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【各国結婚と資産事情】カンボジア編:結婚するときの準備

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カンボジアはリーマンショック時を除き、2000年代以降毎年7%近いGDP成長率を維持し続けてきた。パンデミック下で成長が停滞したものの、2022年のGDP成長率は4.5パーセントと予測されている(世界銀行 Global Economic Prospects 2021)。2016年に低所得国から下位中所得国に格上げされたカンボジアは、2030年までに上位中所得国を目指している。今回は、経済成長著しいカンボジアの結婚事情について紹介する。

建設ラッシュと土地を買う国民

首都プノンペンは建設ラッシュの真っ只中にある。2030年までに、国内で100万戸近い新規住宅の供給が不可欠とされ、プノンペンだけで約5万2,000戸の建設が必要と予測されている(カンボジア国土管理・都市計画・建設省)。
「郊外でも土地を持っておけば確実に売れる」と考える中間層以上の若者たちの間では土地の購入が流行している。ただし、結婚を控えている男性にとっては、「土地は欲しいけれどまずは結婚資金が優先」だ。


日本円で10万円ほどの給料をもらっているソックさん(24歳)は、「銀行からお金を借りてプノンペンに隣接したカンダール州に土地を買ったため、毎月の返済で結婚資金が貯められずプロポーズもできない」と語っている。

結婚資金はすべて新郎が賄う

カンボジアでは、結婚が決まると新郎がすべての結婚資金を用意しなければならないため、将来の結婚を考え、家族に女子が生まれると喜ばれる。
場合によっては資金がある程度ないと結婚そのものが許されないことさえある。一番お金がかかるのが披露宴になり、新婦の自宅もしくはその近くで、道路を遮ってまで大きなテントを張って開催されるのが主だったが、プノンペンなどの都市には近年豪華な結婚式場が次々と建設され、結婚式場を利用するカップルも増えている。
披露宴は、安くても日本円で100万円以上かかる。費用は年々上がっていて200万円以上支払う場合もある。一般的な会社員で5万円程度の月給であったとしても、カンボジア人男性はその20ヶ月分以上する披露宴の資金を用意する。


結婚指輪に関しては、お互いが好きなものを買うことが主流で、高いものを買う必要性は必ずしもない。どちらかというと新郎新婦のためというよりは家族や友人に見える部分にお金を使う傾向にある。

披露宴は一世一代の晴れ舞台

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友人の結婚式の様子

カンボジアの披露宴は、とにかく派手な傾向にある。一世一代の晴れ舞台である結婚式では、新郎新婦は伝統的衣装から現代的なドレスやタキシードに至るまで、数回のお色直しをするため衣装代がかかる。
家族や友人も結婚式があるたびにテイラーで衣装を新調するため、結婚式シーズンと呼ばれる乾季は結婚式用の小遣いが必要だ。プノンペンだけで毎年5,000から6,000回の結婚式がある(Phnom Penh Municipal report)。
カンボジアの披露宴は出入り自由な食事会のようなもので、食事が済むと帰宅する人も多い。帰り際にご祝儀を渡す習慣があるため、料理の豪華さも重要となっている。「料理にがっかりしたからご祝儀を減らした」などという話もあるくらいだ。披露宴会場への支払いは、テーブルの数ごとにカウントされる場合が多く、用意したテーブルが埋まらないと新郎新婦にとっては赤字。出欠の返事を事前にする義務がないため、手渡しする招待状の数を決めるのも新郎新婦の腕の見せ所だ。ちなみにカンボジアでは郵便制度が確立されていないため、招待状は基本手渡しとなる。

新居は妻の家族と同居が一般的

カンボジアでは、結婚することを“嫁に行く”といった表現はなく、夫婦別姓が一般的。結婚してすぐに夫婦だけで暮らすというカップルはほとんどおらず、妻の家族と同居している人が多い。


カンボジア人にとっての家族は、叔父や叔母、従兄弟などの親族も含まれるため、大家族で暮らしている家が多い。子どもが産まれても妻の家族が面倒を見てくれるため、仕事のために保育所に預けるということも不要なのだ。そもそも保育所や託児所はほとんどなく、教育のために2歳や3歳から「学校」と呼ばれる幼稚園に通わせることは多々ある。カンボジアが平和になってから産まれた子育て世代は、無理をしてでも子どもの学費を惜しまない傾向にある。そのためには共働きで稼ぐ必要がある。


既出の建設ラッシュで、プノンペンはどんどん郊外へと住宅地が広がっている。地価が高騰しているプノンペン中心部で新築物件を手に入れることが困難な状況で、郊外の新興住宅地に15〜17年程度のローンで住宅を購入する夫婦も多い。しかし、公共交通機関がなく移動が主にバイクであるカンボジアでは、郊外の家は職場や子どもの学校から遠い等の理由で、平日はこれまで通り妻の実家で暮らし、土日や休暇の時だけ新居で過ごすという家族の姿もよくある。

結婚となるとまずは披露宴にお金を使うカンボジアの若者たち。結婚後は妻の実家で暮らしながら貯蓄をし、郊外に家を買い、郊外と都市部の移動のための車を買い、子どもの教育にお金を使って、共働きを続けるというのが、新時代の家族のカタチである。

インテージのネットリサーチによる自主調査データ

調査地域:日本、中国、香港、タイ、インドネシア、ベトナム、インド、アメリカ、スウェーデン
対象者条件:
・男女20歳~49歳、(人口構成比に合わせてウェイトバックあり)
・主要都市在住(以下参照 ) ・SEC 中間層以上
標本抽出方法:オンラインアンケート調査
標本サイズ:n=328(日本)n=407(中国)n=329(香港)n=323(タイ)n=341(ベトナム)n=339(インドネシア)n=344(インド)n=324(アメリカ)n=327(スウェーデン)
調査実施時期: 2022年2月16日~3月16日


詳細はこちらから >>https://www.global-market-surfer.com/report/detail/152/


  • TNCライフスタイル・リサーチャー

    執筆者プロフィール
    TNCライフスタイル・リサーチャー

    株式会社TNCが運営する、世界70ヵ国100地域600名に住む日本人女性のネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」が、数字では見えてこないトレンドや、生活者の生声を切り出します。その生情報を元に、企業の課題解決のための提案や商品企画を行っています。 https://www.tenace.co.jp/
    担当者プロフィール:カンボジア・プノンペン在住5年。40歳を過ぎてから現地の大学院に潜り込み教育事情について調査。ミイラ取りがミイラになり、現在は教育支援のプロジェクトコーディネーターとして常夏の国を満喫しています。


     

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