新型コロナウイルスの感染拡大はアセアンの生活者をどう変えた?各国比較調査から見えたASEAN New Normal
- 公開日:2020/06/15
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各国では様々な制限が設けられ、生活者の生活は大きく変わりました。その中で生まれた新しい生活習慣、新しい価値観は、収束後のAfterコロナのフェーズにも続くことが見込まれます。
インテージでは、株式会社TNCとの共創で、日本の企業が多く進出しているASEANの3カ国(タイ、ベトナム、インドネシア)で調査を行い、Afterコロナを見据えた商品・サービスを開発する上でキーとなるNew Normal(新しい生活習慣、価値観)について考察を行いました。この記事では、各国で行ったインターネット調査の結果の一部をご紹介します。
各国のこれまでの動き
今回の調査は、タイ、ベトナム、インドネシアの3カ国と、比較対象として先進国であるアメリカで、5月1日から7日にかけて行いました。はじめに、各国主要都市の主な動きを確認してみましょう。感染規模や、行動規制の範囲が大きく異なっています。
この間の経験に差はありますが、各国の生活者は大きな行動変容を迫られ、制約が緩和されつつある今も、新しい生活習慣へと移行しています。
ここからは、調査を行った「価値観」「衛生・健康」「食」「働き方・生活」「子育て・美容」「移動」の6つのテーマから、特にAfterコロナの消費を変えるカギとなりそうな3つの変化に注目して、データをみていきましょう。
ASEAN New Normalのキーとなる変化① 人・社会との距離感の変化
はじめに、生活者の価値観に注目してみましょう。価値観について、当てはまりの度合いを[3]から[-3]の7段階で聴取し、平均スコアを出した結果が図表1です。
図表1
また、「社会貢献をしている企業の製品を優先して購入しようと思う」という意識やエコ意識もアメリカと比較して高くなっていて、ASEAN3カ国で『社会のために』という意識が高いことが確認できます。
次に、憧れるライフスタイルをみてみましょう。(図表2)
図表2
『社会のために』『自国のために』『家族のために』という意識の高まりからは、ASEAN各国で「身近な人や社会との距離を見直す」という変化が起きていることがわかります。その結果、企業の社会課題に対する活動の評価が、ブランド(商品)選択に影響するようになってくるでしょう。
例えば、ベトナムでは、2020年4月にFacebook上で公開された、洗剤メーカー「Seventh Generation」のCMが話題になっています。長持ちする香りや目を引くパッケージといった通常用いられる宣伝文句に打ち消し線が引かれ、「長持ちする香りじゃない理由は、100%天然素材由来だから」、「目を引くパッケージじゃない理由は、再利用プラスチック包装だから」と、環境に配慮していることを強調しています。このようなブランドが、今後も支持を集めていくと考えられます。
ASEAN New Normalのキーとなる変化② キレイ意識の変化
続いて、衛生・健康に関する調査結果をみてみましょう。図表3は、今回の新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、各国で増加したと答えた防疫行動です。
図表3
インドネシアの調査では、「新型コロナウイルス流行後に購入したもので、あなたのお気に入りの写真をお送りください」という依頼に対し、消毒液やマスクといった防疫グッズや掃除道具、洗濯機や空気清浄機などの家電の写真が送られてきました。(図表4)
図表4
また、多くの人が、今後残りそうな防疫行動として、マスクの着用やこまめな手洗い、消毒液の使用、除菌洗剤の使用を挙げました。(図表5)
図表5
図表6は、各国の新型コロナウイルス拡大下における仕事形態の調査結果です。
図表6
次にコロナ収束後の働き方の変化を聞いたところ(図表7)、リモートワークが増えるだろうと考えている人は、ベトナムを除いて5割以上。ベトナムでは代わりに「時差出勤が増える」という回答が多く、「働き方は変わるが大きくは変わらない」という保守的な考えがありそうですが、多くの人にとってリモートワークは当たり前の働き方になりそうです。
図表7
外出が制限されたことで、ECの活用も進みました。新型コロナウイルスの流行の進んだ4月以降に新たにECで買ったものを聞いたところ、フードデリバリーや食材が上位に上がりました。(図表8)
日々の生活に必要なものをECで取り寄せるという行動が進んだことがわかります。
図表8
リモートワークの導入やECの活用によって移動距離が減ることで、逆に増えるのが時間です。増えた時間はどう使うのでしょうか。新型コロナウイルスの流行によって、どのような時間が増えたのかを聞いてみました。(図表9)
図表9
感染収束後には外に出ることへの制約がなくなる分、時間の過ごし方はさらに多様化すると考えられますが、移動距離を減らし、時間の使い方を変える、といった動きは進むでしょう。また、この期間の経験を通して、例えば料理にかける時間を増やす人もいるでしょう。
いま、ベトナムでは、若者を中心に自炊のムーブメントが生まれています。人気ニュースサイト「kenh14」では、「5万VND(約250円)で3人分の料理をつくれるか?」をテーマに、低コストのメニューを紹介しています。また、ノンオイルフライヤー調理器の売り上げが増加しています。
自炊文化のなかったインドネシアでも、この機に新たに調理家電や調理グッズを購入した人が多く見られました。
今回の調査では、この記事で紹介した以外にも、ASEAN3カ国の幅広い分野についての実態と変化、そして各国のサービスに見られてきている新たな動きを捉えています。
調査から見えてきたのは、各国の生活者が健康でいられることのありがたさを再認識し、身近な人を大切に思う心を持ち、精神面の充実を求めるようになった、という心の動きです。
そうした等身大の生活者に寄り添う企業姿勢やサービス、商品が、共感を呼び支持されていくのではないでしょうか。 今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査地域:アメリカ(全米)・タイ(グレーターバンコク)・ベトナム(ホーチミン、ハノイ)・インドネシア(ジャボデタベック)
対象者条件:20-49歳の男女、アメリカは世帯年収$40,000以上、ASEANはSEC(社会経済クラス) A,B
標本抽出方法:タイ、ベトナム、インドネシアはインテージのASIAN PANELより、アメリカはdataSpringのパネルより対象者を抽出し、アンケート配信
標本サイズ:n=836(アメリカ)n=824(タイ)n=838(ベトナム)n=829(インドネシア)調査実施時期: 2020/5/1~2020/5/7
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