はじめに
インドネシアで文化の違いを感じる出来事の一つとして、間違いなくトイレがあげられるだろう。空港・モールなどのトイレはほとんどが洋式だが、便座と床が水浸しになっていることがあり、毎回トイレに入るたびに覚悟がいる。
なぜここまで水浸しになるのかと思うが、人々の生活習慣を知ると、少しずつ理解できるようになる。

弊社オフィスのトイレ内に設置されたお清め用の洗い場(社員撮影)
イスラム教には1日に5回のお祈りの習慣があり、その前にWuduというお清めを行う。お清めの方法は人によって個人差があるが、家庭のバスルームはこのお清めにも使用される。お清めには水道の蛇口から出る水が神聖で良いとされており、たらいに貯まった水は使用されない。オフィスなどのトイレにも洗面台の横に、お清め用の洗い場が設置されているケースもあり、顔や足を清めている人をよく見かける。
家庭のバスルームを見ながら、人々の生活習慣を紹介したい。
バスルーム

Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

インドネシアの家庭では、トイレとシャワーブースが一体化したバスルームが一般的。Aクラスになると一家に2か所以上バスルームがある場合が多く、家族用・来客用・メイド用などと使用者に応じて使い分けており、寝室に最も近いバスルームを家族用として使われるケースが多い。
シャワーはお湯ではなく水を使うのが一般的。Aクラスになると給湯器が設置されるケースが増えるが、お湯が使用できても、高温多湿なインドネシアでは水を浴びることが気持ちよく感じるよう。
朝・夕にシャワーを浴びるケースが多いが、ここ最近はコロナウィルス感染拡大の影響を受け、帰宅したらバスルームに直行し、シャワーを浴びるという人も。シャワーを浴びる際、多くの人が必ず使うアイテムは、身体を洗うボディーシャンプー。一方髪の毛を洗う頻度は毎日派と2-3日に1回派に分かれる様子。

この家庭では、バスルームで使用するシャンプーやボディーソープは洗面台に並べられている。棚はなく、無造作に置かれているように見えるが、本人としては整理整頓されているという認識。A・Bクラスでは、家族それぞれが自分用のアイテムを所有するケースがみられるが、C・Dクラスでは、1つのアイテムを家族全員で共有されるケースがほとんど。
この家庭の場合、シャワーのあとに使用するスキンケアアイテムは、バスルーム内ではなく、寝室内の洗面台に置かれている。

C・Dクラスになると、シャワーがない家庭が増え、水溜に溜めた水で身体を洗う。
この家庭の場合、バスルーム内には家族が共有して使用している石鹸や歯磨き粉の他に、洗剤も置かれているが、これは洗濯機やキッチンにシンクがなく、バスルームで洗濯や食器洗いを行うためである。
キッチンの横にバスルームがあるため、導線的には不便はないようだが、壁の劣化やカビが目立ち、清潔な状態とは言い難い。
トイレ事情

一般家庭において、トイレットペーパーが使用されることは少ない。
インドネシアのトイレでよく見かけるのが、手動ホース。家庭内だけでなく、オフィスやモールのトイレの個室に設置されていることが多い。用を足した後には、ペーパーではなく、このホースを使って身体をキレイにする。水を使用せずにトイレットペーパーのみで済ませることが、かえって不潔に感じる人もいるようだ。家庭内にホースがない場合は、樽に入った水をバケツでくんで利用する。
では公衆トイレにあるトイレットペーパーは何に使うのか?と気になるが、便座や身体についた水を拭くために利用しているようだが、すぐに乾くので濡れたままでも気にしないという人もいるようだ。
このホースは水圧が強いので、家庭ではバスルームの床掃除にも活用されている。

C・Dクラスになると、和式便座の家庭が増える。和式便座の横には大きなたらいと手桶が置かれており、用を足した後は手桶の水で流す。インドネシアでは左手は不浄の手とされており、水を流すのは必ず左手で行う。自動洗浄機能などはなく、一定量の水が溜まったら流れる仕組みである。
洋式に比べて和式は汚れやすいが、汚れが気になる場合はたらいの水と洗剤を使用して掃除をする。

ジャカルタのハイパーマートの洗剤売場(社員撮影)
インドネシアの水は透明ではなく若干濁っているため、白い便器は汚れが目立ちやすい。店頭で見かけるトイレ用洗剤の多くが、漂白系の効果があるもの。その多くが青色のボトルで販売されており、トイレ専用のもの以外に、一本でトイレ・壁タイル・洗面台・床に使用されるものがある。
最後に
バスルームは、家庭による違いがあるが、トイレ、シャワー、お清め、洗濯、食器洗いと様々な目的で利用されている。シャワーを頻繁に浴び、トイレの後に水で身体をキレイにするのは、高温多湿な気候に加え、身体を清潔に保つことへの意識の高さにもつながると考えられる。
コロナウィルスの感染拡大の影響により、人々の衛生に関する意識は高まりつつある。今後バスルームの使用方法がどのように変化していくのか、注目していきたい。