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【海外生活者データGlobal Viewer】中国では「中華料理」というカテゴリーはない?中国の外食事情

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グローバリゼーションが進む今の時代では、食のダイバーシティも加速し、食事の選択肢が広がっている。日本では、和食だけでなく、中華料理や韓国料理、イタリアン、フレンチなど海外の料理を食べることは日常茶飯事。だが、海外ではどうだろうか。海外の生活者は外食の際、どのようなオプションを候補として考えるのだろうか。本記事は、中国の人々の外食事情とその特徴を解説する。

中国生活者の外食習慣

中国の人々は、外食の際どんな料理をよく食べているのだろうか。

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図① 外食で食べる料理の種類(複数選択)(ベース:中国18~64歳男女)

「普段外食で食べる料理の種類」(上図)のデータを見ると、中華料理を食べる人の割合はほかの種類より圧倒的に高く、西洋料理や日韓料理を食べる人はそれほど1~2割程度にとどまる。自国料理を優先的に選ぶことは当たり前なことと思われるかもしれないが、ほかの中華圏では中国と同じ傾向なのだろうか。

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図② 外食で食べる料理の種類(複数選択)(ベース:香港・台湾・シンガポール18~64歳男女)

香港、台湾、シンガポールの人々は、外食の際に中国と同じ中華料理を選択することが最も多いが、食事のダイバーシティでは中国より深く浸透しているようだ。特に住民がほとんど中華系である香港と台湾の傾向を見ると、外食で日本料理や西洋料理を選ぶ人々の割合が3~5割と中国本土より大きく上回っている。洋食・和食の高い受容度は、イギリスや日本の統治という歴史や、欧米・日本企業が比較的に早くから進出しているという点から説明できると考えられるが、中国では、それと比較するとなぜなかなか異国料理の広がりが進んでいないのか。

そもそも中国で「中華料理」というカテゴリーはあるのか?

日本では、「中華料理」「イタリア料理」など、国レベルで料理のカテゴリーを表現することは、一般的な考え方だ。一方、中国では、「中華料理」という一括りの言い方をすることがあまりない。その代わりに、外食の際に「中華料理」の中のサブカテゴリから考えることは多い。上位に挙げられる選択肢は、火鍋、多種な調味料を絡み合う炭焼き(焼烤)、唐辛子を多用する四川料理や湖南料理、味付けが薄い広東料理などがある。

(上から)炭火焼き(焼烤)・ 湖南料理・広東料理

広大な国土がある中国本土には、様々な風土が生まれ、各省が独特な食文化を有するため、「中華料理」という言葉ではすべての料理を網羅的に表現することが難しい。影響力が大きい料理は「菜系」(料理の種類)と呼ばれ、主に「八大菜系」があると一般的に認識されている。先に述べた四川・広東・湖南料理のほか、山東・江蘇・福建・安徽・浙江料理がある。どんな料理を選ぶかは、シーンによってかなり異なる。例えば、友達や家族とワイワイ楽しみたい時は火鍋や炭焼きが定番で、ビジネス商談やフォーマルな場面では広東や四川菜系などの有名なレストランに行くことが多い。また、大都市では、自分へのご褒美として高級寿司店でOmakase(料理人にメニューを委ね、食材の鮮度や技巧を凝らした寿司やつまみのコース)を頼んだり、高級ステーキなど西洋料理レストランに行ったりする30代・40代エリート層もいる。
このように、日本では「中華料理」と一括りにされる中国料理は、実はその中に様々な選択肢がある。そのため、西洋料理や日本料理など海外の料理を選択せずとも、十分に豊富な選択肢の中から選び、楽しむことができるというのが、中国で異国料理を食べる人の割合が低い傾向の理由の一つなのかもしれない。

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    執筆者プロフィール
    郭 軒瑾(かく けんきん)

    中国出身のリサーチャー。中国本土、香港、台湾など中華圏を中心に華人系消費者の生活実態を発信。

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    編集者プロフィール
    高浜 理沙

    日系のFMCGメーカー(化粧品、ベビー用品、食品・飲料等)のアジア・欧米でのマーケティング・リサーチ支援に従事したのち、2019年より現職にて、日系企業の海外マーケティング・リサーチのためのソリューション開発や、セミナー等の対外発信を行う。
    子どもが生まれてからは、家族と自身の心身の健康をいかに保つかが最大の関心事で、様々なグッズ・サービスを試している。

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