<駐在員コラム>【香港】Withコロナで注目が集まる、新たな余暇の過ごし方
香港は、世界でも5本の指に入る人口密集都市。
香港の面積(約1,100平方キロメートル)は東京都(約2,200平方キロメートル)の約半分しかなく、さらに市街地は面積全体の約25%未満。そこに約750万人の人々が居住するため、人口密度が非常に高いのです。
以下の各都市との比較でもそのことがお分かりいただけるかと思います。
都市別人口密度_17ヵ国
Reference * Population and land area of each city: acuired from Statistics Office of each country (See the download Excel file for details) * Population density: calculated by Intage Inc.
香港では日本のように地震もほとんど発生しないため高層ビルが立ち並び、香港島の山頂から見える景色は、100万ドルの夜景として有名でもあります。人口密度が高いため、居住費は非常に高く、李嘉誠(2021年香港富豪ランキング1位、純資産は約354億米ドル)のような富豪たちが住む豪華な一軒家や、郊外や離島において比較大きめの部屋に居住する人々を除けば、大多数の人々は狭いマンションに居住しています。そのため香港人は、普段から外出することが多くなります。週末になると家族親戚一同で飲茶を食べに外出し、さらに休暇となると、日本をはじめ世界各国へ旅行に出かけます。
ところが、コロナウイルスの感染拡大により、世界中で渡航禁止や隔離政策がとられたため、自由に旅行ができなくなってしまいました。そして、香港と中国大陸の間にある境界も自由に行き来ができなくなりました。つまり、香港の人々は、狭い香港の中に閉じ込められてしまったのです。しかし、香港の人は逞しく、コロナ禍で、手軽なレジャーを改めて楽しみはじめました。今回はそんな香港の人々からコロナ禍で注目を集める余暇の過ごし方をご紹介したいと思います。
Staycation
「Staycation」とは、「Stay」と「Vacation」からなる造語です。ホテルで休暇を楽しむというのがコンセプトです。香港は観光客が多く訪問する都市でしたが、渡航禁止となって以降、観光客がほぼ0となりました。その中で、経営苦境に陥ったホテル業界が香港人に向け、Staycationを宣伝するようになりました。香港の日常は、人々の喧噪に満ち溢れています。ホテル滞在により、日常の喧騒を離れ、非日常感を味わってもらうということを主眼に置いています。ホテルの中でも特に人気なのは、5つ星高級ホテルです。通常であれば、比較的高額な宿泊費が必要となりますが、観光客激減により、ホテルは宿泊費の大幅な値引をしています。さらに、高級ホテルの中でも特に人気があるホテルは、「インスタ映え」するホテルです。若い女性層、家族連れなどが、誕生日などの記念日に、「インスタ映え」するホテルに宿泊し、ルームサービスを利用して、窓から見えるビクトリアハーバーの景色を撮影したり、ホテルのレストランでのアフタヌーンティーの様子などを撮影し、SNSに載せています。そのため、ホテル側も、宿泊客がホテル滞在を満喫できるようなパッケージを提案しています。特に、キャッシュクーポン付プランが非常に多くみられます。キャッシュクーポンを、ホテル内のレストランや、ルームサービス、そしてスパなどで使用もらい、ホテル内の施設を可能な限り使用してもらうというコンセプトです。
#staycationhk などで検索してみると、実際の様子が見ることができます。
自然を楽しむアウトドアレジャー
写真出典:筆者撮影
まず、若者から初老層まで幅広く人気があるのが、トレッキングです。香港各地にトレッキングコースが設置されており、ゆっくり歩いて数時間程度で完了できるコースから、険しい山道をゆく一日がかりのコースまで、様々なコースが用意されています。コースの終端で、写真撮影をし、SNSに載せて友人とシェアする人々をよく見かけます。
写真出典:筆者撮影
さらに、車を保持しているファミリー層にはキャンプも人気です。郊外各地に整備されたキャンプ場に向かい、BBQを中心に気軽にキャンプを楽しみます。高層ビルが林立する中で生活する香港人にとっては、自然の中で過ごすことは非常にリラックスを感じるようです。
今回は、コロナ禍でも新たな余暇の楽しみ方を見つけ、逞しく生きる香港人の最新レジャーをご紹介しました。
コロナ前の訪日香港人観光客も、ショッピングやグルメといった従来の楽しみ方に加え、日本国内の郊外に出かけて絶景スポットを楽しむなど「体験型」の楽しみ方をする訪日リピーターが増えていました。香港の人々は、ワクチンを接種して早く旅行に行きたいという意欲がほかの国より強いという調査結果(詳細はこちら)も出ています。今回ご紹介した「ホテルでの非日常ステイケーション」「自然を楽しむアクティビティ」など新しい余暇の楽しみ方に親しんだ香港の人々は、日本への旅行についても新しい楽しみ方を求めていくようになるかもしれません。
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執筆者プロフィール
向井 秀雄(むかい ひでお)
香港在住の経理担当。これまでに北京、上海、深セン、香港に合計11年居住。
国際性にあふれる香港社会のスピーディーな変化を日々追っている。 -
編集者プロフィール
高浜 理沙(たかはま りさ)
Global Market Surfer サイト運営担当。
コロナ禍で、先日初めてステイケーションを体験。
- 2021/10/21
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