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【インド】健康、ウェルネス、美容に関するインド都市部消費者の動向

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近年、インド都市部において、健康とウェルネスに対する消費者の意識に顕著な変化が見られる。所得が上昇し、ライフスタイルがより座りっぱなしになるにつれ、インド人はより健康的な習慣を取り入れることの重要性を認識するようになっている。

この記事では、インドの都市部の消費者に焦点を当てて、彼らの健康、ウェルネス、美容に関する新たなトレンドと意識の高まりについて解説する。

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健康に対する消費者の意識の変化

この10年間で、インドの消費者の健康とウェルネスに関する認識や優先順位付けには、著しい変化があった。肥満、糖尿病、心臓病といった不健康なライフスタイルに伴うリスクに対する意識の高まりに後押しされ、インドの消費者は現在、予防医療と積極的な健康管理に重きを置くようになっている。この変化の背景には、情報へのアクセスの増加、豊かさの向上、健康的なライフスタイルの長期的なメリットに対する理解の深まりなど、さまざまな要因がある。
ミレニアル世代や若い世代、特に都市部では、健康目標をサポートする情報やリソースを積極的に求め、この流れをリードしている。ソーシャルメディアとデジタル・プラットフォームは、健康関連コンテンツの普及と消費者行動への影響において極めて重要な役割を果たしている。

1.    変化の主な要因:生活習慣病の増加、健康意識の高まり、情報へのアクセス向上が、インドにおける消費者意識の変化の主な原動力となっている。
2.    新たなトレンド:インドにおける健康的なライフスタイルの動きは、オーガニック食品の消費、家庭でのフィットネス習慣、精神的な健康への注目といったトレンドを生み出した。
3.    人口動態の変化:若い消費者、特に都市部の消費者は、予防医療とホリスティック・ウェルネスに重点を置くようになり、より健康的なライフスタイルへの移行を主導している。

食習慣と栄養意識

食生活と栄養意識は、インドにおける健康的なライフスタイル運動の重要な要素となっている。消費者は、健康全般をサポートするために、健康的で栄養価の高い食品をますます求めるようになっている。特に都市部では、加工食品やファストフード、肉を摂取する代わりに、果物、野菜、全粒穀物(Whole grain)を毎日の食事に多く取り入れることに重点を置き、プラントベースの食生活を志向する傾向が強まっている。近年、慢性疾患のリスク軽減、消化の改善、体重管理の改善など、プラントベースの食生活に関連する健康上の利点に対する認識が高まっている。それゆえ、消費者が合成添加物や農薬にさらされる機会を減らそうとするため、オーガニック農産物やローカル産農産物への需要も高まっている。消費者は、より環境にやさしく持続可能であると考え、ローカル農産物を選ぶようになっているのである。インド政府も、さまざまな取り組みや補助金を通じてオーガニック農業を推進し、農家に有機農法への転換を促している。このため、オーガニック製品の入手しやすさ、買いやすさが向上している。若い世代は、健康や持続可能性により高い関心を持っているため、オーガニック食品を取り入れている傾向が高い。この人口動態の変化は、市場動向に大きな影響を与えている。加えて、動物に対する倫理的な扱いがより顕著な問題となっていることもあいまって、特に健康に関心の高い人々の間では、食生活から動物性食品を減らしたり、排除したり、菜食主義にすることが奨励されている。Fresh India Organics、Healthy Buddha、Zama Organics、AsmitA Organic Farm、Orgpickなどは、オーガニック農産物を幅広く扱うオンラインショップの一部である。

さらに、摂取する食品の栄養成分を理解することが重視されるようになっている。消費者はラベルを読み、さまざまな栄養素の効能を調べ、総合的な健康と幸福をサポートするためにより多くの情報に基づいた選択をするようになっている。
プロバイオティクス、オメガ3系、抗酸化物質など、健康全般をサポートする効能が付加された食品やサプリメントへの需要が高まっている。また、持続可能性、動物愛護、健康上の利点から、プラントベース食品も人気を集めている。

フィットネスと運動パターン

全国的にフィットネスと運動のパターンに顕著な変化が起きている。従来、身体活動の中心はアウトドア・スポーツだったが、現代のライフスタイルでは、体系化されたエクササイズ・ルーティンやジムを利用したフィットネス・プログラムが重視されるようになっている。ジムには、さまざまなフィットネス・レベルや嗜好に対応するさまざまな器具やクラスが用意されているため、都市部に住む人の多くは、計画的なワークアウトのためにジムに入会している。また、公園もジョギングやランニングのための一般的なスポットである。新鮮な空気と社交的な交流が得られるため、人気のある選択肢となっている。

