imagesColumn

【各国結婚と資産事情】台湾編:結婚するときの準備

images

関連記事一覧

第一回:【各国結婚と資産事情】インドネシア編:結婚するときの準備
第二回:【各国結婚と資産事情】フィリピン編:結婚するときの準備
第三回:【各国結婚と資産事情】中国編:結婚するときの準備
第四回:【各国結婚と資産事情】タイ編:結婚するときの準備
第五回:【各国結婚と資産事情】ラオス編:結婚するときの準備
第六回:【各国結婚と資産事情】インド編:結婚するときの準備

___________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________

国際通貨基金(IMF)の予測では2022年の一人当たりのGDPが3万6000ドル(約470万円)に達し韓国を追い抜くだろうと言われている台湾。不景気が長引いていると言われ続けているが、この10年の経済発展はめまぐるしい。急速なIT技術の進化、価値観の変化により若者の結婚への意識も変わりつつあるようだ。日本と同じように結婚や子どもを持つ事を人生の選択肢に入れない若者が増えつつある。また結婚式や贈り物の文化も次第に簡素化しているのも実情だ。

晩婚化が進む台湾の結婚事情

日本の内閣と各省庁に当たる行政院によると、2021年の初婚平均年齢は男性32.3歳 女性30.4歳。結婚のタイミングについては2パターンあり、大学卒業後に相応しい相手がいれば結婚するタイプと、社会に出て何年か経ってから結婚するタイプだ。30代になると周囲に結婚する人が増え始め、特に女性は出産適齢期もあり、結婚を決意する人も多い。ただ台湾の離婚率についても注目しなくてはいけない。日本の内務省に当たる内政部の統計によると2021年に結婚したカップルは11万4606組、一方離婚したカップルは4万7887組にものぼる。更に2020年末の統計によると25歳から44歳までの未婚の台湾人は43.2%と歴代最高となった。経済的な不安や不安定な社会情勢が影響し、結婚しない若者が年々増えている。

結婚の際に必要な「聘金」について

日本と同じく、台湾人にとって結婚は個人同士ではなく、「家」と「家」とのつながりと言える。家族や親戚のつながりを日本よりも大切にする台湾人にとっては「一族」と「一族」のつながりといっても過言ではない。

結婚の際に新郎側が新婦側に「聘金(ピンジン)」という金銭を送る風習がある。この聘金は結婚の中で最も大切なことの一つとされており、新婦が嫁に行った際に衣食住に困らないようにと渡される「大聘(ダーピン)」と新婦の両親に妻となる娘をこれまで育ててくれた感謝の気持ちを表す養育費として渡される「小聘(シャオピン)」とに分かれている。

一般的な相場は、大聘は36万元(日本円160万円ほど)以上、小聘は10万元以上(日本円45万円ほど)とされ、どちらも縁起の良い偶数で用意し、金額については双方で話し合い取り決める(ここで意見が合わない場合は結婚が破断になることもある)。

大聘は殆どが「嫁妝(ジャージュァン)」と呼ばれる嫁入り道具の購入に使用される。嫁妝は主に家具、寝具、現代では家電や車などが用意され、ゴールドの指輪、ネックレスなどのジュエリー(伝統的に龍と鳳凰のあしらわれたゴールドの腕輪が購入される)。その他風呂桶や裁縫箱、棚、箸2セット、洋服72セットと実に様々。かつては、験を担ぐ為のアイテムが用意されていたが、現在はかなり簡素化してきている。人によっては「小聘」を受け取り「大聘」を式の後に返す人も多い。また現在この伝統は変わりつつあり、「まるで娘を現金で売りに出しているようだ」と金銭そのものを受け取らない人もいるようだ。

変化しつつある結婚の条件

かつては車と住宅、またはそれらを購入するのに十分な貯金を持っている男性が結婚相手に理想的だとされていた台湾。物価高や不動産価格の変化によってそれが難しくなってきているようだ。

