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【US】BEV新車販売比率20%越え カリフォルニア州のBEVユーザーの生活・暮らしを覗いてみる

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アメリカやEU、日本をはじめとする先進国各国でカーボンニュートラル化が進んでおり、各自動車メーカーはEV領域に注力している。特にバッテリーEV車 (ガソリンを使わず電気のみを使って走る車。以降BEV)が売れている地域のひとつとして、アメリカ・カリフォルニア州があげられる。直近では、ハイブリッド車の人気が復活しつつあるが、 主にZEV政策(※)やガソリン価格の高騰などの政治・経済的な背景がEV需要を促進しており、2024年では新車で売れた車の約5台に1台がBEVという状況となっている。そんな地域でEVを保有している人達は、どのような人達なのだろうか。生活環境を覗くことができるビジュアルデータベースConsumer Life Panorama(CLP)を使い、そこから見え隠れする彼らの人となりを洞察する。
※ZEV政策:自動車の排出ガスを削減し、環境への影響を最小限に抑えることを目的とした政策

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出典:「California New Car Dealers Association Releases Q3 2024 Auto Outlook Report」を元にインテージ作成

今回ご紹介するのは、カリフォルニア在住のBEVユーザー3名。彼らの中で共通している点に注目し、1. 属性情報、2. 居住エリア・形態、3. 価値観・ライフスタイルに分けて特徴をみていく。

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出典: インテージ Consumer Life Panorama

● 世帯年収がUSD 200,000以上の比較的富裕層。
● 小さい子供(3歳以下)がいて、ペットと同居している。

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出典: インテージ Consumer Life Panorama

一般的にBEVはガソリン車よりも高額なため、彼らのような比較的富裕層以上の人が保有していることが考えられる。また、3名とも小さい子供とペットと同居しているため、子供やペットをのせることを想定して、静寂性やリモート空調コントロールがついているBEVを選んでいる可能性もあるのではないか。テスラではDog Modeなど、車内で待つペット専用の機能も存在する。ペットとEV保有の関係を深堀できたら、何か新しい機能やサービス、訴求ポイントにつながるカギが見つかるかもしれない。

↑テスラのDog Mode(車内で待つペットのための機能)
Instagramより

2. 居住エリア・形態

● 充電環境が整っている都市部・ベイエリア周辺在住

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出典:「ChargeHub充電ステーション」を元にインテージ作成

● 持ち家一戸建て。家の前に乗り込めるスペースがある。

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出典: インテージ Consumer Life Panorama

充電インフラが整いつつあるとはいえ、設置場所はやはり都市部・ベイエリア周辺に限られる。また、BEVを自宅で充電することを考えた際、一戸建てかつ持ち家の方が充電設備を整えやすい。そのため、彼ら3名のように都市部・ベイエリア付近の持ち家一戸建てに住んでいる人達がBEVを保有しているのではないだろうか。
その他にも、3名共通して家の前に車が乗りこめるスペースがあることも特徴としてあげられる。北米は路上駐車が一般的なため、家の前に車が乗りこめるスペースがない家も多く存在する。しかし、家で充電する際はケーブルをつなぐ必要があり、路上駐車だとケーブルがとどかないため、家の前のエリアに駐車して充電しているのだろう。

3. 価値観・ライフスタイル

① 新しいものが好きで、積極的に生活に取り入れる

● 趣味は旅行と外食
● スマートスピーカーやロボット掃除機など、テクノロジーを使った新しいモノを保有

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出典: インテージ Consumer Life Panorama

3名とも共通して、趣味は旅行と外食。行ったことがない場所を訪れる、新しいレストランを試すという点から、彼らは新しいもの好きな人達なのではないだろうか。また、スマートスピーカーやロボット掃除機など、テクノロジーを使った新しいものを保有していることからも、彼らは新しいものが好きで、積極的に生活に取り入れる人達だということが考えられる。

② アクティブで健康的なライフスタイル

● 本格的なフィットネスバイクやランニングマシンを保有し、自宅に運動スペースがある。

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出典: インテージ Consumer Life Panorama

● 調理器具や調味料が充実している(≒普段から料理をする)

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出典: インテージ Consumer Life Panorama

3名とも、本格的なトレーニング機器を保有し、自宅にトレーニングスペースがあることから、日常的に運動をし、アクティブで健康的な生活をおくっているのではないかと考えられる。もしBEVユーザーの中で、彼らのように日常的に運動する人の割合が高いのであれば、フィットネスとEVを組み合わせた面白い新機能やサービスに高い需要が見込めるかもしれない。また、調理器具が充実しているため、普段から料理をしている人達だということが分かる。この視点からも、彼らは健康に配慮したライフスタイルをおくっていることが言えそうだ。

