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<駐在員コラム>【中国】上海ロックダウン2022

<ロックダウンの状況>

・団地やブロック単位で徐々に封鎖解除されていく予定だが、ゴールデンウイーク明けくらいまでは多くの地域で封鎖が続きそう
・家の外に出ることはできないが、団地の敷地内や指定された場所で数日おきに行われるPCR検査には外出可能
・多くの企業は正常操業が行えない状態、学校もオンライン授業になって1ヶ月以上
・4月下旬時点ではタクシー含む交通手段すべて停止中
・従業員も出勤できないため多くの店舗、物流がストップもしくは細々と稼働

3月下旬から4月初旬にかけての一時の混乱期は脱し、その頃に比べれば少し回復している実感はあるが、まだまだ上海の街は寂しい感じ。

<封鎖中の様子>

食材争奪戦

上海市民が日々最も頑張っていることでもある。毎日早朝に目覚ましをかけて、アプリとの格闘からはじまる人は多い。一般の店は販売開始と同時に完売し、1分も経てば本日閉店。個人ベースでは発注成功率5%に満たないとも言われる。当然売り切れ続出で買いたかったものをすべて買えることはない。

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各種サービス発注タイミングに合わせてアラーム設定

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販売開始直後に品切れ「补货中」

支援物資/配給

地区によって異なるが、政府から不定期で物資が配られる。封鎖初期は最低限の食材だったが、徐々にバラエティに富んだ物資になってきた。

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初回はキャベツ、にんじん、きゅうり。2回目は乾麺、スパム、ソーセージ。

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焼き菓子や調味料、生活用品、薬も。

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一部の会社では、社員が安心して働けるよう、別途支援物資を手配したケースもある。

団体購入

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団体購入の商品例と、注文とりまとめの様子

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筆者は同じマンションの方と、醤油1本=オレンジ4個+リンゴ4個、コーラ1本=アイスクリーム2個を交換した

入手困難食材

保存が効く食材は比較的入手しやすく、保存が効かない葉物野菜や魚は入手しづらい。一時期、野菜を多く保有する家庭は「富裕層」と言われ、レタスは「シャネル」の価値があるとも言われた。封鎖初期に香味野菜(ネギ・にんにく・生姜など)の入手が難しかったことをきっかけに、栽培を始めた人も多いようだ。グロサリーではコーラとお酒の入手が難しく、渇望している人多数。

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違う意味で「富裕層」に仲間入り する我が家

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ネギ、ニンニクの芽を育てている知人宅

封鎖生活の楽しみ

この点は日本の自粛生活と近い部分が多く、ゲームや麻雀などの趣味を充実させたり、リモートライブ、リモートトレーニング、リモートディスコ…に参加したり、餃子やパン作りなどで料理を楽しんだりしている。家族とのコミュニケーションも増えた。ついでに軽い散歩ができるPCR検査が楽しみという声もあるが、地味とはいえ、上海市民は共感できると思う。

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饅頭とパン作りの様子

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リモートコンサートに参加している様子

住んでいる場所によって多少状況は異なるものの、封鎖中の生活はコミュニティによって成り立っているのは間違いない。また、コミュニティ内ではボランティアが活躍しており、その働きぶりに感心・感謝する日々だ。

<気持ちの変化>

危機管理としてのストック需要

普段野菜をあまり食べなかった家庭も冷蔵庫に野菜を多くストックするようになっている。入手できる時にしておこうという意識、ストックがあることによる安心感といったものが背景にある。食材の他にも調味料、飲料(水、牛乳、コーラやコーヒーなどの嗜好飲料、お酒など)や日用品(特に紙製品、消毒剤)、薬も入手さえできれば、ストック需要は高まっている。日本と比較すると、もともと中国ではストックする傾向にあったが、従来は大量購入すると安いから、W11に代表されるセールの時に買うと安いからというのが主な動機であり、封鎖を経験した現在は備えが主な動機である。

物流回復後に欲しいもの

大きな冷蔵庫、フリーザー、家庭菜園…一部の声かもしれないが、これもまた共感する市民が多いように思う。

封鎖解除後にやりたいこと

中国では健康意識が高まってきていたが、封鎖解除後に食べたいものはハンバーガーや焼肉、ケーキ、ミルクティーなどジャンキーなものが挙がってくる。封鎖により春を感じられず、冬から一気に夏になろうとしている中、大自然を感じる旅行に行きたいという気持ちも非常に高まっている。解除後、しばらくはストレス解消のための散財がありそうだ。

ストックし過ぎた場合、コミュニティを介しておすそ分けや個人売買をする手段も出来たため、ストック需要は今後も続きそう。

<最後に>

いずれ封鎖が解除されて元の生活に戻るだろうが、団体購入という購入ルートはもしかしたら定着するのかもしれないし、ストック需要の高まりは新商品好きの上海人のブランドスイッチにも影響するかもしれない。今回作られたコミュニティは封鎖解除後に解散するとは考えにくく、今後もリアル・デジタルミックスの交流が続くだろう。
さらに、中国の感染状況をみると上海だけでなく他の都市にも広がっており、中国人の考え方に変化をもたらす可能性もあるかもしれない。
このコラムが公開される頃には多くの地区で封鎖が解除されていることを期待しつつ・・・

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  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    羅 娜(ラナ)

    INTAGE CHINAクライアントアカウントデレクター
    中国人、日本で大学卒業後インテージに入社。経歴14年、多くの調査手法に精通している。現在、上海で中国に進出している日系企業を担当、より顧客ニーズを深く理解し、課題に応じて的確な提案をすることを常に心がけている。

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    編集者プロフィール
    関尾 由香

    2007年インテージ入社。現在上海在住。封鎖期間中の配給で絶対自分では買わない商品との出会いがあるのを面白く感じている。最近気がかりなことは、トイレットペーパーの在庫があと2ロールであること。

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    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
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