<駐在員コラム>【香港】長寿の秘訣!? 香港の健康ドリンク事情
- 公開日:2019/08/20
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厚生労働省の2017年のデータでは、男性の平均寿命は、香港は81.70年、対して日本は81.09年。女性の平均寿命は、香港は87.66年、日本は87.26年。世界一の長寿国である日本よりも平均寿命が長いのです。
※香港は中国の特別行政区の一つであるため、国が対象となるランキングには含まれません。
ここ数年、香港の平均寿命は世界のトップレベルを維持しています。
その理由として、「香港は医療制度が整っており、かつ人口が密集して交通が整備されているために救急救命に要する時間が短く、多くの命が救われているから」とする香港人のコメントを見かけました。
ただ、私のような外国人からすると、都市機能が素晴らしいという理由の他に、香港人の日常生活の中での健康へのこだわりも、香港人が寿命を延ばしている理由なのではないかと感じます。
伝統的な香港を象徴するような、早朝に気功をする老人達の姿にも健康へのこだわりを感じますが、この数年はフィットネスクラブに通う人が増加しているようです。再開発の進むクントンエリアでは、物流倉庫を改装した商業施設ができたと思ったら、その多くにフィットネスクラブが続々とオープンしています。最近では若者のフィットネスクラブ通いの過熱に便乗した強引な勧誘が報道されていました。
また、香港人は健康によい食品へのこだわりが特に強いです。街を歩くと漢方薬屋が多くみられますし、中華系のレストランでは、漢方の薬材を入れたスープを飲む香港人の姿がよくみられます。例えば、蛇のスープは有名で、香港に旅行をされた方の中にはご存知の方もいらっしゃると思います。亀ゼリーも健康に良いとされる伝統的な健康食品です。
これらの食品は、特に健康が気になりだす中年以降の人々から支持を得ています。
一方、手軽な方法で健康に配慮した食生活を送れる健康ドリンクは、若い世代にも浸透しているようです。今回はそんな健康ドリンクについてレポートします。
漢方の材料で作られた健康ドリンク
香港で特にメジャーな2つの健康ドリンクブランドを紹介します。
鴻福堂は1986年に開業した老舗企業で香港証券取引所にも上場しています。健康ドリンクの部門で、香港で最も販売額と販売量が多い企業です(ニールセン調べ)。香港での直営店舗は100店舗を超え、店舗の場所は主に人通りの多い地下鉄の中に設置されています。コンビニエンスストアでも販売されています。
直営店舗で販売されるペットボトルの外装は非常に簡単なものになっており、ラベルを上からかぶせただけのものになっています。
500mlで、価格帯は22香港ドルから26香港ドルです。日本円で約308円から364円(1香港ドル=14円で換算)です。
健康工房は1989年に創業。香港での直営店舗は十数店舗あります。
健康工房の直営店舗で販売されるペットボトルの外装も、鴻福堂と同様に非常に簡単なものです。価格帯は26香港ドルから32香港ドル、日本円で約364円から448円です。
この2ブランド、販売している健康ドリンクの効能やフレーバーに特に違いは見られません。
効能としては、デトックス、肝機能の強化、清肺、美肌、冷え性対策など10種類くらいのラインナップが揃います。清肺とは肺をきれいにするというもの。大気汚染という環境問題を抱える都市ならではですね。
客層の違いも特になく、女性を中心に10代~60代くらいまで幅広く利用されています。地下鉄駅やオフィス街にある複数の店舗を観察してみると、10~30代の仕事をしていたり学校に行っていたりといった層が目立ちました。
砂糖不使用、着色料無添加という点も共通しています。このため、ほぼ素材そのものの味のドリンクです。さらに、見た目は濁っていて、前述の通り外装も簡単でおしゃれではないため、ペットボトルに濁った水が入っている、といった印象です。
私の勤めるCSG香港オフィスでも、出勤時にこれらの健康ドリンクを購入してオフィスに持参しているスタッフを見かけます。彼女たちは仕事をしているデスクで飲んだり、お昼ご飯を食べるときに飲んだりしています。おしゃれさより健康によいものを優先して日常的に摂取する、この積み重ねは確かに健康につながりそうです。
高価格で販売されるコールドプレスジュース
日頃から飲む果実系ドリンクにも新たなドリンクが登場しています。特にコールドプレスジュースはその高価格に驚きます。
1000mlで、オレンジジュースが52香港ドル(約728円)、デトックスを目的としたドリンクは98香港ドル(約1,372円)です。スーパーマーケットで隣に置いてある濃縮還元のオレンジジュースが1000mlで19香港ドル(約266円)ですので、その値段の高さを理解していただけると思います。
売り子の方に聞くと、1000mlのオレンジジュースを作るのに10数個以上のオレンジを搾るそうで、自分でオレンジを搾ってジュースを作るよりも安価だそうです。また、購入のポイントはやはり「添加物が入っていない点」とのこと。香港では売っている野菜や肉の大半が中国からの輸入という環境にあり、農薬や野菜の鮮度を保つ薬剤が使われていることが多いため、できるだけ自然なものを採り入れることで食品のリスクを避けたいという価値観の人が多いのです。
とはいえ、高額なコールドプレスジュース。販路は高級スーパーから普通のスーパーへと広がりつつありますが、客層は「家族には、高くてもおいしくて身体にいいものを」といった子供連れの高所得ファミリー層にとどまっているようです。
最後に、香港人の友人たちに健康ドリンクといえば?と質問をしたところ、ヤクルト!との声もありました。ヤクルトは1969年に香港に進出し、すでに半世紀売られているブランド。両親が子供のころから飲んでいて、自分も子供のころから飲んでいたから、とのこと。子供のころからの親しみで、漢方と同じように生活に根付いているのですね。
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執筆者プロフィール
向井 秀雄(むかい ひでお)
香港在住の経理担当。これまでに北京、上海、深セン、香港に合計10年居住。 国際性にあふれる香港社会のスピーディーな変化を日々追っている。
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