヒンズー教徒のみ)。

育児編:

赤ちゃんが生まれる前から、赤ちゃんのためにたくさんのグッズを考え、購入したいと思うのは当然だ。しかし、インドではほとんどの家族が出産前に買い物をしないことを好んでいる。多くの人々が、出産前に赤ちゃんのために買い物をすると不運を招くと信じているからだ。「邪気眼」(evil eye)を信じている人たちは特に反対している。なぜなら、かわいらしい赤ちゃんのものの見た目が、母親と赤ちゃんへの悪い気を引いてしまうと考えているからだ。

また、生まれたばかりの赤ちゃんにお下がりの服を着せることは、生まれたばかりの赤ちゃんに幸運をもたらすと信じられている伝統的な慣習であり、多くの母親は生まれたばかりの数日間はお下がりの服を使いたいと考えているのだ。

乳児は通常、日常的にオイルでマッサージされる。オイルマッサージは安眠を促し、骨を丈夫にすると信じられているからだ。インドでは、母親は主にアーユルヴェーダオイル(Dabur Lal Oil)、ココナッツオイル、オリーブオイルなどの伝統的なオイルを使用する。また、特にインド北部では、冬にギー(澄ましバター)を使って赤ちゃんをマッサージする人もいる。Johnson's Baby Massage Oil、Himalaya Baby Massage Oil、Chicco Baby Massage Oil、Mamaearth Soothing Baby Massage Oilなども子供のマッサージに使われている。

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出典: インドの子育て情報サイトhttp://motherandbabyindia.com/baby-massage-myth-or-blessing/

インドのお母さんたちは、赤ちゃんにあまり多くの製品を使いたがらない。しかし、パウダー、保湿ローション/クリーム、入浴用石鹸、シャンプー、おむつクリーム、おむつなどはよく使われているアイテムである。赤ちゃんの肌は柔らかくデリケートなので、おむつかぶれを防ぐために、最初の数ヶ月は布おむつを使用したいと考えるお母さんも多い。おむつを交換する前には、ベビーワイプやウェットコットンを使って汚れを落とす。また、おむつ交換のたびにベビーパウダーを使用して、おむつ周りを乾燥させて清潔に保つこともよく行われている。多くのお母さんたちは、ベビーパウダーが良い香りを残すだけでなく、おむつかぶれを防ぐことができると感じているからだ。

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家庭内のベビーケア用品
出典:インテージ生活者データベースConsumer Life Panorama

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布おむつ(出典:著者撮影)

全体的に見て私が感じたのは、インドのベビーケアに関しては、伝統的でナチュラルな治療法や、宗教的な側面が非常に重要であるということだ。そのため、ほとんどの初産婦は、家族の中で行われてきたすべての儀式や伝統に従うことを好むのである。


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    モーミタ・サハ

    ニューデリー在住10年以上のインド人定性リサーチャー。家族のために新しい料理を作るのが好きで、5歳になる娘と一緒に過ごすのが好き。

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    編集者プロフィール
    高浜 理沙(たかはま りさ)

    Global Market Surferの運営担当。

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