【アジア各国のZ世代】インドネシアZ世代に人気の日本スイーツ&ハラール化粧品
- 公開日:2025/05/02
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日本旅行人気から、和菓子とMOCHI DAIFUKUが人気に
円安の影響もあり、インドネシアから日本を訪れる旅行客が増加している。特に最近では、働く20代半ばから後半のZ世代を中心に、日本旅行への関心が高まっている。インドネシア人にとって日本は観光ビザが比較的取得しやすい国であり、友人同士や小さな子ども連れの家族旅行で訪れるケースも増えている。インテージが保有する生活者データベースGlobal Viewerの調査結果でも、『今後1年以内旅行で行きたい国・地域』では日本は48.2%と2番目に人気旅行先になっている。
Global Viewerによると、78%のインドネシアのZ世代(女性)は今後1年間の経済展望について「良くなる」と楽観的に見ている。実際、GDPはコロナ禍以降、順調に伸び続けており、給与も年平均で4~6%のペースで上昇していることが背景にある。また、日本への航空券はプロモーションを利用すれば往復約6万円と安価に手配でき、LCCを利用せずとも気軽に日本を訪れられる環境が整っている。
日本旅行の情報をSNSで発信するインドネシア人が増え、伝統的な日本文化や観光スポットの情報だけではなく、日本の食文化が頻繁に取り上げられるようになった。その結果、インドネシア人のZ世代の間で、日本は食を楽しむ場所という認識が広がっている。
ジャカルタには多くの日本食レストランがあるものの、和菓子はこれまでインドネシア人にとってあまり馴染みのあるものではなかった。しかし最近では、日本旅行人気の影響でコンビニやスーパーなどでも和菓子が頻繁に見られるなど、Z世代の間で和菓子の人気が高まっている。Global Viewerの結果でも、男女ともに『日本で購入したい食料品』で和菓子が71%と2番目の人気を集めている。特に和菓子の中でも「MOCHI DAIFUKU」が注目されている。
インドネシアには、もともと「KUE MOCHI」という伝統的な菓子がある。
これはもち米粉で作った皮にピーナッツ餡を包んだものや、緑豆と赤もち米を甘いココナッツミルクで煮たお汁粉のようなものもある。そのような背景から、インドネシア人にとって「和菓子・DAIFUKU」は比較的受け入れやすい食品だったことが推測される。
現在の「MOCHI DAIFUKU」ブームは、最初はオンライン販売をきっかけに始まり、その後は専門店やコンビニ、スーパーだけではなく駅のキオスクや屋台にまで広がった。当初人気だったいちご大福は、いちごの調達が難しく高価だったため、クリームやフルーツ、チョコレート、チーズなどを使った多様なフレーバーに進化し、よりインドネシア人の好みに合った商品となっている。また、色鮮やかでカラフルな外観も人気の一因となり、「MOCHI DAIFUKU=日本風のもち菓子」というイメージで、新たなスイーツブームの代表として定着しつつある。
Mochi Mochioは、ジャカルタのモールに数多く出店している。
中でも、クリーム系の冷蔵タイプ「バニラ」は、アイスクリーム感覚で食べられることから人気を集めている。
屋台にもその人気が波及している。この露天形式の店は、行列ができるほどの人気を集めている。人気の理由は、味のバリエーションが豊富であることに加え、価格が5,000ルピア(約50円)から15,000ルピア(約150円)と手頃である点にある。
インドネシアZ世代の日本旅行への関心は今後さらに高まると予想され、それに伴い和菓子を含む日本の食文化は一層浸透していくと考えられる。「MOCHI DAIFUKU」に代表されるように、今後も新たなトレンドが生まれ、インドネシアにおける和菓子の地位がさらに確立されていくことだろう。
インドネシアのハラール化粧品~韓国コスメトレンドの影響も
インドネシアでは2024年10月より、食品や飲料だけではなく、化粧品を含む特定の商品について、ハラール認証の有無の表示が義務化された。肌や髪の健康を重視するZ世代のムスリムの男女は、より安心できる天然成分のものや、国内生産もしくは政府の承認を得たハラール化粧品を選ぶようになっている。ここでは代表的なものをいくつか紹介したい。
2024年8月8日の新聞社「Kompas」のオンライン記事によると、Z世代は1化粧品購入の際に1回平均150,000ルピア(約1,500円)、月に300,000ルピア(約3,000円)を使っているという。
※Kompas.id「Tren Generasi Z dan Milenial Berbelanja Kosmetik」(Lazada Indonesia調査、Statista調査)
https://www.kompas.id/baca/ekonomi/2024/08/07/tren-generasi-z-dan-milenial-berbelanja-kosmetik
『メイクアップアイテム別 購入時重視点』の調査結果を見ると、ベースメイクアップ化粧品とポイントメイクアップ化粧品ともに、「使い心地がよい」と回答した割合が各国の中で最多だった。
