【ベトナム:地球の暮らし方】 ベトナムのトイレにある「手動式ウォシュレット」
- 公開日:2023/05/31
- 更新日:2026/02/12
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日本ではトイレとお風呂が2つの空間として分けられ、それぞれの空間は特定の機能をはたしている。それに対し、海外ではそれらを同じ空間にしたバスルームが多いため、その空間の機能もより複合的になる。今回はConsumer Life Panoramaに登録されているベトナムの生活者を中心に、ベトナムのバスルームの特徴と機能について解説していきたい。
ベトナムのバスルームの特徴
以前中国のバスルームについてご紹介したことがあるが、実はベトナムのバスルームも中国に似た部分がある。まずは、トイレとお風呂を同じ空間にすることだ。中国の都市部の1人当たり住宅面積は近年伸びているものの、まだまだ広いとは言えない。そのため、ほかの空間を広く使いたいため、トイレとお風呂を同じ空間にすることが一般的だ。
ベトナムでも同じ背景がある。ベトナム統計局2019年のデータによると、1人当たり平均居住面積が23.2㎡である。ベトナム人は日本人と違ってお風呂を入らずに、シャワーだけで済ませる。その結果、風呂場とトイレの面積を犠牲にして、リビングと寝室の面積を広くするのだ。
近年、特にファミリー層向けの新築では、居室面積が増えている。それでも、増えた分を日本のように風呂場とトイレを2つの空間に分ける傾向は見られない。今のトレンドとして見られるのは、ひとつは風呂場とトイレの間に仕切りを作って「乾湿分離」にすることで、もうひとつは主寝室用のプライベートなバスルームと家族全員が使うパブリックなバスルームで2個作ることだ。

コンパクトなバスルーム(左)と仕切りのあるバスルーム(右)(VN_80, VN_110)
出典:Consumer Life Panorama
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Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

また、日本や中国と比較して独特なものもある。それはトイレだ。日本の家庭では、ウォシュレットが普及しており、用を足したらボタン一つで温水が出てきて洗浄してくれる。一方で、ベトナムではまだウォシュレットがそれほど普及していないが、以前から「手動式ウォシュレット」が使われている。それがトイレのとなりに設置されている「ハンドシャワー」だ。
ベトナム人は昔から水でお尻を洗い流すという習慣があり、ハンドシャワーはベトナム人にとってトイレットペーパーの代わりで、むしろトイレットペーパーで拭くよりも水で流したほうが衛生的と考える人も多い。ただ、ウォシュレットと違って、ハンドシャワーから出る水は温水ではなく、常温の水だ。ホーチミンみたいな南部では一年中温度が高いので、特に問題がないかもしれない。だが、四季のあるハノイでは、冬になるとやや冷たく感じてしまう。それを考えると、特に北の富裕層の間では、温水が出るウォシュレットへの潜在的なニーズもあるかもしれない。

ベトナムのトイレによくみられるハンドシャワー(VN_122)
出典:Consumer Life Panorama
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多機能に使われるバスルーム空間
日本では、洗面台、風呂場、トイレをそれぞれ独立な空間にしているが、ベトナムではすべて同じ空間にしている家庭が多い。さらに、屋内の空間が限られているため、ベトナムのバスルームは複合の機能が集約されているのが、もう一つの特徴である。一般的には、以下のような例があげられる。
シャワースペースは身体を洗う場所だけではなく、服を洗う場所でもある。ベトナムでは、まだすべての家庭が洗濯機を所有しているわけではない。ベトナム統計局によると、2019年度の洗濯機保有率がまだ52.5%に過ぎない。洗濯機が保有されていない家庭では、手洗いをするのが一般的だが、その時は基本服をバケツにまとめてシャワースペースで洗う。また、年配の世代は貧しい時代の経験もあるため、節約志向がかなり強い。洗濯機があっても、電気や水を節約するために、手洗いの習慣が残っている家庭がまだまだ多い。
洗濯以外に、掃除用具を洗う場でもある。ベトナムでは濡れたタオルやモップを使って床を拭く習慣があるので、使った後では浴室でこれらの掃除用具を洗う。さらに、ベトナムの食事は生の野菜が多いが、キッチンのシンクのスペースがそれほど多くない。その結果、時々、キッチンのスペースが足りない場合、プラスチックの桶に野菜を入れ、浴室で洗う家庭もある。

バスルームで洗濯物を手洗いする生活者(VN(D)_8)、バスルームに置いてあるモップ(VN_112)
出典:Consumer Life Panorama
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中国の暮らしを詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご確認ください。
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・都市部の住宅事情:意外と広くない?間取りと特徴
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執筆者プロフィール
ヤン イェン
日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。中国でも特に前の世代の間では節約志向が強く、服を手洗いする習慣が根強く存在している。
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編集者プロフィール
高浜 理沙(たかはま りさ)
Global Market Surferのサイトづくりを担当。東南アジアや中東に行くとよく見かける「ハンドシャワー」、勇気がなく一度も使ったことがないが、使いこなせると快適なのかもしれないと思う。トイレットペーパーを流さずゴミ箱に捨てる(配管が詰まるから)というのも、海外トイレあるある。



