<駐在員コラム>【インドネシア:地球の暮らし方】インドネシアのバスルーム事情
はじめに
インドネシアで文化の違いを感じる出来事の一つとして、間違いなくトイレがあげられるだろう。空港・モールなどのトイレはほとんどが洋式だが、便座と床が水浸しになっていることがあり、毎回トイレに入るたびに覚悟がいる。
なぜここまで水浸しになるのかと思うが、人々の生活習慣を知ると、少しずつ理解できるようになる。
弊社オフィスのトイレ内に設置されたお清め用の洗い場(社員撮影)
イスラム教には1日に5回のお祈りの習慣があり、その前にWuduというお清めを行う。お清めの方法は人によって個人差があるが、家庭のバスルームはこのお清めにも使用される。お清めには水道の蛇口から出る水が神聖で良いとされており、たらいに貯まった水は使用されない。オフィスなどのトイレにも洗面台の横に、お清め用の洗い場が設置されているケースもあり、顔や足を清めている人をよく見かける。
家庭のバスルームを見ながら、人々の生活習慣を紹介したい。
バスルーム
インドネシアの家庭では、トイレとシャワーブースが一体化したバスルームが一般的。Aクラスになると一家に2か所以上バスルームがある場合が多く、家族用・来客用・メイド用などと使用者に応じて使い分けており、寝室に最も近いバスルームを家族用として使われるケースが多い。
シャワーはお湯ではなく水を使うのが一般的。Aクラスになると給湯器が設置されるケースが増えるが、お湯が使用できても、高温多湿なインドネシアでは水を浴びることが気持ちよく感じるよう。
朝・夕にシャワーを浴びるケースが多いが、ここ最近はコロナウィルス感染拡大の影響を受け、帰宅したらバスルームに直行し、シャワーを浴びるという人も。シャワーを浴びる際、多くの人が必ず使うアイテムは、身体を洗うボディーシャンプー。一方髪の毛を洗う頻度は毎日派と2-3日に1回派に分かれる様子。
SEC(社会経済クラス) A バスルームの入り口に洗面台が設置されている
出典:インテージ生活者データベース Consumer Life Panorama
この家庭では、バスルームで使用するシャンプーやボディーソープは洗面台に並べられている。棚はなく、無造作に置かれているように見えるが、本人としては整理整頓されているという認識。A・Bクラスでは、家族それぞれが自分用のアイテムを所有するケースがみられるが、C・Dクラスでは、1つのアイテムを家族全員で共有されるケースがほとんど。
この家庭の場合、シャワーのあとに使用するスキンケアアイテムは、バスルーム内ではなく、寝室内の洗面台に置かれている。
出典:インテージ生活者データベース Consumer Life Panorama
C・Dクラスになると、シャワーがない家庭が増え、水溜に溜めた水で身体を洗う。
この家庭の場合、バスルーム内には家族が共有して使用している石鹸や歯磨き粉の他に、洗剤も置かれているが、これは洗濯機やキッチンにシンクがなく、バスルームで洗濯や食器洗いを行うためである。
キッチンの横にバスルームがあるため、導線的には不便はないようだが、壁の劣化やカビが目立ち、清潔な状態とは言い難い。
トイレ事情
一般家庭において、トイレットペーパーが使用されることは少ない。
インドネシアのトイレでよく見かけるのが、手動ホース。家庭内だけでなく、オフィスやモールのトイレの個室に設置されていることが多い。用を足した後には、ペーパーではなく、このホースを使って身体をキレイにする。水を使用せずにトイレットペーパーのみで済ませることが、かえって不潔に感じる人もいるようだ。家庭内にホースがない場合は、樽に入った水をバケツでくんで利用する。
では公衆トイレにあるトイレットペーパーは何に使うのか?と気になるが、便座や身体についた水を拭くために利用しているようだが、すぐに乾くので濡れたままでも気にしないという人もいるようだ。
このホースは水圧が強いので、家庭ではバスルームの床掃除にも活用されている。
SEC(社会経済クラス) D
出典:インテージ生活者データベース Consumer Life Panorama
C・Dクラスになると、和式便座の家庭が増える。和式便座の横には大きなたらいと手桶が置かれており、用を足した後は手桶の水で流す。インドネシアでは左手は不浄の手とされており、水を流すのは必ず左手で行う。自動洗浄機能などはなく、一定量の水が溜まったら流れる仕組みである。
洋式に比べて和式は汚れやすいが、汚れが気になる場合はたらいの水と洗剤を使用して掃除をする。
ジャカルタのハイパーマートの洗剤売場(社員撮影)
インドネシアの水は透明ではなく若干濁っているため、白い便器は汚れが目立ちやすい。店頭で見かけるトイレ用洗剤の多くが、漂白系の効果があるもの。その多くが青色のボトルで販売されており、トイレ専用のもの以外に、一本でトイレ・壁タイル・洗面台・床に使用されるものがある。
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執筆者プロフィール
芝崎 すみれ
インテージインドネシア シニアリサーチマネージャー3
インテージグループで約8年の国内リサーチ担当後、日本からのアウトバウンドリサーチとしての海外調査や海外現地法人の事業を統括する部門で勤務。これまでに担当した国数は、20カ国以上。2020年に念願の駐在員デビューを果たす予定だったが、コロナウィルスの影響を受けて延期に。約1年間、日本からのリモート駐在員としてインドネシアの調査を担当し、21年5月にようやくインドネシアに着任したばかり。 -
編集者プロフィール
チュウ フォンタット
- 2021/11/09
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