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【ベトナム:地球の暮らし方】 ベトナム人の水質へのこだわり

日本では水道水をそのまま飲用することも多いので当たり前になるかもしれないが、海外では、特に発展途上国の場合、いろんな原因で水道水を直接飲用できないケースが多い。今回はConsumer Life Panoramaに登録されているベトナムの生活者を中心に、水の利用の時に気を付けていることや工夫について解説していきたい。

第1回:【ベトナム:地球の暮らし方】住宅環境から見えるベトナム人の意識・価値観
第2回:<駐在員コラム>【ベトナム:地球の暮らし方】都市により住居タイプが異なることで、洗濯機タイプも違う?
第3回:<駐在員コラム>【ベトナム:地球の暮らし方】意外にも寒さが厳しい北部、バスルームにも南北の違いが
第4回:<駐在員コラム>【ベトナム:地球の暮らし方】ベトナムのキッチン事情~南北の気温差でキッチンの作りが違う?~
第5回:【ベトナム:地球の暮らし方】 日本の味覚がベトナムで通用するか
第6回:【ベトナム:地球の暮らし方】Ajimiでの試食活動から覗くベトナムの味覚特徴
第7回:【中国・ベトナム:地球の暮らし方】おいしい酸味の秘訣とは
第8回: 【ベトナム:地球の暮らし方】Ajimiから見る味噌のポテンシャル
第9回:【ベトナム:地球の暮らし方】味覚に関する固定観念を変える試食活動
第10回:【ベトナム:地球の暮らし方】 ベトナム人の水質へのこだわり
第11回:【ベトナム:地球の暮らし方】 ベトナムのトイレにある「手動式ウォシュレット」
第12回:【ベトナム:地球の暮らし方】南国の暑さ対策に必要なものは何か
第13回:【ベトナム:地球の暮らし方】マルチ機能が当たり前の部屋づくり
第14回:【ベトナム:地球の暮らし方】EV化が進む東南アジア

水道水を飲用水に変えるための工夫

生命の源といわれる水。あんまりにも日常過ぎてその重要性が感じられていないかもしれないが、実はそれを安心して飲めるまでは想像以上の工夫が必要なのだ。グローバル範囲で見ても、水道水をそのまま飲用できる国は日本を含めてたった9ヵ国しかないという。

ベトナムは近年急成長をしていて、インフラも整備が進んでおり、2019年の都市部の水道水普及率が約84%まで引き上がっている。ただ、水道水を使える家庭が増えている一方で、課題も存在している。水源の塩害、工業化が進むことによる未処理汚水の河川の汚染、大腸菌などが含まれたりすることなどで、水道水に基準値以上に不純物が入っているとの心配がある。特に北部では、地下水がヒ素により汚染されていると指摘されていることに加え、2019年には給水源である浄水場に廃油を不法投棄した事件もあり、水道水の安全性を不安視する人が増えてきている。

水道水を飲用水に変えるための対策として一般的に取られているのが、家庭内に浄水器をつけることだ。特に近年生活水準が上昇することにより、富裕層家庭や健康意識が高い家庭では、浄水器の使用が進んでいる。

ベトナムでは、浄水器は複数種類ある。家庭によっては、別途床やテーブルなどに設置するウォーターサーバー型を購入する家庭もあれば、キッチンのシンクの下に設置されるアンダーシンク型を使う家庭もある。アンダーシンクの場合、浄水器とは別にメインの蛇口もあるが、日常生活では使い分けている。食器洗いや手洗いなどの場合はメインの蛇口を使用するが、食材の洗濯、ご飯やスープを作るなど直接口に入る水は浄水器からの水を使用しているそうだ。

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リビングに設置した浄水器(左)とキッチンに設置した浄水器(右)(VN_61, VN_110
出典:Consumer Life Panorama
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また、有害物質をろ過して自ら分離させるために、最近はRO膜を使用したものが最も普及しており、NanoUF膜、MF膜、UVライト、活性炭などが組み合わせられている。水道水は自動的に浄水器に取り込まれ、通常は水道と直接接続されたパイプを使用する。浄水器の中で、水はいくつかのフィルターを通過させることで、ろ過の効果を確保する。

ベトナム生活者の水飲用習慣

ただ、浄水器を追加したとしても、水道水をそのまま飲用することに抵抗感のある人は存在しているらしいので、水を沸かして飲むのが一般的だ。また、近年オフィスや学校などでウォーターサーバーも普及しつつあるが、それも仕事や勉強をするときにも安心して水を飲めるための施策なのだ。

ベトナムでは特にハノイを代表とする北部の場合、お湯は身体にいいという中国と似たような考え方があり、水を沸かしてお湯を飲む習慣も存在している。また、南部と比較して、ハノイは四季があって、冬になると温度が低くなることもひとつの原因として考えられる。

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ベトナム家庭にある電気ケトル(VN_80, VN_130
出典:Consumer Life Panorama
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ベトナムは東南アジアの国で、暑い日が多い。ハノイでも冬以外は平均温度が高い。そのため、北でも南でも、氷を多くのシーンで使われている。飲料にはもちろん、ビールにも使われているのが特徴。その理由はいくつかある。ビールを薄めて苦手な人でも飲めるようにすることや、酔いにくくなることがそのメリットとして挙げられている。また、今は冷蔵庫が徐々に普及されてきているが、昔はお店にも冷蔵庫が普及されていなかったので、ビールを常温で販売されている場所が多い。天気が暑いので冷たいビールを飲みたいニーズから、氷を入れる行動につながったともいわれている。

ベトナムは暑いので冷蔵庫が重宝されている。ペットボトルに水を入れてストックしておく習慣もある。近年は氷や冷水が作れる冷蔵庫を持つ家庭も一定数存在している。それは家で安心した氷を使いたいというニーズがあるからだ。ただ、家庭によっては氷を作る時に浄化した水道水でもそのまま使用すると、衛生面での心配がやはりあるので、一度沸かした水やペットボトルの水を使用する家庭も存在しているとのこと。また、近年はスーパーでも手軽に氷が買えるようになっている。

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氷や冷水を作る冷蔵庫と冷蔵庫にストックされている水や飲料(VN_80, VN_60
出典:Consumer Life Panorama
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Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、生活行動動画をご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。海外生活者の理解を深めるのにご活用いただけるサービスです。
Consumer Life Panoramaデモサイト:http://consumer-life-panorama.com/demo/
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  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。中国でも水質に不安を抱えて浄水器をつける家庭が存在している。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。海外出張時の氷には気を付ける派。

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