何世紀にもわたってインドで行われてきたヨガは、伝統的なものから現代的なものまで、その身体的・精神的な健康効果が広く知られるようになり、今やインドの健康的なライフスタイルに欠かせないものとなっている。インドでは、さまざまな嗜好やライフスタイルに合わせて、人々がさまざまな環境でヨガを実践している。都市部のほとんどには、ヨガ専用のスタジオやジムがあり、専門的なクラスを提供している。また、YouTubeなどのオンラインチュートリアルやクラスを利用して、自宅でヨガを練習する人も多い。公園やオープンスペースでヨガを練習することも、特に朝に人気がある。多くの住宅コミュニティーやクラブが、定期的にヨガ・セッションを開催している。最近では、教育機関でもヨガをカリキュラムに取り入れたり、課外活動として行うことが多く、学生の心身の健康を促進している。また、従業員の健康増進プログラムの一環としてヨガセッションを提供している企業もある。これらのセッションは通常、オフィススペースや指定されたウェルネスエリアで行われる。

さらに、オンラインのワークアウトクラス、フィットネスアプリ、バーチャルパーソナルトレーニングセッションなどの在宅でできるワークアウトもインド人の間で人気を集めている。

ヘルステックの導入

インドの消費者は、健康とウェルネスに対する意識の高まりを背景に、スマートウォッチ、健康管理アプリ、食事管理アプリなどのヘルステックをますます受け入れている。スマートウォッチやフィットネストラッカーは、身体活動、心拍数、睡眠パターン、カロリー摂取量をモニターするために、健康意識の高い都市部の消費者の間で非常に人気がある。ダイエット管理アプリも、栄養摂取量をトラッキングしたり、食事目標を設定したり、パーソナライズされた食事プランを提案してもらったり、といった使い方で特に女性の間で人気を集めている。

インド人は健康とウェルネスをどう捉えているか

伝統的な考え方では、健康とは病気がないことと結び付けられることが多かった。しかし現在では、身体的、精神的、社会的な幸福を含む、より総合的な(ホリスティックな)健康観への移行が顕著になっている。インドの消費者は、予防医療、健康的な食習慣、定期的な運動、精神的な健康をますます優先するようになっている。

こうした意識の高まりの背景には、医療費の高騰、生活習慣病、インターネットやソーシャルメディアを通じた健康情報へのアクセスの増加といった要因ある。消費者はオーガニックやナチュラル製品を求め、フィットネス習慣を取り入れ、ヨガやアーユルヴェーダのような代替療法に関心を示している。

全体として、インドの消費者の健康に対する理解は、病気の治療だけでなく、総合的な(ホリスティックな)健康に焦点を当てた積極的なアプローチに移行しつつある。この変化は、特にパンデミック以降、病気を予防し、生活の質を向上させるために健康的なライフスタイルを維持することの重要性に対する意識が高まっていることを示している。

最近では、インド人は潜在的な健康問題を回避するために積極的な対策を講じている。例えば、健康的な食生活の維持、定期的な運動、予防接種、衛生管理、喫煙や飲酒の制限といった有害な習慣を避けるといった行動だ。一方、健康状態を改善するために、栄養価の高い食品を取り入れたり、体を動かしたり、ストレスを管理したり、十分な睡眠をとったり、必要に応じて治療を受けたりしている。

男性に比べ、女性は健康や体重管理に関心が高い。健康と美は密接に結びついており、健康は美の大前提であると考えられている。健康であることは、その人の外見にプラスに反映される傾向がある。

良好な健康状態は、輝く肌、丈夫な髪、健康的な体、そして全体的な魅力に貢献する。適切な栄養摂取、水分補給、定期的な運動、十分な睡眠、ストレス管理といった要素は、健康と美容の両面で重要な役割を果たす。健康的なライフスタイルは、身体の健康を高めるだけでなく、自信と全体的な魅力を高めることができる。

コラーゲンやビオチンのような食品サプリメントを、美容と健康全般を高めるために利用する女性が増えている。彼女たちがどのようにこれらのサプリメントを美容ルーチンに取り入れているかを紹介しよう:

