imagesColumn

【中国:地球の暮らし方】給湯器の普及と使用実態

冬が近づく。日に日に寒くなってくる中で、水道から出る温かいお湯は欠かせないものだ。そのため、今の中国家庭では給湯器は必要不可欠となってきている。そんな給湯器は、中国市場においてこれまでかなり進化してきて、種類も多様になってきている。今回はその給湯器の普及の経緯を振り返り、インテージが提供する海外生活者データベースConsumer Life Panoramaに登録されている生活者の給湯器の使用実態についてご紹介していきたい。

関連記事一覧

第1回:【中国:地球の暮らし方】中国人はおしゃべり好きなのに、独立型キッチンを好むのはなぜ?
第2回:【中国:地球の暮らし方】風呂場とトイレが意外と広くない中国家庭
第3回:【中国:地球の暮らし方】中国家庭のリビング使用実態は玄関と冷蔵庫からわかる!
第4回:【中国:地球の暮らし方】空間最大限利用のためのバルコニー活用術とは?
第5回:【中国:地球の暮らし方】配線の自由度が高い中国住宅
第6回:【中国:地球の暮らし方】自宅に置かれている小物から見る中国人のライフスタイル
第7回:【中国:地球の暮らし方】中国住宅の住環境と掃除事情
第8回:【中国:地球の暮らし方】空間と地域で違うエアコン選択
第9回:【中国:地球の暮らし方】プライバシーと収納の考え方
第10回:【中国:地球の暮らし方】洗濯機を浴室やランドリーエリアに設置する理由は?
第11回:【中国:地球の暮らし方】古くから伝わる暑さ対策の知恵
第12回:【中国:地球の暮らし方】年収が同じでも、エリアの差が激しい生活環境
第13回:【中国:地球の暮らし方】部屋から分かる高所得層の家電ブランドを探る
第14回:【中国:地球の暮らし方】「国潮」に影響された化粧品ブランドの選好
第15回:【中国:地球の暮らし方】ミレニアル世代の子育て事情
第16回:【中国:地球の暮らし方】中国人の衛生意識
第17回:【中国:地球の暮らし方】「顔値経済」に影響される男性の化粧品使用
第18回:【中国:地球の暮らし方】パンデミックによる伝統医療への再認識をチャンスに
第19回:【中国:地球の暮らし方】じめじめした日に悩みを抱える中国南部の住宅
第20回:【中国・ベトナム:地球の暮らし方】おいしい酸味の秘訣とは
第21回:【中国:地球の暮らし方】子供の成長を考慮した部屋作り
第22回:【中国:地球の暮らし方】 競争社会における早期教育の需要
第23回:【中国:地球の暮らし方】地域とキッチン
第24回:【中国:地球の暮らし方】中国消費者のデンタルケア事情
第25回:【中国:地球の暮らし方】急速に発展するEV市場
第26回:【中国:地球の暮らし方】室内空気質へのこだわり
第27回:【中国:地球の暮らし方】中国人は水よりお湯を好む理由
第28回:【中国:地球の暮らし方】給湯器の普及と使用実態
第29回:【中国:地球の暮らし方】 寝室から見るライフスタイルの変化

進化する中国家庭の給湯器

水道から温かいお湯が出るのは、今はごく当たり前なことだが、筆者が子供の頃(約30年前)を振り返ってみると、もともとはなかった。お湯で体を洗う時は、その都度お湯を沸かすか、魔法瓶に保存しておくかしか方法がなかった。それから少し時が経ち筆者が大きくなると、太陽熱温水器が中国全土で流行っていた時期があり、筆者の家もそれを導入した。

images

 昔の魔法瓶(左)と湯沸し器(右)(CN(D)_30)
 出典:Consumer Life Panorama
               Consumer Life Panoramaの概要はこちら