③ 環境保護への関心

● 比較的富裕層だが、日常的に水筒を使用したり、タッパや詰め替え用ボトルなど繰り返し使える容器を使用したりしている

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出典: インテージ Consumer Life Panorama

彼らは比較的富裕層にも関わらず、日常的に水筒や食品保存容器、詰め替え用ボトルなどの繰り返し使える容器を使用しているため、環境保護への関心がある可能性が高い。水筒や保存容器は毎回洗ったり、詰め替え用ボトルは中身を補充したりする必要があるため、一般的に面倒だと感じる人も多いだろう。お金に余裕があれば、ペットボトル飲料やあらかじめ容器に入っている洗剤などの商品を購入しがちであるが、それでも彼らは水筒や繰り返し使える容器を使用しているため、環境保護への関心がある人達なのではないだろうか。

④ 自分の暮らしをより良いものにしたいと考える

● ペットを飼っている人は生活に癒しや繋がりを求める≒自分の暮らしをより良いものにしたいと考えている

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出典: インテージ Consumer Life Panorama

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https://www.intage.co.jp/news/1692/

EV保有者に限らない話ではあるが...

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出典: インテージ Consumer Life Panorama

3名の冷蔵庫の中身を覗いてみると、大きい冷蔵庫に大量の食料品・飲料品がストックされている。これはEV保有者に限った話ではないが、アメリカ全体として、食料品や飲料を一度に大量に購入する傾向があり、このように冷蔵庫いっぱいにストックしている人が多く存在する。しかし、カリフォルニア州は、大規模停電の発生数がアメリカの中で2番目に多い(2000~2023年統計)。停電した場合、買い貯めしたものが悪くなってしまうため、EVを非常用電源として使用できるメリットも、BEV購入検討時の後押しになっているのではないだろうか。

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出典:Axios; Climate Central; US Department of Energy(Statistaより引用)

まとめ

今回ご紹介した3名をまとめると、彼らは富裕層、都市部ベイエリアの持ち家一戸建てに住んでいて、小さい子供やペットと同居している。新しいもの好きで、アクティブかつ健康的な生活を送り、環境保護と生活の質向上を重要視する人と言える。いわゆる、「意識が高い人」である。カナダに4年住み、複数回カリフォルニア州を訪れた経験がある私の肌感としても、EVに乗っている人は「先進的」「シゴデキ」なイメージが強い。時代に出遅れたくない人、新しいものはまずトライみる人にも選ばれているのではないか。

また、ペットとEV保有の関係や、フィットネス×EV、買い貯めの食品を守るためのEVの非常時電源利用など、今回生活実態を覗いていく中での発見から、様々な仮説が建てられる。さらなる定量的検証が必要ではあるが、生活者のライフスタイルや、価値観とのつながりを見ていくことで、マーケティング施策のための意外なキーポイントが見つかるかもしれない。

今後EV化が進むことを想定すると、スマートホームとの連携やエネマネなど、生活者の家やライフスタイルとクルマの繋がりはこれまで以上に深くなっていくのではないだろうか。EV先進国と言われる中国では、EVは単なる移動手段ではなく、動く家電としてとらえられているようだ。車周辺だけではなく、生活者の家やライフスタイルを理解することで、新たな気づきやヒントを得られるかもしれない。
最近では、ハイブリッドの人気が復活し、BEVの販売台数は伸び悩みつつあるが、国や自治体がカーボンニュートラルを目標とする以上、EVが非常に重要な役割を担うのは間違いないだろう。そのため、車周辺だけではなく、生活者の家やライフスタイルまで視野を広げ、より深く生活者を理解することが今後重要になっていきそうだ。

Consumer Life Panoramaとは

世界18か国1000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者理解に役立つ。
詳細はこちら

本コラムで引用したように、
・海外のターゲット生活者のライフスタイルを理解する
・カテゴリーに留まらず、幅広く生活環境・価値観を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。  


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    木村 勇登

    2024年インテージ入社、モビリティ領域のリサーチャー。
    学生時代の4年間をカナダ(バンクーバー)で過ごし、現地の大学で体育会サッカー部に所属。多国籍なチームメイトにもまれつつ、グローバルな視野・価値観を養う。
    当時の愛車はCIVICで、左ハンドルにおびえながらも、無事故無違反達成。
    趣味はドライブ。特技は縦列駐車。

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    編集者プロフィール
    高浜 理沙

    Global Market Suferのサイト作りを担当。

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    「出典: インテージ 調査レポート「(レポートタイトル)」(●年●月●日発行)」
    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
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