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【各国料理と家事事情】インドネシア編:料理をするときの行動

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第二回:【各国料理と家事事情】ベトナム編:料理をするときの行動
第三回:【各国料理と家事事情】タイ編:料理をするときの行動
第四回:【各国料理と家事事情】フィリピン編:料理をするときの行動
第五回:【各国料理と家事事情】インド編:料理をするときの行動

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インドネシアの人々は食べることがとにかく大好きで、三食の食事は量が少ないが間食が大好きなので常に何か食べたり飲んだりしている印象がある。レストランや食堂も時間関係なく常にお客さんがいることに驚かされる。もともと時間を決めて食べる習慣があまりなく、食べたいときに食べたいものを食べるのが普通だ。屋台や食堂での外食、ケータリング、デリバリーをすることも多く、自宅で料理をする習慣は日本ほどではない。しかし最近では物価の上昇や外食の高騰から節約のために自宅で料理する家庭も増えている。

【食材調達方法の多様化】

食材の買い出しは大きく3つあり、市場・スーパーマーケット・オンラインだ。市場ではローカル産がほとんどなので種類が限られるが、1日~3日分の野菜、果物、魚・肉などをこまめに購入する人が多い。市場が徒歩圏内・バイクで5分~10分圏内にない、早朝市場に行く時間がない、市場にはないような輸入食材については中規模のスーパーマーケットやオンラインで1週間分~10日分をある程度まとめ買いする人が多い。オンラインの方がスーパーより価格が安く、購入品額により送料が無料になるため必要なものをまとめて注文する人が多い。Tokopediaのような日用品を主に取り扱っていたECサイトでもコロナの時期から生鮮食品の取り扱いが増え、Gojek/Grabなどですぐに配達してもらえるので便利になっている。食材の買い出しは自分でするが、実際の料理はお手伝いさんと一緒に行う家庭と、買い出しも料理もお手伝いさんに任せる家庭という2パターンが多い。

 左:市場の周り/右:市場の中

【自宅での食事スタイル】

平日は主にお手伝いさんが料理をして、補助的に週2~3回母親が料理することもある。週末は家族でモールに行ったり親戚の集まりで外食を楽しみにしているため、自宅で三食料理することはほとんどない。インドネシア人の家庭では、普段は早朝大量に料理を作っておきキッチンもしくはダイニングテーブルに並べておく。食べたい人は好きな時間に自分で好きなだけ取って食べるというスタイルである。家族・親戚で集まって一緒に食事をすることもあるが、日常というよりは「今日はみんなで一緒に食べよう」というホームパーティーのような特別感がある。

【基本的なインドネシア料理】

インドネシアは地方や民族や宗教(群島諸国のため地方差は顕著)が多く料理もそれぞれの特徴があり、インドネシア料理と一言ではまとめにくい。
ただ人口が一番多いジャワ人の作るジャワ料理は地方へ出稼ぎに行っている人も多いため全国に比較的浸透していると言える。
典型的な料理としては下味をつけて素揚げした豆腐やテンペ、魚、鶏肉、野菜などの揚げ物と白ご飯の組み合わせが挙げられる。これにインドネシアチリのサンバルを添えて食べるのが一般的。

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 テンペ・鶏肉・豆腐・野菜を揚げたもの

その他スープ料理も豊富で、根菜、鶏肉、牛肉、山羊肉を使ったものが多くある。クリアなスープとココナツミルクを使った白濁した2種類が主にある。

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 牛肉のクリアスープとココナッツスープ

インドネシア料理にはクルプック系(エビせん、テンペなど)の物をご飯に添えて
スープを浸しながら食べたり、食感を変えるために合間に食べるのが定番。

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 ご飯にそえられたクルプック

野菜は生では食すことがほとんどなく、炒めもの(空心菜、白菜、もやし、うり、テンペなど)が主流。空心菜、長豆、キャッサバやパパイヤの葉、もやし、にがうり、なす、ジャガイモなどをガーリックとエシャロット、唐辛子で炒める。

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 パパイヤの花と長豆のニンニク炒め

インドネシアでは練り物の料理も多い。牛肉のミートボールや魚のすり身などを使うが基本的には蒸すか揚げているもの。魚のすり身を揚げたものはさつま揚げに似ており日本人の口に合う味つけ。

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 魚のすり身を揚げたもの、おやつ感覚・間食で食べることが多い

その他、鶏肉や山羊肉、魚などを使った煮込み料理も定番である。ココナツカレーにイメージされるようなもので、多くの香辛料が使用されスパイシーな味わいが特徴的である。

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 ルンダン・牛肉のココナツミルク煮

麺類も一般的に食べられており、汁なしの油そば系や焼きそば系が主流となっている。中華の影響を受けているものが多い。油そば系は鶏肉の甘辛煮と茹で野菜がトッピングされている。細チリ麺はスパイシーな味ではなく、鶏だしを使ったさっぱりとした味わいが特徴的。

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 麺の上に鶏肉の甘辛煮、麺には肉団子スープがセットでついてくる