インドネシアの消費者は肌に触れるものについて、デザイン性やブランド名よりも使用感や心地よさを重視する傾向が見られる。また、手に取りやすい価格帯で店舗やオンラインで気軽に購入できることも重要視されている。
一方で興味深いのは、自然由来の成分や品質の高さに対する意識を示す数値が比較的低かった点だ。これは、インドネシアでは化粧品に対してハラール認証や天然成分が「当然のこと」としてすでに浸透しているため、あえてそれを重視する回答が少なかった可能性もある。また、経済層や地域差も影響しているかもしれない。中所得中流以上の層は品質に強いこだわりを持つ一方、低所得層では価格優先の消費傾向が強く、品質に対する意識がそれほど高くないこともある。
代表的なハラール化粧品ブランドとしてはWardahが最も有名で、価格も手頃である。
ハラール化粧品ブランドとして他社よりも早く知られるようになり、価格が手頃で、ドラッグストアやコンビニでも広く入手できることから、Z世代だけでなく年配層にまで幅広い支持を集めている。
その他のブランドで、特にZ世代に支持されるハラール化粧品がEmina Cosmeticsである。かわいらしいパステル調のパッケージデザインと、手に取りやすい価格帯で、特に10代から20代前半の若年層女性に強く支持されている。
Z世代の間でとりわけ人気が高いのがニキビ対策ラインである。インドネシアでは食生活や大気汚染などの影響もあり、30代までニキビに悩む人が多いとされる。Eminaはこうした現地の肌悩みに即した商品展開を行っており、「Ms. Pimple Acne Solution Spot Gel」や「Bright Stuff for Acne Prone Skin」などのアイテムがSNSでも高評価を得ている。
インドネシア国内生産のハラール化粧品が注目される中、韓国コスメの人気も依然として根強い。韓国企業はインドネシア市場でいち早くハラール認証を取得し、このブームを牽引している。特に価格帯が手頃で種類が豊富であり、K-POPアイドルによる宣伝、洗練されたパッケージデザインがZ世代に支持されている理由として挙げられる。韓国は薬事法が厳しく、安全性への信頼度も高い。Nacificがハラール&ヴィーガンフレンドリー認証を取得したことで特に注目されている。
その他にも、Innisfreeなども、低価格帯の商品を取り扱うMINISOやドラッグストア、自社ショップなど幅広い販路で手に入りやすい。価格も欧米や日本の化粧品よりも安く、約半額程度で購入できるものも多い。
また、K-POPや韓国コスメの影響を受けて、インドネシアではZ世代男性向けの美容市場が拡大している。これまで美容にあまり関心を示さなかったムスリム男性も、最近ではスキンケアやメイクに関心を持つようになってきている。
韓国男性アイドルを起用した宣伝は、美容意識を広める一方、体型や外見の違いから抵抗感も存在する。しかしこのブームがきっかけとなり、自国ブランドも男性向け商品を積極的に展開するようになった。自国ブランドはインドネシア人男性モデルを起用し、「男性らしさ」や「大人の魅力」を強調したデザインや色使いを特徴としている。
インドネシア発のメンズ化粧品ブランドとして注目を集めているのが、ERHAが展開する「His ERHA」である。
His ERHAは、皮膚科専門医による知見をもとに開発されたスキンケアブランド「ERHA」のメンズラインであり、ナチュラル成分と科学的アプローチを融合している商品を展開している。
今後のインドネシア化粧品市場は、自国ブランドによる高品質な商品がさらに増えると予測される。海外の美容技術を取り入れつつ、インドネシア人特有の肌の悩みに対応した商品開発が進むだろう。日本や韓国のように世代別・目的別の商品ラインの充実と、メンズラインの活況が期待される。
Global Viewerとは
インテージがストックする11ヵ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリー(※)に関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。
※カテゴリー例:
食品・飲料、パーソナルケア・化粧品、ハウスホールドケア、育児・介護、モビリティ、家電、スマートホーム、住宅、エンタメコンテンツ(ゲーム・音楽等)、金融、保険、旅行(訪日)、オンラインサービス 等
本記事でご紹介したような国別比較分析のほか、1か国における属性別分析(性年代・収入等)なども可能。
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執筆者プロフィール
TNCライフスタイル・リサーチャー
インドネシア在住20年。インドネシア人の夫と2人の子どもと暮らしながら、ジャカルタのグルメ、美容、生活情報を発信中。
コスメは現地調達が基本。肌にやさしく、価格も手頃な「安くていいもの」を日々発掘しています。 -
編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。