【SEC(社会経済クラス)別で見るタイ・バンコク】食生活編
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はじめに
共働き家庭が多いタイは、中食(屋台や食堂で食事を購入すること)や外食は日々の強い味方だ。
価格も4人家族で500バーツ(2300円)程度 と、食材を買って作るのとあまり変わらない。
一方で、自炊を楽しむ人たちもいる。作っているのはタイ料理だけではない。SNSの普及によって海外の情報がより身近になった今、様々な国の料理が食卓に並ぶようになった。
社会経済クラス(SEC)ごとに自炊している料理のジャンルを見てみると、SECが高い層ほど日本料理・西洋料理・韓国料理中華料理・などの海外料理を作っていることが分かる。
出典:インテージ自主企画調査(2024年)
そこで今回は、タイの自炊事情に注目したい。
インテージが提供する海外生活者ビジュアルデータベース「Consumer Life Panorama(通称:CLP)」を用いて、社会経済クラス(SEC)による違いを考察していく。
本コラムにおいて、SECを世帯月収で以下のように定義している。
SEC A:THB 80,000以上
SEC B:THB 50,000 - 79,999
SEC C:THB 25,000 - 49,999
SEC D:THB 15,000 - 24,999
海外(特にアジアなど新興国)においては、SECによる生活水準の差が先進国と比べてはるかに大きいため、マーケティングにおけるターゲット設定の重要な基準の一つとなる。ターゲットとするクラスの生活者が、実際にどのような住環境で暮らしているのかイメージするのに、本稿が参考になれば幸いだ。
タイのキッチン事情
SEC上位層(A・Bクラス)ー オーブンを使った西洋料理・外国料理への関心も高い
はじめに所有している調理家電を見てみよう。
この層では、ビルトインオーブンを所有している家庭がいくつか見られた。
タイ全体で見ると、焼き物料理(Bake)は主流ではないため、ビルトインオーブンの保有率は低い。しかし、SECが高い層ほど海外料理に触れる機会が多い傾向にあるため、ビルトインオーブンの保有者もおのずとSEC上位層となっている。
オーブンを所有しない家庭においても、オーブントースターやポップアップ式のトースターを持っている家庭が多い。米食文化が根深いタイだが、食の欧米化と共に、食パン消費も増えているようだ。
出典:インテージConsumer Life Panorama
また、エアフライヤーの所有も複数の家庭で確認できた。コロナ禍による外出制限で自炊が増えた頃、手軽に揚げ物が出来るとして流行したのだそう。こちらもSEC上位層ほど所有している傾向にあった。
出典:インテージConsumer Life Panorama
出典:インテージConsumer Life Panorama
出典:インテージConsumer Life Panorama
SEC上位層になるほど健康志向から自炊に力を入れる人も多く、食事管理を意識して一度に多くの食材を購入して調理を行う傾向がある。調理家電や調味料の充実度が高いのは、自炊への強い興味・関心の表れだろう。
SEC中間/下位層(C・Dクラス)ー 中食・外食が中心で、シンプルで必要最低限のキッチン
続いてSECの中間/下位層を見てみよう。
SEC上位層で見られたオーブンやトースターは、CLP上ではほとんど確認できなかった。
電子レンジや炊飯器は、SEC上位層と比べると機能がやや限定的で、シンプルな製品を使用しているケースが多い。一部、使用感のあるレトロな製品を使っている家庭も多く見られた。
出典:インテージConsumer Life Panorama
また、冷蔵庫内にも違いがあるようだ。
上位層に多く見られた調理済みの料理よりも、食材そのものが袋ごと保管されているケースが多く、調味料の数も少ない傾向にあった。
出典:インテージConsumer Life Panorama
SEC上位層と比べると、下位層はシンプルな料理を作り、一度に食べきれる量を調理することが多いようだ。
終わりに
SEC別にみたタイの自炊事情はいかがだっただろうか。
生活者を読み解き理解を深める上で、世帯収入を重要な指標として用いることは少なくないだろう。今回のコラムを通して、食生活の情報もまた、生活者を理解する一助になることをお伝え出来たら嬉しい。
Consumer Life Panoramaとは
世界18か国1000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者理解に役立つ。
詳細はこちら。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。
▲収入別にキッチン・保有する電子レンジ・炊飯器・冷蔵庫の中身を比較した例。
CLPでは、搭載されているビジュアルデータを人の属性別に整理して、カテゴリー・アイテムごとに分類する「Group View」機能を搭載。
規則性のない画像蓄積のままでは扱いにくいビジュアルデータを、分析しやすい形でご提供します。
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執筆者プロフィール
大塚 早紀
2022年インテージ入社。電機業界を中心にDCG領域のマーケティングリサーチに携わる。
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編集者プロフィール
高浜 理沙
Global Market Surferのサイト作りを担当。
- 2024/12/25
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