スイスのジュリアスベア銀行が発表した「Global Wealth and Lifestyle Report 2022」によると、世界の24都市の富裕層の消費行動でよく見られる商品の価格を調査したところ、台北は上海、イギリスに継ぐ第3位の価格の高さであった。この結果から富裕層だけに限らず、台北の物価の高騰が非常に顕著であるという事が分かる。2011年から2021年までの物価の上げ幅は8.93%。更に不動産に関しては52%もの上げ幅が発生している(2000年以降に不動産投資ブームが起き、住宅価格が跳ね上がっている)。平均年収は77.6万元(約353万円)と10年前に比べ大幅に増えているが、住宅価格がここまで上がっては手が出ないという若者が殆ど。結婚時やその前に住宅を手に入れた若者は多くが親の援助を頼りに購入していると言われている。更に近年台北や新竹エリアの物価高が目立ち、新北や桃園などの郊外に住宅を構え、そこから台北に出勤するという新婚家庭が目立つようになった。結婚後の新居購入は一般的だったが、住宅価格の高騰により、簡単ではなくなった傾向にある。賃貸で住む人もいれば、「子どもを産まない代わりに住宅を買う」という選択をする人もいるとされている。

現在の30歳以下の若者は車を必要としない傾向にある。20年前は50万元以下(約227万円)の価格で車が買えていたが、物価の上昇や初任給の低下などが問題でローンを組むことも難しく、親の補助なしには購入できないという若者が増えて来ているが親の世代も経済的に余裕がない人が多く、更に困難になっている。また、現在の若者は車以外にもパソコン、旅行、グルメ、ゲームなど、趣味が多様化していることから、車を買わず他のものにお金をかける傾向もある。現代の新婚夫婦は以前のように車と住宅、どちらも手に入れるというよりは、「車と住宅のどちらを買うべきか。」と考える人が多いようだ。

指輪に関しては、一般的な月収を3万元(約13.6万円)とすると、「1か月分でシンプルな指輪を買える、2か月分で小さなダイヤつきの指輪が買える、3か月分でブランド等の選択肢が広がる。」と紹介されている。 婚約指輪の相場は3〜5万元(約13.6~22.7万円)ほど、結婚指輪(ペアリング)の相場は8万元(約36.4万円)ほどだ。 人生の一大イベントである結婚、かつては伝統としきたりの元、多くの品物と資産を準備する必要があったが、その文化は時代とともに変化し、簡素化の一途を辿っている。新しい生活を迎える新婚夫婦にとって、本当に必要な物を見極めようとする動きが出ているようだ。

インテージのネットリサーチによる自主調査データ

調査地域:日本、中国、香港、タイ、インドネシア、ベトナム、インド、アメリカ、スウェーデン
対象者条件:
・男女20歳~49歳、(人口構成比に合わせてウェイトバックあり)
・主要都市在住(以下参照 ) ・SEC 中間層以上
標本抽出方法:オンラインアンケート調査
標本サイズ:n=328(日本)n=407(中国)n=329(香港)n=323(タイ)n=341(ベトナム)n=339(インドネシア)n=344(インド)n=324(アメリカ)n=327(スウェーデン)
調査実施時期: 2022年2月16日~3月16日
詳細はこちらから >>https://www.global-market-surfer.com/report/detail/152/

images


  • TNCライフスタイル・リサーチャー

    執筆者プロフィール
    TNCライフスタイル・リサーチャー

    株式会社TNCが運営する、世界70ヵ国100地域600名に住む日本人女性のネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」が、数字では見えてこないトレンドや、生活者の生声を切り出します。その生情報を元に、企業の課題解決のための提案や商品企画を行っています。 https://www.tenace.co.jp/ 担当者プロフィール:台湾在住約20年。親日家が非常に多い台湾はITやエコの分野で目まぐるしい発展を続けています。また、台湾人らしいアイデア満載のグルメやマーケティングは非常に興味深く、参考にする点が多くあります。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    マレーシア人リサーチャーです。15年前から来日し、今も東京を拠点とし、東南アジアをはじめ海外のインサイトについて発信しています。

転載・引用について
  • 本レポート・コラムの著作権は、株式会社インテージ または執筆者が所属する企業が保有します。下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。

    「出典: インテージ 調査レポート「(レポートタイトル)」(●年●月●日発行)」
    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
  • 禁止事項:
    • 内容の一部または全部の改変
    • 内容の一部または全部の販売・出版
    • 公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
    • 企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的とした転載・引用
  • その他注意点:
    • 本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
    • この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
  • 転載・引用についてのお問い合わせはこちら