【中国:地球の暮らし方】年収が同じでも、エリアの差が激しい生活環境
- 公開日:2021/10/26
- 更新日:2025/09/09
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中国経済が急成長している中、北京、上海などいわゆるTier-1都市の発展レベルが先進国並みになるとよく言われている。生活者にとって、高い給料をもらっている反面、住のコストもかなりの負担になる。一方で、地方都市では、給料がTier-1都市ほど高くない反面、住のコストもそれほど負担にならないメリットがある。今回は、同じSEC(社会経済クラス)が高い層でも、生活環境が都市によって違うことについて、実際にConsumer Life Panoramaに登録されている生活者を事例に、リビング・ダイニング、寝室と家具や家電の配置を中心に、ご紹介する。
ハルビンに住む世帯月収16,000元の家庭(Cn_92)
ハルビンは中国東北地方に位置する黒竜江省の省都。今回は地方都市の一例として、ハルビンに居住する世帯月収が16,000元(約270,000円)の家庭(Cn_92)の生活環境をご紹介する。
この家庭は夫婦と夫の母、子供4人で一緒に暮らしている。住宅は面積が105㎡の3LDK。この住宅は2019年に120万元(約2000万円)で購入された。この金額は上海の住宅からすると割安な価格だが、ハルビンでは100㎡以上の住宅が買える。
ハルビンに住む世帯のレイアウトと外観 (出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。
部屋の広さが100㎡もあるので、リビング・ダイニングはそれぞれ十分のスペースが確保されている。それに加え、部屋全体の内装もかなり工夫されていることが見て取れる。床には大理石が一面に貼られ、家具もモダンでおしゃれなものを使われている。
十分のスペースが確保されているリビング(左)とダイニング(右)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
この家庭には、2台の洗濯機も余裕に置ける。一台がドラム式でバルコニーに置かれ、もう一台がツインタブで浴室に置かれている。それだけでなく、部屋には趣味のグッズやアイテムを置くスペースもある。玄関に入って目立つところに、大きな金魚の水槽があり、主寝室には、いくつかの家具を置いた後でも、フィットネス用の機械が置いてある。
リビングにある金魚の水槽(左)と主寝室にあるフィットネス機械(右)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
上海に住む世帯月収20,000元の家庭(Cn_24)
上海と地方都市では物価水準が大きく違うので、同程度の月収を稼いでいた場合、購買力がかなり異なる。今回ご紹介する世帯月収が20,000元(約340,000円程度)の家庭は、夫婦と子供の3人暮らしで、52㎡の2DKに住んでいる。上海ではこの面積でも、ハルビンの100㎡の住宅の2、3倍の価格になることが多いだけでなく、築年数もハルビンの家庭より古い。
上海に住む世帯のレイアウトと外観
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
52㎡の住宅なので、全体的に狭くなる。ダイニングルームには冷蔵庫とダイニングテーブルを置いたあと、ソファを置くスペースがなくなる。ハルビンの住宅と比べて、テーブルのサイズが小さくなるだけでなく、省スペースのため角に置かれている。
ダイニングテーブルと冷蔵庫しか置けないダイニングルーム
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
また、夫婦が使う寝室は、寝室のサイズに合わせたオーダーメイドの家具で、スペースを十分活用することが意識されている。
スペース活用重視の寝室 (出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
まとめ
上記の2世帯を比較することで、同程度の世帯月収であっても、Tier-1都市と地方都市の暮らしがかなり異なることがうかがえるだろう。上海では、物価や生活のコストが高いので、地方都市より高い価格でも住める場所が狭い。それだけでなく、生活のペースも早く、競争も激しい中では、仕事と子育てだけでも精一杯だ。そのため、自分の趣味に使う時間も空間もなかなかない生活を送っている人が多くいる。一方で、ハルビンのような地方都市では、上海と同じ給料でも、実際の可処分所得が多いので、上海の家庭よりも広い空間で生活することが可能になる。生活のペースも速くなく、競争も上海と比べてそれほど激しくないので、自分の趣味に使う時間や空間もある。あなたなら、どの生活を選ぶのだろうか?
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執筆者プロフィール
ヤン イェン
日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。実家は地方都市なので、初めて東京に来たとき、住む空間の狭さには不慣れだった時期があった。
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編集者プロフィール
辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)
Global Market Surferのサイトづくりを担当。東京の狭い家に住んでいる(笑)