<駐在員コラム>【中国】上海ロックダウン2022
- 公開日:2022/04/27
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日本でも時折ニュースになっている上海のロックダウン。上海市民はコロナ流行初期の2年前にも「外出禁止」を経験したが、これは2度目ではなく、初めての経験なのかもしれない。前回は不要不急の外出をできるだけ控える程度で、スーパーなどの店は開いていたし、買い物に出かけることもできたが、今回は家から出ることができない。また、意識面でも前回とは異なる。前回は自分と家族の身を守るために自らの選択で外出しなかったのに対し、今回はコロナに対する知識も増え、海外のニュースも見聞きしたことでリスクに対して自分なりの理解があるためか、外出したくてもできないと思っている人も多いと思われるのだ。
<ロックダウンの状況>
・団地やブロック単位で徐々に封鎖解除されていく予定だが、ゴールデンウイーク明けくらいまでは多くの地域で封鎖が続きそう ・家の外に出ることはできないが、団地の敷地内や指定された場所で数日おきに行われるPCR検査には外出可能 ・多くの企業は正常操業が行えない状態、学校もオンライン授業になって1ヶ月以上 ・4月下旬時点ではタクシー含む交通手段すべて停止中 ・従業員も出勤できないため多くの店舗、物流がストップもしくは細々と稼働
<封鎖中の様子>
食材争奪戦
上海市民が日々最も頑張っていることでもある。毎日早朝に目覚ましをかけて、アプリとの格闘からはじまる人は多い。一般の店は販売開始と同時に完売し、1分も経てば本日閉店。個人ベースでは発注成功率5%に満たないとも言われる。当然売り切れ続出で買いたかったものをすべて買えることはない。
支援物資/配給
地区によって異なるが、政府から不定期で物資が配られる。封鎖初期は最低限の食材だったが、徐々にバラエティに富んだ物資になってきた。焼き菓子や調味料、生活用品、薬も。
団体購入
現在最も有効な生活必需品の購入ルート。団地のコミュニティでの大量購入で、コミュニティのリーダー(団長)が、仕入れ先と交渉し、アプリで住民の発注を取りまとめ、商品は数日後に団地に一括納入されるというもの。封鎖前は主要な購入ルートではなかったため、封鎖になって変わったことのひとつ。
団体購入の商品が納入される様子
グループチャット
封鎖直後にPCR/抗原検査実施漏れを防ぐ目的から、Wechatグループが団地やマンションの棟単位などで作られたことをきっかけに、近隣住民との交流が盛んになった。生活必需品の入手が困難な状況の中で、このグループチャット内で物々交換やおすそ分けも行われている。また、シニアや外国人など情報へのアクセスが困難な家庭へのフォロー、日々のお困りごとの解決など助け合いも積極的になされている。封鎖前と比べて参加するコミュニティが増え、特に近隣住民との結びつきは強くなった。
入手困難食材
保存が効く食材は比較的入手しやすく、保存が効かない葉物野菜や魚は入手しづらい。一時期、野菜を多く保有する家庭は「富裕層」と言われ、レタスは「シャネル」の価値があるとも言われた。封鎖初期に香味野菜(ネギ・にんにく・生姜など)の入手が難しかったことをきっかけに、栽培を始めた人も多いようだ。グロサリーではコーラとお酒の入手が難しく、渇望している人多数。ネギ、ニンニクの芽を育てている知人宅
封鎖生活の楽しみ
この点は日本の自粛生活と近い部分が多く、ゲームや麻雀などの趣味を充実させたり、リモートライブ、リモートトレーニング、リモートディスコ…に参加したり、餃子やパン作りなどで料理を楽しんだりしている。家族とのコミュニケーションも増えた。ついでに軽い散歩ができるPCR検査が楽しみという声もあるが、地味とはいえ、上海市民は共感できると思う。<気持ちの変化>
危機管理としてのストック需要
普段野菜をあまり食べなかった家庭も冷蔵庫に野菜を多くストックするようになっている。入手できる時にしておこうという意識、ストックがあることによる安心感といったものが背景にある。食材の他にも調味料、飲料(水、牛乳、コーラやコーヒーなどの嗜好飲料、お酒など)や日用品(特に紙製品、消毒剤)、薬も入手さえできれば、ストック需要は高まっている。日本と比較すると、もともと中国ではストックする傾向にあったが、従来は大量購入すると安いから、W11に代表されるセールの時に買うと安いからというのが主な動機であり、封鎖を経験した現在は備えが主な動機である。
物流回復後に欲しいもの
大きな冷蔵庫、フリーザー、家庭菜園…一部の声かもしれないが、これもまた共感する市民が多いように思う。封鎖解除後にやりたいこと
中国では健康意識が高まってきていたが、封鎖解除後に食べたいものはハンバーガーや焼肉、ケーキ、ミルクティーなどジャンキーなものが挙がってくる。封鎖により春を感じられず、冬から一気に夏になろうとしている中、大自然を感じる旅行に行きたいという気持ちも非常に高まっている。解除後、しばらくはストレス解消のための散財がありそうだ。
<最後に>
いずれ封鎖が解除されて元の生活に戻るだろうが、団体購入という購入ルートはもしかしたら定着するのかもしれないし、ストック需要の高まりは新商品好きの上海人のブランドスイッチにも影響するかもしれない。今回作られたコミュニティは封鎖解除後に解散するとは考えにくく、今後もリアル・デジタルミックスの交流が続くだろう。さらに、中国の感染状況をみると上海だけでなく他の都市にも広がっており、中国人の考え方に変化をもたらす可能性もあるかもしれない。
このコラムが公開される頃には多くの地区で封鎖が解除されていることを期待しつつ・・・
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執筆者プロフィール
羅 娜(ラナ)
INTAGE CHINAクライアントアカウントデレクター 中国人、日本で大学卒業後インテージに入社。経歴14年、多くの調査手法に精通している。現在、上海で中国に進出している日系企業を担当、より顧客ニーズを深く理解し、課題に応じて的確な提案をすることを常に心がけている。
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編集者プロフィール
関尾 由香
2007年インテージ入社。現在上海在住。封鎖期間中の配給で絶対自分では買わない商品との出会いがあるのを面白く感じている。最近気がかりなことは、トイレットペーパーの在庫があと2ロールであること。