太陽熱温水器のメリットは主に2つある。①設置がしやすい(屋上に設置し、そこからホースを屋内にひけば、そこに蓄積された温めた水を使えるようになる)ことと、②光熱費の節約(曇りや雨の日でなければ、太陽光で水を温めてくれるので、電気代やガス代がかからない)である。一方で、デメリットも顕著だ。例えば、日が当たる日であれば何の問題もないが、日が当たらない日はお湯が出なかったり、出たとしても温かくなかったりといった問題がある。また、一回使える量が限られるので、大量にお湯を使いたいときには足りないことも時々ある。それ以外に、経年劣化の問題や、お湯の温度調節が難しいといった問題もある。
それが原因で、近年は太陽熱温水器を使う家庭が減り、その代わりに、電気給湯器かガス給湯器を使われるようになってきている。日本ではLPガスや都市ガスがすでに普及しているため基本的にガス給湯器が多いが、中国では多くの家庭は電気給湯器を選ぶ。

その原因の一つはインフラの整備にあると考えられる。電気は以前から導入されていたが、ガスは昔、ガスタンクを設置するしかなく、多くの家庭では1つしか設置できなかった。そのためその一つのタンクは調理用ガスコンロに使われることが多く、給湯器はガスを利用できなかった。その結果、ガス給湯器より電気給湯器がより一般的に使われているとされている。また、電気給湯器の中でも、速熱式とタンク式の2種類があるが、中国の家庭に使われているのはタンク式が多い。
タンク式の電気給湯器は、太陽熱温水器と同じように水を貯める必要があるので、容量が十分にないと、大人数で使ったりする場合にはお湯が足りないという問題が発生する。それに対して、近年ガスが普及するにつれて、使うときにすぐに加熱してくれるガス給湯器がだんだん普及してきている。

 タンク式電気給湯器(右)とガス給湯器(CN_94, CN_25)
 出典:Consumer Life Panorama
               Consumer Life Panoramaの概要はこちら

給湯器の設置と使用事情

給湯器の設置場所は用途に応じて異なる。タンク電気給湯器はまずシャワーのためのお湯供給なので、基本は浴室の天井に設置する。また、タンクはサイズが大きいので、空間の狭いキッチンには置くにはスペースが足りないというのも一つの理由として考えられる。一方、ガス給湯器は、シャワーにも使われるが、キッチンの調理用にも使用するので、キッチンに設置されることが多い。また、ガス給湯器自体はサイズが小さいので、キッチンにも置ける。さらに、浴室よりもより風通しのいいキッチンに置いたほうがガス漏れの心配がない。

給湯器の使用タイミングに関しては、一番多いのはやはりシャワーの時。日本は毎日湯舟につかる習慣があるが、中国ではシャワーのみであることが多い。また、南北の違いもある。南中国は冬でも夏でも毎日1回、夜にシャワーする家庭が多いが、北中国では数日に一回シャワーして、全身をきれいにしたいときには銭湯に行くという習慣がある。また、特に寒い日には、調理のシーンに、特に食器洗いにもお湯が使われている。

images

 浴室に設置される電気給湯器(左)とキッチンに設置されるガス給湯器(CN_92, CN_99)
 出典:Consumer Life Panorama
               Consumer Life Panoramaの概要はこちら

【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、生活行動動画をご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。海外生活者の理解を深めるのにご活用いただけるサービスです。
Consumer Life Panoramaデモサイト:http://consumer-life-panorama.com/demo/
Consumer Life Panoramaの概要はこちら:https://www.global-market-surfer.com/solution/


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン・イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。洗顔はお湯じゃないときれいに洗っていないと信じる。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    高浜 理沙

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。水切れがよくなるので、食器洗いにもお湯は必須だと感じている。

転載・引用について
  • 本レポート・コラムの著作権は、株式会社インテージ または執筆者が所属する企業が保有します。下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。

    「出典: インテージ 調査レポート「(レポートタイトル)」(●年●月●日発行)」
    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
  • 禁止事項:
    • 内容の一部または全部の改変
    • 内容の一部または全部の販売・出版
    • 公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
    • 企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的とした転載・引用
  • その他注意点:
    • 本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
    • この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
  • 転載・引用についてのお問い合わせはこちら