imagesColumn

<駐在員コラム>【ベトナム】ベトナムEコマース急拡大と今後拡大が予測される販売チャネル

images

本稿では、「ベトナムEコマース急拡大と今後拡大が予測される販売チャネル」について見ていきます。

ベトナム商工省電子商取引・デジタル経済局の報告書によると、ベトナムにおけるEコマースの市場規模は2020 年50 億ドル(6748億円)、2021年は推定130億ドル(1兆7544億円)であり、E コマース市場のボリュームは、今後数年間、大きな展開を迎える見込みです。ベトナムは、2025年には市場規模がインドネシアに次いで2位になり、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポールなどの東南アジアを追い越す可能性があります。
近年になって急拡大しているように見えるベトナムのEコマースですが、実は以前からその拡大に向けた素地が整っていました。ひとつはデリバリー文化、もうひとつはSNSの利用率の高さです。

 1USD134.96(202212月5日時点)

■ベトナムの道路事情にあう柔軟性・利便性の高いバイク

 筆者(今村)は2007年にハノイで生活を始めました。公共交通機関は不便なバスに限られる為、市民の主要な交通手段はバイク。来越された方の80%以上(筆者の感覚値)は、「これでよく事故が起きないものですねぇ」と決まって口にするような状況でした。残念ながら、事故は頻繁に起きていたのですが、圧倒的な数のバイクが信号のない交差点を巧みにすり抜けていく光景に感動さえも覚えたものです。
バイクの急速な普及の理由のひとつとして、バイクの柔軟性・利便性がベトナムの道路事情にあっていた点があげられます。バイクなら市内の1メートルにも満たない生活道路にも入っていけるし、狭いスペースにも駐車できます。自転車のように暑い中汗だくになることもありません。まさに生活必需品となっていったのです。

■バイクタクシーと個人間バイクデリバリー文化

■SNSとの融合と注目すべき販売チャネル「TIKTOK」

 Eコマースの拡大をもたらしたもう一つの理由としてSNSの利用率の高さがあげられます。ほとんどの人がSNSを利用しています。調査会社HootsuiteおよびWeAreSocialによると、一日当たりのインターネット利用時間平均で1日に6時間47分 で、そのうち平均SNS利用時間は2時間21分といわれます(*)。

  出典:VN express international https://e.vnexpress.net/news/news/vietnamese-spend-more-time-on-internet-social-media-than-asian-peers-report-4232155.html

 現在、SNSユーザー数(*)  一位は「Facebook(93.8%)」、2位はローカルSNSである「Zalo(91.3%)」、3位は「Tiktok(75.6%)」です。TIKTOKは、短い動画を投稿し閲覧するエンタメ要素の強いアプリでしたが、近年新たなビジネスツールとして注目されています。

  出典:Market insight Report ''The e-commerce pivot in Vietnam.2022''  Source: By Acclime Vietnam, supported by Kantar Worldpanel

 Tiktokの独自調査によりますと、回答者の約30%がインフルエンサーのレビューやライブコマースに影響されて購入意欲が高まったと回答しています。また、ライブコマースで気になった商品をTIKTOK上で購入できる「TIKTOK SHOP」も実装されています。現時点で中国、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、シンガポール、イギリス、ベトナムの限られたエリアでのみ使える機能で、ベトナムでは2022年4月30日にサービスがはじまっています。


ライブコマースでは自宅にいながら質問するなど実店舗さながらのショッピングを画面越しに楽しめるだけでなく、動画投稿で紹介された商品「タグ」をクリックするだけで購入でき、TIKTOK上のEC画面からも商品購入できます。TIKTOK SHOPはアプリ内で、商品選択から購入まで完結することができるのです。


主要ユーザーであるZ世代(現在10~27歳)は、抵抗なくファッションアイテムやアクセサリーを購入しています。販売側も彼らの目線にあった動画やライブコマースで情報提供を拡大しており、Eコマース経由での販売拡大を牽引しています。

images

■ファッション、美容、靴カテゴリーは動画との親和性が高い「TIKTOKSHOP」

 Z世代の目線に合った動画とは、「トータルコーディネートが一目でわかる」動画だと筆者は考えます。最近南部ホーチミンでは、男女ともにブーツスタイルが増えるなど、靴のファッションが多様化してきた印象を持ちます。TIKTOKのように縦画面で動画視聴が可能だと、スマホを持ち替える手間も省け、トータルコーディネートや素材の質感やサイズ感も一目で把握できます。TIKTOKのライブコマースとファッション関連動画は親和性が高いと言えるでしょう。TIKTOK SHOPで販売されている商品は、アプリ内表示順に女性服、美容品、靴、男性服となっています。ファッション関連製品の需要の高さが伺えます。

