【中国:地球の暮らし方】古くから伝わる暑さ対策の知恵
- 公開日:2021/06/30
- 更新日:2025/09/08
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伝統から引き継ぐひんやりする敷きパットとカバー
中国では国土面積が広いものの、国土の大半は温帯、暖温帯と亜熱帯にあるため、夏になると、気温が高くなり、30度を超す日々が続く場所も少なくない。特に南のほうでは暑さに加えて、湿度も高い。そのため、いかにして夏を快適に過ごすかについて、中国の生活者たちは古くからいろいろと対策をしてきた。その対策の一部は今でも引き継がれている。 中でも最も特徴的なのは草や竹で作った日本の茣蓙みたいな敷きパットを幅広く使用することだ。中国では冷房の普及はここ数十年のことだった。これ以前は夜、寝るときにより涼しくなるよう、ガマの葉で編んだうちわに草や竹で編んだベッドの敷きパットやまくらカバーがセットで使われていた。草や竹で編んだベッドの敷きパットと枕カバー
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。
ソファに敷いた敷きパットとカバー (出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
電器の配置とレイアウトの好み
前文では、以前の人はガマの葉で編んだうちわに草や竹で編んだベッドの敷きパットやまくらカバーをセットで使っていたと紹介したが、生活が豊かになることにつれて、うちわがだんだん天井に取り付ける扇風機や置き型の扇風機に取って代われ、やがてはエアコンに代替される。 ところが、このような変化によって課題も発生した。以前建てられた住宅では、エアコンをつけることが前提として考慮されていなかったのだ。これが原因で、結局コンセントが遠かったり、足りなかったりするとか、ホースを通すために壁に穴を開けないといけないとか、様々な課題が生じた。その結果、エアコンは付けたが、配線やホースの配置が合理的ではないことで外見が良くないということになってしまう。配線やホースが合理的ではない一例 (出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
年配の世代では、冷房はあまり普及していなかったので、扇風機やそれ以外の方法で風を取り入れる工夫をしないといけない。このような工夫は部屋のレイアウトにも表れる。中国では昔も今も、「穿堂風」(部屋を吹き通る風)があるレイアウトをより好む傾向がある。そのために、対面する両側に窓を設置し、すべての部屋のドアを開けば、自然の風が吹き通りやすくするようにレイアウトを設計している。風が吹き通るレイアウト (出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
こうして、中国の生活者たちは暑さを対処する方法について、今でも昔の暮らしからいろいろと知恵を借りて、今の生活をより快適にしているのだ。-
執筆者プロフィール
ヤン イェン
日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。夏は冷房付けっぱなしよりも、風が流れ込むように窓を開ける方法を好む。
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編集者プロフィール
辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)
Global Market Surferのサイトづくりを担当。家の近辺で4件の建設工事が始まり、しばらくはエアコン生活が続く。風が通る角部屋のマンションが好き。