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[China: World Residence Tour] Demand for Early Education in a Competitive Society

中国は競争社会とよく言われている。特に育児世帯の「80後」「90後」の親たちは、ちょうど第三次ベビーブームの世代なので、より激しい競争を経験した。そのため、中国では子供に対する早期教育が今まで以上に重視されている。今回は、Consumer Life Panoramaに登録されている中国の生活者をご紹介しながら、この現象についてご紹介したい。

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早期教育とは

早期教育とは、狭義的には0-3歳、広義的には6歳までの子供の教育のことを指す。特に、0-3歳の間は、人の習慣形成、思考方法形成や知能の発達の重要な時期であり、将来の成長のための土台を作る時期でもあるという説がある。この時期に、子供に、いい生活習慣を身につけることや、将来の知識の勉強のための思考方法を訓練すること、知的好奇心や美的感覚を育成することなど、子供の知力と潜在能力を早い段階で開発し、子供の総合的な発展を促進するための教育のことを指して早期教育といわれている。

日本ではあまりなじみのない早期教育という言葉ではあるが、中国では特に最近の親たちの間でその重要性が認識されてきている。日本では子供が小さいころ、何か習い事をすることに競争社会を勝ち抜くためといった思いニュアンスは少ないが、中国では子供の教育の重要な一環として捉えられている。

早期教育が重視される背景

そもそも、なぜ早期教育が中国でそこまで重視されているのか。筆者の推察では、主に2つの理由が考えられる。

第一に、人口構造からまず説明したい。中国では今まで3つのベビーブームがあり、今の教育の中心である25歳から35歳の人たちはちょうど第三次ベビーブームで生まれた人たち。同じ世代の人口が多いことは、何をしても競争が前の世代より激しいこと。また、下図10歳以下の人口割合を見ても、中国は約12%で日本よりその割合が多い。幼い頃から激しい競争を経験した親たちは、自分の子供を人に負けないように、前の世代より早期教育を重視しているのではないだろうか。

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中国と日本の人口構造
出典:Global market surfer(「性年代別人口・人口構成比(10歳刻み)_中国(2020年推定値)」)

第二に、中国が競争社会となったのは、人口構造の問題もある一方で、高等教育の課題もある。まずは高校進学試験の時の「5:5分流制度」だ。これは中国で長い間実施されて2022年に廃止したばかりの制度である。中学校卒業したあと、高校進学の時に、統一試験では上位50%の人が普通高校に行く資格があり、下位50%の人は職業高校しか行けないと、学生が「分流」される。さらに、高校進学の難関を乗り越えた後、大学進学が待っているので、気を抜くことはできない。世界的に比較しても、中国の大学進学率が38%ぐらいで決して高くない。ましてや名門校や重点大学の倍率もさらに高いのだ。

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中国の大学進学率
出典:Global market surfer(「四年制大学(レベル)進学率 _7カ国(2017)」)

中国では受験戦争ともいわれている進学の競争が激しい現状の中、「子供にスタートラインで負けさせない」という意識は親ならみんな持っている。問題はスタートラインをどこに設定するのかということだ。結局のところ、学校教育が始まる前から、将来の受験戦争で勝つために、親がいろいろと準備初めた結果、早期教育はますます重要視されるようになってきた。

Consumer Life Panoramaから見る早期教育の現状

中国では共働きとはいえ、忙しい日常の中でも育児を夫婦二人でやる世帯が存在している。特に早期教育は親たち自らやることが多い。早期教育は家でやる部分もあれば、外部機構を利用する部分もある。意識の高い家庭では、何かの明確な目的をもって計画的にやっている。

例えば、家では、下図左のような小さなテーブルを置いてある家庭がConsumer Life Panoramaでは複数ある。そのうえでブロックで遊んだりすることができる。付属のブロックを使って組み立てて遊ぶので、子供の創造力を育む。また、ふたをつければ、お絵かきすることもできるのでまさに一石二鳥。また、真ん中の写真は絵本の本棚。子供の絵本は物語だけではなく、世界を認識するための基礎知識も含まれている。右の写真は乗り物のパズル。これは子供の集中力を鍛えるためのものだ。

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家庭での早期教育の一例
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

また、子供は活動的なので、家にいてずっと静かに習い事をすることができない。そこで、下図のように家庭内では体を動かす場ももちろん設置されている。

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家庭で子供が体を動かす場所
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
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家だけではなく、外部機構の利用も近年増えてきている。ここでは意識が高い上海の世帯を事例に、Consumer Life Panoramaにある「May Day」というその世帯の一日の動きをまとめた情報(下図)を使って説明したい。

この世帯は共働きなので、平日は忙しい。休日になると、基本毎週子供を連れて早期教育のために外出する。

朝はパパが車で子供を連れてバスケットボールの授業に行く。パパ自身はバスケットボールが好きで、子供の集中力と語学力を鍛えるという目的もあって、外国人がコーチを担当するバスケットボールの練習を毎週やっている。

午後は、子供の知育のためにLegoの授業も毎週やる。それが終わったら、公園に行って子供に体を動かした後帰宅する。この世帯はこのように仕事以外、基本子供を中心に生活しているのだ。

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上海家庭の休日の一日
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

中国では、特に近年早期教育業界が急成長している。今の子育て世帯が早期教育に目を付けるのは、競争意識以外に、前の世代より質の高い教育を受けているので科学的に子供をよりよく育てることに抵抗感がないことも一因であろう。そのため、質の高い教育のコンテンツも求めていると考えられる。一部の収入の高い世帯は、中国国内のコンテンツだけで満足せず、海外の質の高いコンテンツを買い求めるという需要も存在している。筆者の友達の中には、日本の絵本を買って子供に読ませるといったことをしている家庭も存在している。

【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、デジタルライフをご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。カスタマイズした調査によらず、手元で海外生活者の住環境を観察したいという場合においてご活用いただけるサービスです。
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  • Intage Inc

    Author profile
    Yang Yan

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。日本にいる中国人の友達の中でも子供への教育熱心の人が多い気がする。

  • Intage Inc

    Editor profile
    Yusuke Tatsuda

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。自分の子供には体を動かすことを楽しんで欲しいと思い、体操教室に通わせている。

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