【中国:地球の暮らし方】中国人の衛生意識
- 公開日:2022/01/21
- 更新日:2025/09/09
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日本人の衛生意識が高いことは、世界的にも知られているが、実は今の中国でも衛生意識が浸透してきて、場合によっては、場合によっては日本人以上の衛生意識を持っているかもしれない。今回は、衣食住における中国生活者の衛生面での配慮と手の消毒についてご紹介する。
衣食住
前回(第十五回:【中国】ミレニアル世代の子育て事情)では子供が様々な菌になるべく触れることのない環境を作るために親たちは工夫をしているという話があった。そのために、衣に関しては子供専用の洗濯機を買い、食に関しては自炊にこだわる家庭が存在している。実は、子供だけでなく、大人でも、衣食住に関しては、高い衛生意識を持っている家庭も少なくない。
まずは衣から説明をする。前回(第十五回:【中国】ミレニアル世代の子育て事情)では大人が外で様々な菌やウイルスに触れるので、家に持ち込むと、子どもが触れて感染してしまうことになる。そのため、洗濯機を子供と別で用意する家庭もいれば、服を分けて洗濯する家庭もいる。さらに、消毒液に浸して、殺菌消毒をしてから洗濯機に入れて洗う家庭もいる。下図はConsumer Life Panoramaに登録された上海に住んでいる生活者の一例。この世帯はDettolというブランドの消毒液を使って、洗濯の前に、水で一定の比例で希釈して、服を浸して消毒をしている。
洗濯時に使う消毒液の一例 (出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。
子どもたちが様々な菌に触れない工夫は洗濯だけでなく、シャワーのときにも表れている。下図は上海の富裕層のバスルームである。御覧の通り、この世帯は2つのバスルームを持っている。左のシャワースペースは大人用で、右の小さいバスタブを設置しているバスルームは子供用。あえてわざわざ2つのバスルームを設置するのは、シャワーする場所で脱衣もするので、衣服に付着する菌などが子どもの健康に良くないという配慮があるからだそうだ。
大人用のバスルーム(左)と子供用のバスルーム(右)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
もう一例をあげよう。下図は中国の東北地方に住んでいる富裕層の洗剤と干し場の画像。東北は冬が寒いため、そこで生活している人たちは日本や中国南部みたいに毎日シャワーやお風呂に入る習慣がない。この方も同じだが、洗濯は毎日やることにこだわっている。しかも、服だけでなく、布団カバーやシーツも毎日洗っている。その理由を聞くと、これは夫の家庭から伝わってきた習慣で、そうしないと菌などが増殖する恐れがあるからだそうだ。そのため、抗菌洗剤を使って、服などを毎日洗い、干し場もいつも干し物でいっぱいになる。
抗菌洗剤(左)と干し場(右) (出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
また、食のほうも、かなり気を使っている。中国の場合、このようにキッチンの中のシンクが2個あるのが特徴的。ひとつがメインのもので、もうひとつは野菜などの水浸し用やお皿の水切り用などに使われている。中国の消費者は農薬の残留を気にするので、調理の前に野菜をたっぷりの水に浸してからおこなう習慣があるのだ。また、洗ったお皿や調理器具を、メインのシンクに邪魔せずにしっかりと水切りをするという用途もある。
シンク以外に、中国人が特有な習慣として、水を沸かして飲むということも挙げられるだろう。そのため、湯沸かし器や電器ケトルは中国の家庭にとって必要不可欠なものである。実はこの習慣が全国で普及したのが60年前からなのだ。それ以前の中国では生の水をそのまま飲む人が多かったそうだが、水質がよくないことで、結局お腹を壊したり、病気になったりする人がたくさんいた。そこで、すぐに水質を直接改善することが難しいので、政府は水を沸かして飲もうというスローガンを全国範囲で広げた。この影響もあって、今中国ではお湯を飲むことがもはや当たり前になっている。
中国のキッチンにあるシンク(左)と湯沸かし器(右)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
最後、住に関して、特に特徴的なのは掃除である。中国では掃除機やほうきを使ってほこりを掃除した後、モップや雑巾でフロア全体を一回拭く習慣がある。その時に、床の消毒という意味で、モップや雑巾をDettolの消毒液にひだしてから行う家庭もいる。
手の殺菌消毒
もちろん、衣食住だけでなく、普段の衛生習慣として、手洗いや手の消毒は毎日必要不可欠なものでもある。外から帰るときやご飯を食べる前に、現在の都市部の中国では手を洗うのが一般的な習慣として定着されてきている。また、子どもがいる家庭では、手や携帯等を消毒殺菌するために、ジェルやスプレーを購入する家庭もいる。さらにコロナの影響で、配達されて届くもの物にも消毒をするようになっている。
手や顔を拭く時、日本人はよくタオルを使うのだが、中国はタオル使わずに、代わりに使い捨てのティッシュを使う家庭も存在する。その理由を聞くと、タオルは何度も拭くので、菌が溜まりやすく、衛生面を考慮すると使い捨てのティッシュのほうがいいとのことだ。中国では、コットンからできている顔拭き用のティッシュも販売されているのだ。
殺菌用スプレイ(左)と手や顔拭き用のティッシュ(右)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama)
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執筆者プロフィール
ヤン イェン
日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。日本に来てから、顔拭きもタオルを使うようになった。
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編集者プロフィール
辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)
Global Market Surferのサイトづくりを担当。子供の時にミミズで遊んで体調不良になったことをきっかけに、きちんと手洗いすることが習慣化した。