ColumnColumn

【中国:地球の暮らし方】子供の成長を考慮した部屋作り

中国の親にとって、子どもの教育は一大事。子供が生まれてから、すべてが子供を中心する家庭が多い。中には、最初の習い事から将来の就職ないし結婚までかかわる親も少なくない。子供の食生活や洗濯に気を遣うことを以前ご紹介したが、実は部屋作りも子供の成長を配慮した家庭も一定数存在しているのだ。今回は、Consumer Life Panoramaに登録されている中国の生活者をご紹介しながら、この特徴についてご紹介したい。

将来のライフステージ変化を考慮した部屋購入

世界各国と比べて、結婚前後というタイミングでマイホームを持ちたいと考える割合が高いことが中華圏の特徴。2022年のインテージ自主企画調査(下図)によると、中国では、50%の人が結婚の時にマイホームを持ちたいと考えている。実は、マイホームだけでなく、マイカーも用意しておく世帯もかなり多いので、結婚の時に負担がかなり大きい。そのため、親にサポートを求めるのも一定数存在している。

自分が住むためのマンション、アパートを持ちたい割合

結婚時にマイホームを持っておく必要がある中国の家庭
出典:Intage知るギャラリー(「9か国のお金・資産の話~日本と海外の考え方の違いは?~」)

結婚したばかりとはいえ、マイホームを買うときには、すでに子どもの将来の成長といった要素を考慮して動いている世帯も存在するのだ。同調査によると、家を購入する際に、基本の条件以外に、周辺の環境に対するこだわりもある。特に、子どもの将来の成長を考慮して、中国では良い教育を受けられる学校の近くに住居を購入することを考える人が一定層いるのがみてとれる。

住宅購入時の重視点(3つまで)

住宅購入時に教育・保育もある程度重視する中国
出典:Intage知るギャラリー(「9か国のお金・資産の話~日本と海外の考え方の違いは?~」)

また、立地だけでなく、レイアウトを決めるときにも子どものことを考慮している。中国では、新築マンションを購入する家庭はスケルトンのままで引き渡されて、ゼロから内装する必要があるということを以前ご紹介した。実は、中古でも、リフォームやリノベーション工事をする世帯が少なくない。結婚前後に、マイホームを購入してリフォームやリノベーション工事をする際には、すでに子ども部屋のことを考慮してレイアウトをデザインする世帯も存在する。Consumer Life Panoramaに登録されている上海と成都の30世帯にアンケートした結果、83.3%が自宅購入の際に子ども部屋をどこに設けるか考えていた。

images

自宅購入の際に子ども部屋を設置することを考えた中国の家族(CN_54)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama)) 

Consumer Life Panoramaとは

世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。


本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

images

子どもの成長を考慮した部屋作り

子どもへの配慮はマイホームを購入するときだけじゃなく、普段の部屋作りの時にも反映されている。例えば、子どもがぶつかっても大けがしないために、いろんな角の部分を丸くすることを内装の時に配慮する家庭もある。以下の写真の成都の世帯は、ベビーベッドの近くの窓の縁にある出っ張った部分を丸くした。

images

窓の縁にある出っ張った部分を丸くした成都の家庭(CN_84)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama)) 

また、部屋にスペースがある場合、子どもの遊び場もきちんと内容に応じて分けるケースもある。以下の写真のは上海の家族で、静かに勉強するスペースと体を動かすスペースを別々にしている。子供部屋には勉強用のデスクと本棚を設置して、静かに本を読んだり、勉強したりするスペースに作られている。一方で、大きいおもちゃなどはリビングに置き、よりスペースのあるところで思う存分体を動かせることが目的だ。

images

静かに本を読む子供部屋(左)と体を動かすリビング(右)(CN_54)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama)) 

それ以外に、空間の利用も子どもの成長を見据えているのだ。子供が生まれたばかりの時には、親に手伝ってもらう必要があるため、主寝室以外に、一時的に両親用の部屋も設置している。一方で、子どもが少しでも大きくなったら、両親に実家に戻ってもらい、夫婦自身で子育てをするとこだわる世帯も存在する。上の世代が孫の世代の世話をすると、溺愛しやすいとよく言われている。両親が実家に戻ったら、その部屋は今後子供部屋に機能転換をする予定だそうだ。また、今は親のベッドの隣にベビーベッドを設置して、子どもと一緒に寝ているが、小学以降は独立な部屋で寝ることを見据えて、今のうち、子供用のシングルベッドを設置した世帯もいる。

images

両親用寝室から子供部屋へ機能転換する成都の世帯(左)と
子供部屋を事前に設置して置く上海の世帯(右)(左:CN_84, 右:CN_54)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama)) 



  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。不動産はライフステージによって買い替えるつもり。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。子供が冬に生まれたので電気カーペットを購入した。

転載・引用について
  • 本レポート・コラムの著作権は、株式会社インテージ または執筆者が所属する企業が保有します。下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。

    「出典: インテージ 調査レポート「(レポートタイトル)」(●年●月●日発行)」
    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
  • 禁止事項:
    • 内容の一部または全部の改変
    • 内容の一部または全部の販売・出版
    • 公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
    • 企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的とした転載・引用
  • その他注意点:
    • 本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
    • この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
  • 転載・引用についてのお問い合わせはこちら