<駐在員コラム>【インド】インド人スタッフが日本のRTDサワーを試飲~インド人に好まれるフレーバーは? 第2弾
はじめに
今回は、お酒試飲第2弾を実施する。前回は、レモンサワー同士を比較し、好まれるフレーバーとして「ほのかなレモンの風味・味」と「甘み」のバランスがよいものが好まれた。今回の第2弾は、様々なフレーバーのお酒を試してもらい、どのようなテイストが好まれるのかを考察する。
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お酒に対する態度、文化
本題に入る前に、今回の試飲会に参加したメンバーの紹介をしたい。
今回は、少し深堀して、飲酒習慣について聞いた。
Aさん:30代、男性。お酒を飲む頻度は、3か月に1回ほどで、よく飲むお酒は、ビールやウイスキー。パーティーなどの集まりで飲む機会が多く、飲む場所は、友達の家、集まり、ウェディング(婚前の友人の集まり)、たまに家でも飲む。一人でお酒を飲むことはあまりない。
Sさん:30代、男性。お酒を飲む頻度は、1週間に1回ほど。よく飲むお酒は、ビールやウイスキー。友達などグループでお酒を楽しむことが多い。お酒を飲む場所は、バー、レストラン など。一人でも時々お酒を楽しむことがある。
Pさん:20代、男性。お酒を飲む頻度は、前は3か月に1回だったが、今は1週間に2回。理由は、デリーやハリヤナ州ではお酒が安いので手が出しやすい 。(*1) 基本的に、全てのお酒を飲むが、ビールよりもウイスキーやウォッカが好き。お酒を飲む場所は、バーやレストランがほとんどで、パーティーをしたい気分の時に飲む。今まで一人だけで飲んだことはない。
Hさん:30代、男性、お酒を飲む頻度は2~3か月に1~2回ほどで、よく飲むお酒は、ウイスキー(スコッチ)。お酒を飲みたいなと思った時に友達と飲みに行くことが多く、バーなどでもお酒を楽しむこともある。5回に2回ほどは、一人でお酒を楽しむこともある。
Saさん:40代、男性。お酒を飲む頻度は週に1回か2回。様々なお酒を飲むが、冬はラムで、夏はジンが好き。お酒を飲む場所は、家、バー、レストラン、時々友達の家でも飲むこともある。家族や友達がほとんどで、一人で飲むことは少ない。
1 インドでは、州ごとに酒税が異なっている。例えば、ゴアは49%の税金を課しているのに対して、最も高いカルナタカ州(バンガロール)では83%の酒税が課されている。
https://english.jagran.com/india/liquor-prices-in-india-goa-has-cheapest-booze-karnataka-tops-chart-statewise-list-of-alcohol-prices-10103195
前回と同様に、ほとんどが友達とお酒を楽しみ、家で飲むことや一人で飲むことは少ないようである。また、家族と飲むことはほとんどなく、家族にも飲酒することは伝えていない。その理由は、インドでは元々、お酒に対して寛容的な文化ではないことが影響しているようだ。今回聞いた中でも「インドではお酒はタブーだった」と述べていた。そのため、親世代はお酒に対してより厳格なようである。もし、親がお酒を飲むことを知ったら?と質問すると、「お酒なんか飲んでないで、もっと善い行いをしなさい」と言われるだろう とのことだった。今の世代は親の世代と比べるとよりお酒を飲むライフスタイルを受け入れつつあり、今後、少しずつではあるが、お酒に対して寛容になっていくのではないだろうか。
また、デリーでは、「Car-o- Bar (カーオーバー)」というお酒の飲み方をする人もいると教えてもらった。カーオーバーとは、車の中でお酒を楽しむことである。友達と出かけ、お酒を買って、食べ物を注文して、車を止めて、車の中で楽しむのだ。パブやレストランなどでお酒を飲むと値段が高いため、より経済的にお酒を楽しむ手段となっている。
しかしながら、もちろんインドでも飲酒運転は取り締まりされ、また、インドでは公共の場での飲酒はインド刑法に該当する。デリー近郊の新興都市ノイダの警察官によると、初犯の場合、駐車中の車内を含め、公共の場で飲酒しているのを発見された者は逮捕されるとのことだ 。(*2)また、同じくデリーに隣接するハリヤナ州でも、車内含め公共の場での飲酒は、初犯の場合は5,000ルピーの罰金が課されるとのことだ 。(*3)
2 Noida residents complain against ‘car-o-bar’ on isolated road in Sector 77 - Hindustan Times