1.    コラーゲン・サプリメント: 女性は、肌の弾力性や保湿性を高め、シワを目立たなくするためにコラーゲンサプリメントを使用する。コラーゲンは、若々しい顔色と肌全体の健康を促進すると考えられている。
2.    ビオチン・サプリメント: ビタミンB群の一種であるビオチンは、健康な髪、肌、爪を促進するとして若い女性に人気がある。ビオチンのサプリメントは、髪を強くし、成長率を高め、もろさを軽減するためによく飲まれている。多くの若い女性が、艶やかな髪と丈夫な爪を手に入れるために、美容法にビオチンを取り入れている。
3.    マルチビタミン: コラーゲンとビオチンに加えて、女性は総合的な健康と幸福のために不可欠な栄養素を確実に摂取するために、マルチビタミンをよく摂取する。ビタミンC、ビタミンE、ビタミンDのようなビタミンは、皮膚の健康、免疫機能、全体的な活力をサポートする上で重要な役割を果たす。

インドのヘルスケアと医療サービスへのアクセス

インドの医療事情には、さまざまな課題とチャンスが混在している:

1.    医療へのアクセス:医療へのアクセスはインド全土で大きく異なる。一般に、都市部は農村部に比べて医療インフラが整っている。公的医療施設は、貧困層や恵まれない人々を含む多くの国民を対象としているため、しばしば過重な負担を強いられ、多くの人々が民間医療サービスを求めるようになっている。
2.    医療費:インドの医療費は大きく異なる。公的医療には補助金が出るが、民間医療サービスは高額である。 例えば、私立病院の医師の診察料は約1200~2000インドルピー(約2500円~4000円※24年6月レートで換算)である。高額な医療費のために経済的困難に直面し、自己負担になる人も多い。政府の制度は、社会的弱者に経済的保護を提供することを目的としている。
3.    保険制度:インドにおける医療保険加入率は増加しているが、人口の大部分は無保険のままである。民間の医療保険会社はさまざまなプランを提供しており、PMJAY(Pradhan Mantri Jan Arogya Yojana)のような政府の制度は、二次医療や三次医療を受ける資格のある人に保険を提供している。
4.    健康診断: 定期検診は予防医療に不可欠である。都市部のインド人の多くは定期健診を受けられるが、農村部ではこうしたサービスを受けることが難しい。政府のイニシアティブと官民パートナーシップによって、予防医療サービスに対する認識とアクセシビリティの向上を目指されている。

全体として、インドの医療事情は進化しており、医療へのアクセス、手ごろな価格、医療の質を向上させる取り組みが進められている。予防医療、保険適用、遠隔医療に焦点を当てた取り組みは、インドの多様な人々が直面する課題の解決に役立っている。

インドの伝統的な健康法:アーユルヴェーダ

インドのアーユルヴェーダは、何世紀もの歴史を持つホリスティック・ヒーリング・システムであり、心と身体と精神の調和を重視している。近年、世界的に人気を博し、ホリスティックな健康法やウェルネスのトレンドに影響を与えている。

アーユルヴェーダはもともと医学の体系であったが、現在ではスキンケアやヘアケア製品にまで広がっている。アーユルヴェーダは、自然で長い歴史を持つ解決策を提供することで、インドのスキンケアとヘア業界の成長に大きく貢献している。インドのアーユルヴェーダ美容・健康市場は近年著しい成長を遂げており、これはハーブや天然素材へのシフトを示している。アーユルヴェーダのコンセプトは、アンチエイジングとコスメシューティカルの分野で重要性を増している。消費者は、天然と表示され、アーユルヴェーダ処方に基づく製品にプレミアム価格を支払うことをいとわない。

インドでは、特に美容とパーソナルケアにおいて、「go green」トレンドが勢いを増している。消費者は 「ナチュラル 」や 「ケミカルフリー 」と表示された製品を優先する。多くのインドの美容・パーソナルケア企業は、ハーブやアーユルヴェーダ成分を強調したブランドを開発することで、このトレンドに乗じている。こうしたブランドは、古代のアーユルヴェーダ療法、伝統的なハーブ、植物エキスを処方に取り入れている。ソーシャルメディアや美容インフルエンサーも、消費者の嗜好を形成し、ホリスティックで持続可能なスキンケアへの関心を高める上で極めて重要な役割を果たしている。


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    執筆者プロフィール
    モーミタ・サハ

    10年以上におよぶ経験をもつインド人定性リサーチャー。日々楽しんでいることは、データ分析、旅行で文化を探求すること、料理で様々な実験をすること、そして8歳の娘との時間を大切にすること。

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    編集者プロフィール
    インテージ

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