■ファッションアイテムのEC購入

images

インテージベトナムの月例消費者信頼指数202212月)

 インテージベトナムの月例消費者信頼指数(*)の消費変動(基準値3.0)をみてみると、「ファッション」が2022年1月の3.16から6月は3.56と上昇し、「ファッション」で今年上半期の最高値を記録し、9月も3.56をキープしており、ファッション支出が高いです。Eコマース経由の購入拡大もその牽引役のひとつです。

  出典:VIETNAMESE CONSUMER CONFIDENCE INDEX ,LATEST UPDATE. https://intage.com.vn/vietnamese-consumer-confidence-index-latest-update/

ベトナム商工会議所(VCCI)のデータ(*)によると、「ファッション・靴・美容商品」のECサイトにおける購入率は43%。トップの「食品(52%)」につぐ2番手となっています。
新型コロナの影響に加えて、ECサイトの品質管理の改善や、掲載画像・商品の説明基準の整備が主な理由といわれますが、上記のような若年ユーザーの購買がファッションカテゴリーのEコーマス販売を押し上げていることも大きな要因といえるのです。

    出典:The White Book on Vietnamese E-Business 2022 By: Vietnam E-Commerce and Digital Economy Agency, Ministry of Industry and Trade https://wtocenter.vn/file/18855/bctmdt2022-final-pdf_08c88.pdf

※月齢消費者信頼指数…その国の現在と将来の経済動向について消費者マインド(楽観的・悲観的)をアンケート調査して数値化した景気指標。インテージベトナムのオンライン調査プラットフォームAsian Panelを用い、ホーチミンハノイ在住の18歳以上の成人を対象とした月例調査。平均値は3.0で消費者が楽観的であれば、消費が増加すると考えられ、景気動向の先行指標の一つである。(202212月現在4000人対象)

■最後に

ベトナムに根ざしていたデリバリー文化の洗練、効率化と合わせてSNSにおけるライブコマースの拡大はファッションアイテムのような店頭販売がメインだった商材においてもEコマースでの販売拡大をもたらしています。ベトナムは国全体のDXプログラムの推進を宣言しており、益々IT技術の発展にも力を注いでいくと思われます。若年層の活発な購買意欲と相まって、ベトナムのEコマースの拡大基調はしばらく続いていくことでしょう。
筆者にとっても、昼食、夕食、おやつ、文房具や家電製品などの購入でEコマースは欠かせません。ファッションを購入したことはありませんが、ライブコマース経由で素敵なシャツを購入する日も近いかもしれません。

    1USD134.96(202212月5日時点)


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    今村信人

    INTAGE VN Director。国内外の広告/調査会社にて企業/商品ブランド構築支援業務を経験後、2007年ハノイ、2017年ホーチミン赴任。2022年10月よりINTAGEベトナム勤務。リサーチを中心に日系企業のマーケティング支援業務に従事。経営学修士。専門はセグメンテーション、ブランドマネジメント。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    牧野友紀

    INTAGE VN カスタマーサポート担当。ホーチミン市内民間の日本語学校にて日本語教師・校長秘書を4年間経験後、現在は社内リサーチチームと日系企業クライアントを繋ぐ。
    様々なデータを用いた分析結果と改善策を提供し、プロジェクトを支援している。

転載・引用について
  • 本レポート・コラムの著作権は、株式会社インテージ または執筆者が所属する企業が保有します。下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。

    「出典: インテージ 調査レポート「(レポートタイトル)」(●年●月●日発行)」
    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
  • 禁止事項:
    • 内容の一部または全部の改変
    • 内容の一部または全部の販売・出版
    • 公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
    • 企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的とした転載・引用
  • その他注意点:
    • 本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
    • この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
  • 転載・引用についてのお問い合わせはこちら