メンバーがよく行くお酒が飲めるレストランとバー
筆者自身もよくお酒を飲むが、日本とは異なり、インドにはこぢんまりとしたバーはあまり存在しないと思われる。バーと言っても、レストランも併設であることが多く、お酒を飲める場所は基本的に料理も楽しめるところが多い。また、週末はDJがパフォーマンスしていることも多いのが特徴である。
そこで今回は、試飲会に参加したメンバーが普段よく利用しているお気に入りのバーやレストランを紹介してもらった。
1. Fio バーアンドレストラン
ヨーロピアン料理や、モダンインディアン料理が楽しめるレストランとバーが併設されている。お洒落な雰囲気でお酒を楽しめるようだ。
レストランのインスタグラム
バーのインスタグラム
2. Whisky Samba
こちらは、日本料理(海外の日本料理といった雰囲気)も楽しめるレストランで名前の通りウイスキーやカクテルが推しのお店だ。
3. ReSet By Plan B
こちらは、インド料理がメインのレストランだ。上記二つのレストランは、少し高めの場所ではあるがReSet By Plan B はビアホールといった感じで価格も高すぎないレストランであるようだ。
試飲パート
今回は、5種類のフレーバーを準備した。
左から順に
タコハイ、氷結 パイナップル、ほろよい 白ぶどう、ほろよい 白いサワー、ほろよい アイスティーサワー
これら5つで、どのようなフレーバーが好まれるのかを探った。なお、この調査では、パッケージは見せないように味だけで判断しており、飲む前に香り・色を確認した後に、テイスティングをして感想を聞いている。
タコハイ
タコハイは、プレーンサワーで、柑橘系のテイストと甘さが少なく食事によく合うのが特徴のお酒だ。アルコール度数は、適度な6%のほどよいアルコール感で飲みやすい。
香りの感想
Aさん、「これは鼻を突く香りだ。それと、レモンを感じる。」
Saさん、「ウォッカとスプライト、レモン感がある。」
Hさん、「レモンと酸味は感じる。」
全体的に、レモンの柑橘系の香りは強く感じていたようだ。
飲酒後の感想
Sさん、「後味は苦かった。」
Pさん、「このお酒は自分が酔うほどの強いアルコールを感じなかった。スパークリングウォーターのようだった。アルコールを楽しむだけなら問題ないけど、そうでなければ違うかな。」
Hさん、「悪いレモンのような感だった。」
Saさん、「香りを嗅いだ時、そんな感じはしたが、味はとてもそっけない味だった。一口目は何も感じなかった。苦味と酸味だった。」
Aさん、「これは、ただレモンウォーターと、レモン絞ったような感じだった。口当たりも、後味もあまりなかったよ。10点中9点は、酸味だった。また、これを苦いと思う人もいると思うし、苦味の中にある甘い部分が好きな人もいると思うけど、これはおそらくどちらでもないし、苦すぎるという感じでもない。」
どんなドリンクを連想させたか聞いたところ、「悪くつくられたジン」、「少しのジンとトニック」などが挙がった。テイスティングなのでお酒の量が少ないこともあるが、アルコール感はあまり感じていなようだった。味に関しては。薄いとの声が上がっていたが、苦味は感じていたようだ。また、「スパークリングウォーターのよう」、「レモンを絞った」、「甘さは少ない」などとの意見があった。
氷結 パイナップル
爽やかなパイナップルの香りとテイストが感じられるお酒だ。アルコール度数は5%と適度なアルコール感もある。
香りの感想
Aさん、「これは、パイナップル。」
Sさん、「パイナップル。」
Pさん、「パイナップル。」
Saさん、「絶対にパイナップルだ。」
香りは、全員一致でパイナップルであった。かなり強めのパイナップル風味であったこと、パイナップルはインドでもよく消費されているフルーツであることから容易に想像できたのだと思われる。
飲酒後の感想
Aさん、「味もパイナップルだ。よりジュースのようだ。後味も悪くない。アルコールの存在感はあまり強くないが、後味はとても良い。フルーティでアルコール感もある。また、多くの人が食事中に何か飲み物を飲む習慣があると思う。これを清涼飲料水から置き換えて、ランチやディナーと一緒でもよい。甘さと酸味を感じた。」
Sさん、「パイナップルフレーバーだった。甘味があって、私は毎週飲むと思う。そして、これは、リフレッシュメントドリンクだと思う。」
Pさん、「酔わずに帰りたいときや、トニックの風味を少し味わいたいのであれば、私は間違いなくこれを飲むだろうが、これは、良い気分になったり、酔ったりするものではない。もし、これをウォッカと混ぜると、パイナップル味を楽しめるので良くなると思う。」
