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日本人のスマホの持ち方は独特?-国際比較調査でみるスマホ操作の国別傾向-

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あなたが50代なら、おそらく左手にスマホを持って右手の人差し指で操作をしているのではないか。20代なら右手にスマホを持って右手親指で操作している可能性が高い。電車の中でちょっと観察すると、そのような傾向がありそうなことに気づく。一方、海外で観察していると、日本とはちょっと違うようにも見える。


本記事では、年代や国によるスマホの持ち手や操作の仕方の違いと、アンケート回答への影響について、インテージグループR&Dセンターで行っている研究を紹介する。

右利きと左利き

本論に入る前に、右利きと左利きの比率を確認しておく(図表1)。日本では、概ね1割程度がどの年代でも左利きである。

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国別にみても左利きの比率は1割程度で一定であり、極端な違いはない(図表2)。

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スマホの持ち手

次に、スマホをどちらの手で持っているかである。スマホでどのような作業をするかによって、違う持ち方をしていることも考えられるが、今回はアンケート回答をしている状態での持ち方を質問している。こちらも日本のデータからみていく(図表3)。10代から30代までは右手持ちと左手持ちは拮抗しているが、40代、50代では7割以上が左手持ちである。10代は両手持ちも多い。

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日本が最も極端ではあるが、年齢が上がるほど左手持ちが多くなるのは今回調査している11か国すべてに共通する傾向である。図表4は11か国のTOTALの値を参考までに載せている。

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国別では東アジアの3か国(日本、中国、韓国)では左手持ちが多いが、その他の国では右手持ちが多い(図表5)。

“スマホの操作”の国際比較

操作する指

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持ち手と指の組み合わせ

持ち手と操作する指の組み合わせで多いパターンを抜き出した(図表7)。「右手持ち・左手親指操作」や「左手持ち・左手親指操作」「右手持ち・右手親指操作」が多いパターンである。日本で多い「左手持ち・右手人差し指操作」は日本以外では主流ではない。

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海外で多い「右手持ち左手親指操作」に違和感を持つ人もいるかと思うが、下記の写真のように、両手持ちに近いのだが「左手は添えるだけ」という持ち方である。「右手持ち左手親指操作」と「両手持ち左手親指操作」は、意識上の違いはあるものの、実際にはほぼ同じ持ち方であると考えられる。

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一方、持ち手と同じ手の親指で操作している場合は完全に片手で操作していることが多い。

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尚、日本人のスマホ操作の仕方については、「リサーチフィールドサイエンス~スマホ回答の研究:スマホの持ち方と操作性の違いが与える影響」で紹介した通り、大規模調査を2019年に実施している(図表8)。※性年代別に設計した調査ではないため、TOTALの値は参考値。
若年層では各国で多くなっている「右手持ち・右手親指操作」が多く、日本人に多かった「左手持ち・右手人差し指操作」は男女とも40代以上で特に多くなっている。
40代以上の日本人が「左手持ち・右手人差し指操作」をする理由は調査からは不明である。そして何故そうなのかを問いかけても答えは得られないが、仮説としては受話器を左手に持ち、右手でメモを取るというのが社会人の基本的なフォームであったからというのはありそうだ。

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スマホの持ち手と操作による回答バイアスの存在について

本調査は、国別のスマホによる回答方法の実態を知りたい、というのが目的の1つである。結果はここまで記述してきた通りである。一方、この調査のもう一つの目的はスマホでのアンケート回答において「持ち手と操作による回答バイアス」が存在する可能性の確認である。
特に親指での操作が押しにくさからバイアスを生むのではないかというのが事前の仮説である。


仮説検証のために、バイアスを受けやすいと考えられる設問を2つ設定した。
それぞれ、「非常にあてはまる」「あてはまる」「どちらともいえない」「あてはまらない」「まったくあてはまらない」を左から順に選択肢として並べてある

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結果は図表9の通りである。親指操作そのものでは差異はほぼ無いように思われる。
一方、「右手でスマホを持って右手の親指で回答」した場合には右側の選択肢は選ばれにくく、「左手でスマホを持って左手の親指で回答」した場合には左側の選択肢は選ばれにくい傾向にある。仮説ではあるが、片手でスマホを持って親指で答えた場合には手前側を押しにくいのではないかと思われる。

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とはいえ、差異は微細であり、右手持ちと左手持ちでバイアスを打ち消しあうことを考えると、実務上の影響は限定的であると考えられる。

最後に

調査の基本は観察である。スマホの操作方法が年齢によって違うことは、電車内での操作をする様子を見ていて分かっていたし、海外出張時に国による違いがありそうなことも分かっていた。ただし、それを量的に把握することは定量調査を実施して初めて可能となる。一方、回答(操作)方法が調査結果にどのような影響を及ぼすかを検証することが、リサーチの品質にとって重要である。今後も基本的な品質を大事にしていきたい。



<調査設計>
国際比較調査<図表1~7>
調査手法:dataSpring社(インテージグループ)のモニターに対するインターネット調査
調査対象:15才~59才男女個人
調査エリア:日本、中国、韓国、インド、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、シンガポール、イギリス、アメリカ
各国以下の設計にて回収を行い、設計を超えた場合にはウェイトバック集計を行い設計に合わせている。

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日本国内調査<図表8、9>
調査手法:インテージネットモニター(マイティモニター)に対するインターネット調査
調査対象:全国15歳-69歳 通常3業種(マスコミ・広告・市場調査など)除外
有効回答数:33,821ss  ※集計・分析対象は、国勢調査をもとに推計した性別・年代人口構成比に合わせ、20,385sを対象とした。


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    長崎 貴裕(ながさきたかひろ) 取締役執行役員 CDO 経営推進本部長

    社会調査研究所(現インテージ)入社後、訪問・郵送・定性・電話調査、企画分析 、リサーチ・解析システム開発、インターネット調査事業立ち上げ、ネットリサーチ会社代表取締役社長、メディア調査(シングルソースパネル)、データサイエンス、R&D、アライアンス等を経て現職。
    定量データの測定とバイアスについての研究は引き続き強くこだわりたい。

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    編集者プロフィール
    インテージ

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