【アジア各国のZ世代】身の回りモノに対する考え方・物欲が少ない先進国Z世代女性~
Z世代とは、1996年から2010年に生まれた世代を指しており、2025年時点の年齢は15〜29歳です。その多くは学生や若手社会人で、中にはすでに家庭を持ち、子育てをしている人もいます。Z世代は、これからの社会を担う中核層となっていく存在です。
一方で「Z世代」とひとくくりにして語るのは難しいのが現実です。同じZ世代であっても、国によって価値観やライフスタイルには大きな違いがあります。例えば、先進国のZ世代女性は身の回りのモノに対する執着が比較的少なく、準先進国・発展途上国のZ世代女性は、モノを通じて生活をよりよくしたいという意識が強い傾向にあります。
この記事では、インテージが保有する海外生活者データベース「Global Viewer」から10カ国のZ世代女性(18歳~29歳)にフォーカスし、その特徴を詳しく分析しご紹介します。
なお、今回は一人当たりのGDP(2023年時点)によって10カ国を「先進国」「準先進国」「発展途上国」の3グループに分けています。
・先進国(一人当たりGDP30,000USD以上):韓国、台湾、香港、シンガポール
・準先進国(5,000-29,999USD):中国、マレーシア、タイ
・発展途上国(4,999USD以下):インドネシア、ベトナム、フィリピン
身の回りのモノに対する行動・考え方
まず、身の回りのモノを購入する際に、何を基準にして選ぶかを調査しました。
その結果、先進国は商品の安心安全や機能などの多くの要素に対して、準先進国・発展途上国ほどは重視していないということが分かりました。一方で準先進国は、自分らしさを表現できる商品を選ぶ傾向にあり、発展途上国は安全性や機能を優先して商品を購入しています。
また、生活を豊かにするための手段としてお金・時間を費やしたいと考え、最先端の技術に魅力を感じる発展途上国に対し、先進国はあまり重視しないという価値観も伺えます。
情報収集に関する行動・考え方
次に、商品やサービスについてどのように情報を得ているのかを調べました。
意外なことに、台湾を除く先進国は積極的な情報収集はしていないという結果でした。これは、先進国ではテレビ・雑誌・インターネットなどの情報発信チャネルが揃っている環境から、自ら情報収集をする必要がなくなっているためと考えられます。
スマートフォンが普及している準先進国・途上国においては、インターネット検索や情報源の使い分けなど、関心があることについては消費者自らが多角的に情報を収集しています。
日常的な買い物に関する行動・考え方
普段はどのように商品を選び購入しているのか、その行動や考え方は以下となりました。
先進国は初めて購入するモノに対してあまり慎重ではなく、似た商品との細かい比較も行っていないようです。これは、前述した「身の回りのモノに対する考え方・行動」と同様、先進国の市場で販売されているモノの品質が一定以上であることから、買い物で大きな失敗をしてしまう不安が少ないためと考えられます。
一方で、準先進国・発展途上国は初めて買うモノに対して慎重な姿勢は持ちつつも、品質・成分などを比較することで、判断しています。準先進国ではモノを買いだめする傾向もあり、類似商品ならば金額で選ぶなどコストパフォーマンスを重視しているようです。
なお、フィリピンの特徴は商品比較や購入店の使い分けを行いながら、新商品も積極的に試すなど柔軟に買い物することです。
今後保有したい資産
最後に、各国Z世代の女性がこれから持ちたい、または今後増やしたいと考えている資産についての調査です。
現金・預金に関する考え方にはあまり大差は見られず、リスクよりも安全性を求める回答者が多い結果となりました。また、発展している国ほど高級腕時計や高級ジュエリーなど、いわゆる贅沢品の購入意向が低いこと分かります。準先進国は金・金塊・車といった物的資産に関心が強いようです。
車やバイクが準先進国・発展途上国のZ世代から支持されているのは、都市構造や公共交通機関の整備度とも関係があると考えられます。
まとめ・考察
発展途上国は、初めて買うモノには慎重で、失敗を避けたいという意識が強い傾向にあります。その一方で、新しい商品に前向きにチャレンジしたいという気持ちもあり、買い物の前には口コミやレビューなどを通して積極的に情報を集めています。また、高級ジュエリーのような贅沢品への関心も見られ、「いいモノを持ちたい」という所有欲が背景にあると考えられます。
準先進国では、「なるべく安く、でもある程度は品質のよいモノが欲しい」といった、コストパフォーマンスを意識する傾向が強まっています。また、生活に少し余裕がある影響か、必要なモノをその都度買うのではなく、まとめ買いをするスタイルも見られるようになります。価格だけではなく、お得感や効率を意識した買い方が特徴です。
先進国の場合、モノに対するこだわりはあまり強くなく、慎重に選ぶというよりは「基本的には何を選んでも大丈夫」という安心感のもとで買い物をしています。これは、商品市場が成熟しており、粗悪品が少ない環境が影響していると考えられます。そのため、商品について自分から積極的に調べる必要もあまり感じていないようです。また、高級ジュエリーなどの贅沢品に対しては、全体的に関心が低く、モノを持つことに価値を置かない傾向が見られました。
最後に
国際的なマーケティングを行う上では、国の発展状況に応じた施策の設計が欠かせません。今回ご紹介したZ世代女性のように、モノへの関心や情報収集の方法など、国によって異なる消費者の価値観に適したアプローチを行うことが求められます。
発展途上国では生活向上の手段として、モノへの関心が強く、商品の目新しさやSNSでの評判を重視しています。一方で消費そのものへの関心度が低い先進国では、まず商品に気づいてもらうための積極的なPush型コミュニケーションが鍵となりそうです。
Global Viewerとは
インテージがストックする11ヵ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリー(※)に関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。
※カテゴリー例:
食品・飲料、パーソナルケア・化粧品、ハウスホールドケア、育児・介護、モビリティ、家電、スマートホーム、住宅、エンタメコンテンツ(ゲーム・音楽等)、金融、保険、旅行(訪日)、オンラインサービス 等
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編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。
- 2025/04/18
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