Hさん、「私は、ミックスされた飲み物があまり好きではない。適切な方法で飲みたい。オーセンティックなスタイルが好きなんだ。だから、あまり好きではなかった。しかし、香りと味はマッチしていたと思う。」
Saさん、「香りを嗅いだ時、すでにどんな味かを想像できた。これは、香りと味が同じような感じがした。夏っぽいドリンクだと思う。ランチドリンクで、夜ではない。苦味はなく、少し酸味を感じた。」
どんなドリンクが思い浮かぶかは、トロピカーナのパイナップル味、Appy(インドのりんごジュース)という味を想像しており、好まれたようであった。考えられる理由は、パイナップルの味と香りがマッチしており、香りを嗅いだ時点でインド人の方でも想像しやすく、それが味ともマッチしており一貫性があったことが大きな要因でないかと考えられる。
ほろよい 白ブドウ
ほろよいは、アルコール度数3%の飲みやすいお酒として人気のブランド。白ブドウの果実感と、すっきりとした飲みやすさが特徴のお酒だ。
香りの感想
Aさん、「ミントフレーバー、そう、ミンティーとスウィート。香りは女性に良さそう。」
Sさん、「モヒート。」
H さん、「何か特定できないけど、甘いフレーバーのようだ。」
Saさん、「ブルーベリー」
ミントの系の香りを想像していた。ブルーベリーなどベリー系の意見もあった。
飲酒後の感想
Aさん、 「2個目はパイナップルだったけど、これも何かフルーツのように感じる。2個目と似ていると思う。もしジンと混ぜたら、良いものになると思う。特に、私の意見では、女性の多くジンが好きで、彼女達にとっては少し甘いものがいいと思う。レモンを加えてもいいし、マサラのスパイスを加えてもいいし、ミントを加えてもいい。フージョンモヒートのような感じになると思う。パイナップルは、人工的な酸味ではなく、自然なパイナップル・エッセンスを加えたものだった。これはキャンディに含まれているような人工的な甘さ。これは、苦味と酸味はなく、甘さだけだった。」
Sさん、「これもただのリフレッシュメントドリンクだったよ。フレーバーは良い。」
Pさん、「2個目と違うフレーバーだけど、同じようなドリンクだと思う。私たちにとって何のフレーバーか認識するのが難しかった。これは、パーティーの時に飲むものではないと思った。たまにソフトドリンクを飲みたいときだけ、代わりにこれを飲む。」
Hさん、「香りと、味はあっていると思う。」
Saさん、「少し人工的な味を感じた、本物の甘さではないような感じ。」
まず、香りを嗅いだ時点では、モヒート、ブルーベリーなどフルーツの香りとは認識しているが、どのフルーツの香りなのかは、わからなかったようだ。実際、一人は甘味を感じるけど、「なにかわからない」との回答をしている。味に関しては悪くない様子であったが、人工的なフレーバーとも考えられていた。また、このお酒に、ジンなどを加えると、よりよくなるとの意見もあった。
ほろよい 白いサワー
こちらも、ほろよいシリーズでアルコール度数は3%と飲みやすい。乳酸菌飲料のまろやかな味わいを楽しめるお酒である。
香りの感想
Aさん、「フレーバーはケーキのようだ。色は、興味をひかなかったけど、香りは興味をそそったよ。」
Sさん、「初めての香りだった。バニラ、バニラケーキのような感じだよ。」
Pさん、「何か特定することができなかった。」
Hさん、「バタースコッチケーキだ。」
飲酒後の感想
Aさん、「このお酒が何のフレーバーなのか分かりにくいが、甘さはあって、ほんの少しだけ苦味もあったので、とてもバランスが取れていた。ケーキのフレーバーも感じることができて、甘い。少し他のものに比べてバランスが取れているような気がする。ただ、色がミスマッチだと思った。Limca(レモンとライムのインドのジュース)のような色というか、洗ったけど泡が残っているような色。」
Sさん、「アルコールは入ってない気がする。甘さとバニラ感はOKだよ。飲みやすい。」
Pさん、「レモン感を感じた。」
Hさん、「香りと、後味は全て合っているよ。そして、バニラ味のバタースコッチケーキだ。」
Saさん、「味と香りはミスマッチだった!私は、ケーキのフレーバーが好きではないし、キャンディのようだった。味と香りはミスマッチで、香りを嗅いだ時はレモンのようなドリンクだと思ったけど、甘いドリンクだった。」
