【各国結婚と資産事情】タイ編:結婚するときの準備
第一回:【各国結婚と資産事情】インドネシア編:結婚するときの準備
第二回:【各国結婚と資産事情】フィリピン編:結婚するときの準備
第三回:【各国結婚と資産事情】中国編:結婚するときの準備
これまでタイ人の親族や知人の結婚式に参列する機会が度々あった。ラグジュアリーホテルで盛大に開かれる結婚式には、数百人規模のゲストが招かれ、華やかな雰囲気に包まれる。派手でゴージャスな結婚を好むタイの人達。結婚事情や結婚における必要な準備などについて、バンコクでオンラインショップを営むターンさん(39歳/女性/2児の母)の話を交えながら紹介する。
結婚と住宅について
「結婚というライフイベントに持っておきたい資産は?」という質問にまず挙げられたのが、「住む場所」。準備する方法は、家族や人によってさまざまだという。
ターンさんの場合、夫には両親から譲られた持ち家があり、結婚後はその持ち家で新生活をスタートした。タイの余裕がある家族では、土地や家といった資産を子どもたちそれぞれに1か所ずつ譲るというが、もちろん誰もが家を持っているわけではない。また、タイ北部・チェンマイ県に住むターンさんの弟(35歳)は、結婚するときに自分で住宅ローンを組んで一戸建てを購入したと語る。
(設問文)
Q7 以下の各ライフステージに向けて、あなたが持っておきたいものをそれぞれお選びください。
(1)学校を卒業し働き始めた時に持っておきたいもの
(2)結婚した時に持っておきたいもの
(3)第一子を迎える時に特に持っておきたいもの
(4)定年退職・リタイヤした時に持っておきたいもの
出典:インテー ジ自主企画調査(9か国ライフイベントと資産に関する調査)
URL:https://www.global-market-surfer.com/report/detail/152/
※調査概要は文末に記載しております。
新郎から送られる結納金は数百万バーツに及ぶ
新郎家族から新婦家族に贈られる結納金。以前、最近の日本では結納金を贈ることはない、とタイ人の知り合いに話したところとても驚かれたことがある。結納金は新婦の価値を表すものとされ、新婦家族に結納金を贈らない=新婦には価値がないかのように見られる可能性があるとか。
ターンさんも、結納金は今でも必須ですよ、と話す。
「結納金の金額は家族によりますが、百万~数百万バーツ(約370万~1,100万円)でしょうか。結婚式の前に双方の親族を招いた婚約式をするのですが、新郎側はそこに現金のほか、金塊や金のアクセサリー、あとは新居となる家やマンションの大きな写真を用意します」。
新郎新婦と家族の前に、現金や金塊などを並べてみんなで記念撮影が定番だという。新婦家族にとっては、自分の娘が経済力のある男性と一緒になることを示すことに意味があるとされている。新婦家族に渡される結納金の額は大金となり、新郎側の資産準備はなかなか大変そうだ。
ただ新婦家族によっては、新郎側から受け取る結納金を新郎新婦に贈ったりそっくりそのまま新郎に返したり、形式的なもので済む場合もあるという。ターンさんの弟も100万バーツ(約370万円)を用意して婚約式をした後、お金は返してもらったという。結納金を用意できない家族のために婚約式用の現金や金塊などの賃貸サービスもあるという。
「そうですね、新郎新婦家族の見栄のためです。お金がありますよ、と見せるためですから。でも、親は誰だって、大事な娘をお金がない男性に嫁がせたくはありません。お金があってこそ幸せになります」。
新郎新婦に幸せになってほしいという家族の気持ちの表れのようだ。
婚約式では、現金のほか金塊も用意される。また金のネックレスやブレスレットといったアクセサリーは、結婚のほか子どもの誕生といった機会に親族から贈られることが多い。
金塊・金のネックレスやブレスレットといったアクセサリーは、結婚のほか子どもの誕生など多くの機会で贈られる。
(設問文)
Q7 以下の各ライフステージに向けて、あなたが持っておきたいものをそれぞれお選びください。
(1)学校を卒業し働き始めた時に持っておきたいもの
(2)結婚した時に持っておきたいもの
(3)第一子を迎える時に特に持っておきたいもの
(4)定年退職・リタイヤした時に持っておきたいもの
出典:インテー ジ自主企画調査(9か国ライフイベントと資産に関する調査)
URL:https://www.global-market-surfer.com/report/detail/152/
※調査概要は文末に記載しております。
結婚=信頼関係が成立、ではない?タイの夫婦事情
タイでは婚姻届け(入籍)をしていない夫婦が多いと聞くが、ターンさんに伺ってみると、2人目の子ができたときに役所に届けをしており、婚姻届けのタイミングは結婚のタイミングと同時ではないと話す。
「結婚はしたい・・でも本当に信用していいのか分からない。いざ離婚となると、資産だけではなく結婚後に発生した相手の借金を負わされる可能性もありますからね、慎重になります。どこかに別の人がいる可能性だってありますよ。でも子どもができると、やっぱり籍を入れておいたほうがいいかな、と思って入れました」。
結婚=信頼関係が成立している、というわけではないらしい。相手方の家族が資産家の場合には、なかなか籍を入れてもらえない場合もあるという。
少子化が進むタイ
子どもを持つことへの関心度が、日本並みに低いタイ。
(設問文)
Q5次のライフイベントのうち、あなたが興味を持っているものを全てお選びください。
(1)結婚
(2)子供を持つ
(3)定年退職・リタイヤ
(4)あてはまるものはない
出典:インテー ジ自主企画調査(9か国ライフイベントと資産に関する調査)
URL:https://www.global-market-surfer.com/report/detail/152/
※調査概要は文末に記載しております。
ターンさん曰く、一般的に子育てをしながら生活をしていくことは大変なのだという。
「夫婦ともに会社員の友人は、家や車のローン、子どもの医療保険、学費に追われて貯金どころではないと話しています。最近は物価高ですし。子どもの教育は高望みしようと思えば切りがないでしょう。特にバンコクでは子どもにかけたい時間も、お金も相当かかります」。
そうなると子どもは持たず夫婦で仕事して、経済的にも精神的にも余裕のある暮らしがしたい、という気持ちになるのも分かる。
ライフプランはさまざまだが、タイの人にとって結婚は人生の中で最も晴れやかなステージのようだ。結婚のタイミングで購入する家や金などの資産は、これからの幸せを願う気持ちの表れと感じられた。
インテージのネットリサーチによる自主調査データ
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執筆者プロフィール
TNCライフスタイル・リサーチャー
株式会社TNCが運営する、世界70ヵ国100地域600名に住む日本人女性のネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」が、数字では見えてこないトレンドや、生活者の生声を切り出します。その生情報を元に、企業の課題解決のための提案や商品企画を行っています。 https://www.tenace.co.jp/
担当者プロフィール:タイ・バンコク在住16年。TNCライフスタイル・リサーチャーとして、タイの生活者トレンドや暮らしの変化をリサーチしています。タイの結婚事情、婚約式の裏側には驚きますが、新郎新婦の幸せを願う気持ちはタイでも同じと感じました。 -
編集者プロフィール
チュウ フォンタット
マレーシア人リサーチャーです。15年前から来日し、今も東京を拠点とし、東南アジアをはじめ海外のインサイトについて発信しています。
- 2022/08/26
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