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[China: World Residence Tour] Housing in southern China troubled by humidity

毎年のことながら梅雨の季節に入ると困るものだ。「止まない雨」「何を干しても乾かない」「じめじめして気分まで晴れない」といったことを思う人は少なくないだろう。実は中国でも地域によっては湿度が高く、同じような悩みを持つところもある。今回は、日本と同じような悩みを持つ上海と成都を事例に、Global Market SurferのデータとConsumer Life Panoramaに登録されている生活者のご家庭の情報を交えてながら、中国南部の住宅が抱える悩みをご紹介する。

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上海と成都の気候

東京と同じく、上海を代表とする中国の江南地区も毎年恒例のように梅雨の季節がある。大体6月から梅雨入りで1ヵ月近く続く。上海の梅雨の特徴は基本東京と大きく変わらないが、一点だけ挙げるとしたら、東京よりも高い湿度だ。

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上海及び東京の最高最低気温・降水量・降水日数・湿度
出典:Global Market Surfer

東京では例年6月から9月にかけて、湿度が70%超える時期になるが、それ以外の時期は50%~60%前後。また、上海でも、6月の湿度がほかの月より高くなるが、全体的に東京と比べてみたら、どの月も70%以上なので、東京よりも湿度が高い。

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成都及び東京の最高最低気温・降水量・降水日数・湿度
出典:Global Market Surfer

一方で、四川省の省都である成都は中国南西部の内陸に位置するため、梅雨の季節はない。それでも湿度を見てみたら、一年中80%前後で、東京はともかく、上海よりも10%近く高い。それは成都が四川盆地のど真ん中にあり、周りの山々に囲まれているからだ。湿気は乾燥空気よりも重いので、盆地に溜まりやすいそうだ。実は、筆者自身は江南地区生まれで、上海と成都でそれぞれ4年間住んだことがあり、湿気の高い日々に悩まされる経験もあった。

湿度が高い悩みとは

生活者にとって、湿度が高い悩みについて、今回は主に水回りの水気取りと物干しを挙げて説明したい。

まず水回りの水気取りについて特に課題を抱えているのがバスルームだ。中国南部の人はシャワーの頻度が北部より高い。そのうち、毎日シャワーをする人も少なくない。だが、毎日じめじめした日が続くと、水気が溜まり、カビも生えやすい。特に、中国のバスルームは日本と違って、シャワーと洗面台、トイレが同じ空間にあるパターンが多く、仕切りでさえないのもまだ多い。下図は成都の家庭のバスルーム。御覧の通り、シャワーをするたびに、洗面台やトイレ、その中に置いてあるものが全部びしょぬれになってしまうのだ。

さらに、日本の場合、シャワー室に換気扇を設置することが多いのに対し、中国ではまだ設置されていない家庭も多い。そのため、バスルームはなるべく窓付きにするということで、外の空気と交換できるようにする工夫をしなければならない。ただ、窓による換気はどうしても限界があり、特に雨の日が続くと、なかなか乾かないという悩みはあるのだ。

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シャワーと洗面台、トイレが同じ空間にある成都のバスルーム(左:CN_82, 右:CN_84)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
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また、こういったバスルームの構造は、さらに一つの課題を招く。それは家電の設置だ。しっかりとシャワースペースを仕切っていないバスルームでは、コンセントを下のほうに設置できないのだ。

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シャワーから遠く、壁の高いところにコンセントが設置されている成都のバスルーム(CN_74)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
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コロナ前、よく中国人に爆買いされる日本の家電の代表として、ウォシュレットが挙げられる。ところが、それはどの家庭にも入れられるものではない。経済的な理由もあれば、こういったバスルームの構造的な理由もあるのだ。そのため、意識が進んでいる家庭では、バスルームが狭くなっても、しっかりと仕切りを作って、乾湿分離にするという動きもある。

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しっかりと乾湿分離をしてから、ウォシュレットを導入する上海の家庭(CN_32)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
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また、物干しにも悩みがある。中国の家庭は日本と違って、浴室に浴室乾燥機が設置されていない。その場合、干し場の選択については極力日当たりがよく、風通しがいい場所にしている。それでも、干し場の湿度がやはり高めになる。

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干し場湿度の平均値と中央値、典型的な屋外干し場(CN_74)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
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上図はConsumer Life Panoramaに登録されている上海と成都の一部の世帯の干し場の湿度をまとめた図と典型的な屋外干し場の図である。屋内は湿度が高いので、風通しのいいベランダやベランダの外の空間を利用する家庭が多い。ところが、近年住宅の近代化が進み、マンション全体の外観をきれいにするために、屋外での物干しが禁止される物件も現れる。それに、特に上海では、住居面積が狭い家庭は干し場も限られている中で、結局干し場にする空間自体でも湿度が高いという事例もある。

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干し場湿度が72%の屋内干し場(CN_50)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
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干し場湿度が69%の屋内干し場(CN_62)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
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世界中を見渡しても、日本のバスルームはかなり知恵を凝らし作られていると考える。それはただ単にシャワースペース、洗面所とトイレを別々の空間に分けることではなく、それぞれのスペースのコンセントの設置、電器の選択と設置、動線の合理化等、多くの面において、海外生活者を驚かせる工夫があるのだ。これは日本の生活者にとって当たり前だが、海外生活者にとっては生活の幸福度と利便性向上にも役に立つ。日本のメーカーにとってそういった日本の知恵を正しく生活者に伝わるためには、第一歩として彼らが持っている悩みをしっかりと理解することがまず必要である。

【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、デジタルライフをご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。カスタマイズした調査によらず、手元で海外生活者の住環境を観察したいという場合においてご活用いただけるサービスです。
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  • Intage Inc

    Author profile
    Yang Yan

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。成都に住んでいたころ、服はベランダに干しても、いつも8割前後乾く生活に慣れている。

  • Intage Inc

    Editor profile
    Yusuke Tatsuda

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。湿度が高くなる季節が苦手。

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