筆者自身も回答に驚いたが、香りはバニラ、バタースコッチ、ケーキなどを感じたようである。また、どんなドリンクを連想させるかと質問したが、特定のドリンクは出てこなかった。日本人の感覚からするとラッシーを連想するのではと期待していたのだが、「この味わいは、今まで経験したことない」など、インド人の方にとっては馴染みのある味ではなかった。日本には、乳酸菌飲料のカルピスやヨーグルト系のドリンクがごく一般的であるが、インドではそこまで浸透していない。その為、より近い乳製品の甘い香りが連想されたのだと考えられる。味も比較的良い評価であり、バランスの取れた味であったようである。一方で、甘いドリンクが好きではない人にとっては、香りも相まってあまり好まれるテイストではなかった。
ほろよい アイスティーサワー
最後のアイスティーサワーも、ほろよいブランドでアルコール度数は3%で、紅茶の香りと風味、少しレモンの味わいも感じられるお酒だ。
香りの感想
Aさん, 「グリーンティー」
Sさん, 「ミルクなしのティー。」
Saさん、「レモンティー、これは少しビールのようでもあった。」
Pさん、「紅茶の香りが強かった。完全に香りは紅茶だ。」
飲酒後の感想
Aさん、「苦味をとても感じた。ティーバッグと水って感じだった。苦みは強かった。紅茶を飲んでいるとき、もちろんお茶には何らかの苦みがあると思うけど、それと似ている。」
Sさん、「全く飲む機会なし。受け入れられない。味はアイスティーではなかった。香りもよくない。甘味は感じない。」
Pさん、「アイスティーが飲みたいけど、手に入らないからこれを買おうと思う。もっと冷えていたらおいしいと感じるかもしれないが、紅茶の味しか感じないんだ。少しの甘みで、それほど多くのフレーバーを感じない。」
Hさん、「私のテイストには全く合わない。苦味を感じたし、後味も苦い。」
Saさん、「少し甘味は感じたが、苦味もあった。アルコール感はなかった。」
こちらは、今回の参加者には少し合わなかったようだ。紅茶の風味はほとんどが感じていたようだ。しかしながら、今回の参加者のほとんどは苦味を感じており、受け入れるのは難しいようであった。インド人、特に北部の人にとっては、紅茶といえばチャイ(紅茶をミルクで煮出して砂糖をかなり加える)であり、ストレートに紅茶の味を楽しむ機会は少ない。そういった普段の味覚とのギャップから、評価が厳しくなったのかもしれない。
今回は何が好まれたのか?
最後に、トップ3を聞いた。最も好評だったのは氷結パイナップルで、2番目はほろよい白いサワー、3番目はほろよい白ブドウであった。逆に、最も受け入れ難かったのは、ほろよいアイスティーサワーだったようだ。氷結パイナップルは、「とても甘く、苦味もなく、とてもおいしかった。」とコメントがあり、期待された通りの味であったことも好まれた要素であった。ほろよい白いサワーに対しては、「ケーキのような味は初めてでユニークな味だった。」というコメントがあったが、甘さから飲みやすかったのではないだろうか。
全ての評価と比較から何が、好まれた要素だったかを考察する。今回試飲した5商品の反応から、「甘味」、「香りと味の一致」が、今回の好まれた要素であったと言えるのではないだろうか。この点は、氷結や白いサワーでもコメントされていた。一方で、「苦味」は敬遠される傾向であった。これは、前回の座談会でも、「苦味」を敬遠していたことと一致している。また、一人は、「せめて味があった方がいい。」とのことを語っていたことからも風味や甘味は重要であった。「ケーキ味」と評価された白いサワーは、インド人には馴染みのないテイストなのに受け入れられたのは予想外であった。アルコール感に関しては、前回と同様に、どのお酒でもほとんどアルコール感を感じていなかった。今回は特にアルコールが低いものも多かったので、ジュースのような感覚だったのではないだろうか。
本記事は、5名の当社インド人スタッフを対象としたものであり、すべてのインド人に当てはまるわけではないことに留意し、参照いただけたら幸いだ。
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執筆者プロフィール
小林 倫太朗
バンガロール在住の20代リサーチャー。インドで日々精進中。インドコーヒーとクラフトビールを開拓中。Z世代目線からみたインドを発信していきたい。
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編集者プロフィール
高浜 理沙
Global Market Surferのサイトづくりを担当。
- 2024/07/08
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