【日本】コロナで激変「2020年、今年売れたものランキング」
この記事は、日本の生活者を知ることができるインテージのコンテンツメディア“知るGallery”に20/12/7に掲載されたものです。
2020年、最も売り上げを伸ばした日用消費財カテゴリー 驚異的な前年比とは?
図表1は、今年10月までの販売金額の前年比のランキングです。
図表1
知るGalleryでは、毎年売れたものランキングを発表しています。2018年までは体にいいと言われる食品、飲料が上位に多く入り、昨年はタピオカ人気にけん引されデザートドリンクが1位となりました。
しかし今年は新型コロナの影響で、人々の生活同様に売れたものも大きく様変わりしました。1位はマスクです。販売金額は前年比425%となりました。一時期、品不足が大きな社会問題になり、テレビなどでも連日放送されていただけに、さらに大きな数字になる雰囲気もありましたが、2月~4月まで欠品が続いたことや、例年もインフルエンザ予防や花粉症対策として一定の需要があり、ここ10年ほど市場拡大が続いていたことなどで、4倍超の水準となりました。今や街中ではマスクをしていない人の方が少ないことを考えると、まさに今年を象徴するカテゴリーと言えそうです。
2位は殺菌消毒剤で302%。こちらも大きな伸びを記録しました。なかでも傷口の消毒などを除いた手指消毒剤に限定すると、さらに数字は跳ね上がり910%という驚異的な結果に。個人で持ち歩いたり、公共施設やレストラン、スーパーなどの入り口に置いてあるなど、コロナ前とは比較にならないほど使用頻度も増え、新しい生活様式には欠かせないものとなっています。購入者のうち、約9割が前年に購入のない新規購入者というデータもあります。今までより、はるかに多くの人が手に取るようになり販売金額も9倍超となった手指消毒剤は、大きな市場を確立したと言えるでしょう。
ちなみに昨年1位のデザートドリンクが131%、一昨年1位のサバ缶が151%だったことを考えると、これらのカテゴリーが、いかに急激な伸びだったかが分かります。(図表2)
※データベースがSCI®(全国消費者パネル)と異なるため、参考値
図表2
上位を占める衛生用品 今も続く影響の大きさは?
3位は体温計で249%。4位・うがい薬(220%)、5位・ぬれティッシュ(179%)、7位・せっけん(143%)と、衛生用品が続いたのも特徴的です。これらの伸び率は、全て例年の1位を超えています。
これらのカテゴリーの販売金額の前年比を月ごとに追ったのが図表3です。
図表3
新型コロナの主な症状として発熱があげられることもあり、体温計に需要が殺到して一時品薄状態が続きました。
うがい薬は大阪府の会見による影響が一時的に見られた後も、対前年比180%以上の伸びを続けています。ぬれティッシュやせっけんは、緊急事態宣言が出された4月以降、徐々に落ち着きつつありますが、それでも前年を大きく上回る状態が続いています。
コロナの予防には3密を避けるとともに、手洗い・うがいが有効と言われていますが、それを積極的に行い続けている人が多いことが販売データからもうかがえました。
「生活様式の変化」の影響を受ける食品市場 大人気コンテンツの関連商品も
新型コロナ対策関連のカテゴリーが上位に並ぶ中、異彩を放ったのが6位の玩具メーカー菓子。対前年比153%と大きく伸長しました。玩具メーカーのおもちゃ付きお菓子で、国民的大ヒット作品・「鬼滅の刃」作品関連の商品が原動力となりました。
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8位のプロテイン粉末は、隠れたヒットカテゴリーで対前年比139%。特に女性を中心に購入する人が大きく増加し、種類も大豆が主原料のソイプロテインが伸長しました。コロナで外出や運動の機会などが減り、美容と健康を気にした層からの支持が大きかったようです。
図表4
新型コロナの影響で外出や外食が少なくなった影響もあってか、30位までには食品が多数ランクインしました。9位の冷凍水産は家庭で手軽に魚貝類を取ることができ、主食との相性もいいこと、さらに長期の保存もきくことが人気を後押ししました。保存期間が長いという面では、24位・冷凍農産、28位・フルーツ缶詰、30位・畜肉缶詰などもあてはまるでしょう。
またホットケーキやクッキーなどの材料となる10位・プレミックス、12位・ホイップクリーム、15位・エッセンス類などは、外出自粛期間中に家でスイーツづくりをする流れをうけたもので、10月時点でも伸びが続いており、一定数根付いたように見えます。また主食類でもスパゲッティーなどが大きく数字を伸ばしました。
今までにないような動きを見せた、今年のランキング。世界が新型コロナに振り回された2020年を象徴するような結果になりました。衛生系など売り上げが大幅に伸びたカテゴリーがある一方で、マスクや外出の減少など新しい生活様式の中で苦戦したカテゴリーもあります。知るGalleryでは、近日中にそのランキングも発表予定です。
今回の分析は、以下のデータを用いて行いました。
【SRI®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約4,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2019年3月現在
【SCI®(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女52,500人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません
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執筆者プロフィール
木地 利光
飲料・食品等の消費財メーカーの担当を経て、現在広報を担当
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編集者プロフィール
二馬 万希子
FMCG業界のアカウントマネージャー。
- 2020/12/07
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