【中国:地球の暮らし方】空間と地域で違うエアコン選択
- 公開日:2021/05/28
- 更新日:2025/09/05
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床置き型エアコンも住宅に
日本では住宅用のエアコンと言ったら、ほとんどの場合は壁掛け型のエアコンのことを指す(一部の高級住宅にはカセット型エアコンもみられる)。床置き型のエアコンはどちらかといえば業務用のイメージがある。ところが、中国では、壁掛け型エアコンはもちろん、床置き型のエアコンも一般的な住宅用にも使われている。 壁掛け型のエアコンは幅広く使用されていて、寝室やリビング等に設置されている。一方で、床置き型は基本的にリビングに設置される。壁掛け型と比較して、床置き型は床の空間を占める一方で、構造上より水平方向に送風でき、一般的な壁掛け型エアコンよりも風量も大きいので、より早く室温を下げる効果がある。そのため、面積が広いリビングや、家族が一緒にリビングにいる時間が長い家庭では、床置き型を採用する事例もかなりある。 また、日本ともうひとつ違うところは、室外機の置き方だ。これについては、第4回でも説明した通り、日本では、基本的にベランダに設置することが多いが、中国では、どんなに高いマンションでも、外壁に設置することが多い。外壁につける室外機 (出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。
北と南でだいぶ異なるエアコン事情
中国は国土面積が広いため、北と南で気温差が大きい。そのため、地方によって、エアコンに対するニーズにも違いがある。 まず、北の方では、特に東北の場合、エアコンは南ほどまだ普及していない。でも、それは経済的な理由でエアコンが買えないわけではない。実は、中国の北部では、大体毎年の11月から集中暖房時期がある。その集中暖房というのは、政府が専門会社を通して、各家庭に設置した暖房パイプを利用して、集中的に熱供給をする仕組みになっている。そのため、冬になると外は寒いが、室温を基本的に16度以上維持できている。また、夏は相対的に涼しいという原因もあって、エアコンがそれほど普及していなかった。ただ、近年地球温暖化の影響で、東北地方でも夏が暑くなる年もでてきたため、徐々にエアコンを購入する家庭も増えている。 一方で、中国の華南地方では、特に広東省等嶺南地方と呼ばれる地域の場合、夏は蒸し暑いが、冬は逆にそれほど寒くない。そのため、このような地方では、冬はエアコンを使用しなくても我慢できるので、夏の蒸し暑さのために、冷房機能のみが付いたエアコンを採用するのが一般的。ただ、近年の異常天候の影響で、たまには広東省でも5度以下の時期も出てきているので、暖房付きのエアコンも買われるようになってきている兆しがある。 以上のように、中国では、地方によって、エアコンに対するニーズがかなり違うということがうかがえるだろう。ただし、近年だんだん増えてきている異常天候変化が今まで地域間の違いに新しい影響を与えることも最近の新しい変化だ。-
執筆者プロフィール
ヤン イェン
日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。今年の冬はかなり暖かいので、意外と暖房の利用率が高くなかった。
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編集者プロフィール
辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)
Global Market Surferのサイトづくりを担当。東南アジアの親は子供が寝る部屋にエアコンを設置することがよくあるが、自分の両親と話をして自分が生まれたことをきっかけに当時、両親がエアコンを初めて購入したことを最近知り、親心を感じた。