インドネシア料理はたくさんの香辛料を使うが、その中心的なものはBawang Putih(ニンニク)、Bawang Merah(エシャロット)、Daun Salam(月桂樹)の3つ。その他に料理に合わせて様々な香辛料をブレンドすることもある。食べる際には、Sambal(インドネシアのチリソース)とKecap Manis(甘い醤油のようなもの)をお好みで追加して食べる人が多い。サンバルは瓶詰めのものが一般的だが、家庭それぞれの味でフレッシュなチリやトマトなどを使って手作りすることもある。

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 唐辛子、ニンニク、エシャロット、月桂樹の葉、ウコン、ショウガ、レモングラス、ミカンこぶの葉、その他根っこ系の香辛料もよく使われる

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 サンバル

サンバルも料理に合わせて作り方や材料が異なり地方性もあるが、一般的には赤唐辛子、トマト、エシャロット、ニンニクをすりつぶし炒めたもの。このサンバルはどの料理にもマッチする。好みにより海老の発酵させ乾燥させたものを火であぶって加える(匂いは強烈だがうまみが強くなる)。

【室内と室外、インドネシアのキッチン事情】

換気と衛生の観点から、かつては多くの家庭が室外にキッチンを設置していた。しかし最近では室内にキッチンがある家庭が増えている。古い家の場合は野外と室内両方にキッチンがあることもあり、その場合は「Dapur kotor(汚いキッチン)」と「Dapur Bersih(きれいなキッチン)」と呼ばれている。昔からお手伝いさんが料理をする習慣があったため、お手伝いさんは室外のキッチンで料理を作り家の中に運び、食べる人は室内のキッチンで温めて食べるという使い分けがされる。近年土地の価格が上昇しているため、新築の家(50~80平米で1,000万円前後の中級層)はスペースとコストの関係でキッチンは室内に1つのみ設置されている。マンションも基本的には1つのキッチンだが、200平米以上の高級マンションではお手伝いさんルーム内にもキッチンがある物件もある。

【家庭での調理に必須な調理道具】

インドネシアでは香辛料を調合するために伝統的にCobekと呼ばれる石臼のような道具を使う。しかし最近は自宅にCobekがない、または使えない人も多く、ミキサーやブレンダーを使って調合する人も増えている。ただしインドネシア人によると、Cobekを使った方が美味しいとのことである。

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 Cobekという石臼ですりつぶして香辛料をブレンドする

また炊飯器は必ずあり5合炊きなど大きなものが多く、1日1回しか炊かないことが一般的。その他には電子レンジ(作り置きされている料理を温めるため)、ブレンダー・ミキサー(石臼を使わずにSambalや香辛料ミックスを作るため)、ノンフライヤー(揚げ物が好きだが健康を意識しているため)などがある。

【変化する食事スタイル】

ご飯にメインの魚や肉そして1~2種類の炒め物を一緒に盛り付けたワンプレートスタイルや、ご飯にスープを添えた組み合わせ(スープをご飯にかけて食べることもある)が定番。伝統的な食べ方としては右手でご飯とおかずを混ぜながら食べる方法があるが(左手は使用しない)、現在はスプーン(右手)とフォーク(左手)で食べることが一般的。また麺類を食べる場合には箸を使うこともあり、インドネシア人は箸を上手に使える人が多い。

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 野菜炒めと鶏のから揚げとごはん

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 Nasi Ayam Campur:ご飯の上に鶏肉・長豆ココナッツ和え・つくね

【片付けはお手伝いさんにお任せ】

お手伝いさんがいる家庭では基本的にお手伝いさんが片付けや洗い物も担当する。一方お手伝いさんがいない家庭では母親が片付けをすることが多い。食洗器は高級アパートメントに設置されていることもあるが、一般家庭ではあまり普及しておらず、家庭用の小型食洗器も販売されていない。

インドネシアでは日常的に「Sudah Makan belum?(もうご飯食べた?)」というやり取りが挨拶の代わりに行われている。
家庭においてお手伝いさんを雇う習慣は一般的であり、母親がフルタイムで働いている家庭ではお手伝いさんが必ずと言っていいほど雇われている。そのため料理はお手伝いさんが主に担当し、母親が料理をすることは時々である。このような家庭環境で育つため、男女問わず料理ができない人が多く、特に本格的に作る人は少ない。ただ最近は混ぜるだけでできるインスタントの香辛料ミックスも種類豊富に販売されており料理がかなり楽になってきている。若い層では食の西洋化も進み、また「節約」「健康」のためにパスタやサンドイッチなど簡単に作れる料理に興味を持つ人が増えている。
また、以前は職を得る機会が少ない田舎からジャカルタへ出稼ぎに出てお手伝いさんになる人が多かったが、現在は地方でも工場や自営業(ECなど)の仕事が得られる機会が増えたため、お手伝いさんの雇用が難しくなっている。そのため今後は家庭で料理をするという習慣が定着していくのではないか。


  • TNCライフスタイル・リサーチャー

    執筆者プロフィール
    TNCライフスタイル・リサーチャー

    インドネシア・ジャカルタ在住18年。日本語教師・インドネシア留学を経てグローバル日系人材紹介会社に就職。リクルートコンサルタントとして勤務しながらインドネシアの食・生活・文化の情報を発信中。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    マレーシア人リサーチャーです。15年前から来日し、今も東京を拠点とし、東南アジアをはじめ海外のインサイトについて発信しています。

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