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[Global series: Cuisine and Housework] Thailand: What to do when cooking

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共働き家庭が多いタイ・バンコクでは、普段の食事は自宅で料理するほか、街中にあふれる屋台や食堂で食事を購入する中食や、外食を利用することも多い。また、家事や育児は夫婦で分担することが一般的であり、家族のために日々腕をふるう料理好き男性の話もよく聞く。夫婦で協力しつつ中食や外食も取り入れる、ゆるい雰囲気がタイらしい、バンコクの料理と家事事情を紹介していく。

新鮮な食材は市場で

タイ人の友人、ブアさん(40代女性)は、夫と子ども2人とバンコク都内の一軒家で暮らしている。オンライン販売の仕事をしているため、自宅にいることが多く、週に3~4日は夕食を作っているという。食材は子どもを車で幼稚園に送る朝に、幼稚園の近くにある市場で購入している。
「市場には、新鮮な食材が揃っています。魚や野菜は市場で買うと決めていて、夕食の献立を考えてその日に使う分だけを買います。肉は市場では不衛生な感じがします。例えば、ひき肉にする機械が汚いと聞いたことがあります。このため肉はスーパーマーケットで買います。冷凍保存もしますが、必要な分を買って使い切る方が新鮮で身体に良いと思うので、都度買いしています」とブアさんは話す。

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 バンコク都内の市場の様子

料理の頻度は週に半分くらい・タイ男性は料理上手

ブアさんの場合、朝食はパンや卵料理など簡単なものを用意する。夕食は、週に3~4回は自炊をし、それ以外の日は近所の屋台や食堂で食事をする。近所での簡単な外食は、4人家族で500バーツ(1900円)程度で、食材を買って作るのと変わらない。

子どもの幼稚園が長期休暇に入ると、市場からも足が遠のき、料理の頻度も減ると言う。毎日料理をしなければいけないというプレッシャーはなく、その日の気分で料理、外食、フードデリバリーを利用することもあるそうだ。「大事にしていることは、出来立てを食べることです。冷蔵庫の作り置きや買い置きの食事は美味しくないし、身体によくないと感じます」。

料理レシピの投稿・検索サイト「クックパッド」がGallup社と実施した、各国の料理実態調査によると、タイ人男性の料理頻度はアジア他国に比べて高いという結果が出た。1週間14食(昼食及び夕食)のうち、タイ人の既婚男性の料理頻度は週に7食で、日本やミャンマーの2.9食/週、カンボジアの3.2食/週よりも2倍以上高い数値となった。

一方、タイ人の既婚女性の料理頻度は週に7-7.6食で、他国の平均である9.5食/週に比べて低い結果に。なお、タイ人全般の自炊頻度は週に6.6食だった。

 情報サイトBangkok Biz Newsの2022年11月の記事より
https://www.bangkokbiznews.com/lifestyle/food/1040366

タイ南部出身のブアさんのお父さんも、外食より自宅での食事を好み、いつも料理をしてくれたと言う。お母さんが卵料理や炒め物など簡単なメニューを作るのに対し、お父さんは手の込んだタイカレーやスープを作るそうだ。タイ人の女友達に聞くと、一般的には母親が家族の食事を整える役割を担うが、男性が料理をすることに、違和感はないとのこと。最近は、料理好きな男性が多いとよく聞くし、男性の料理は自然なことと感じられている。バンコクの小学校に行くと、子どもを送迎する保護者の2~3割は父親か祖父と見受けられ、男性の家事や育児への参加は普通のことと感じられる。タイには、「料理男子」「イクメン」など、料理や育児を積極的にする男性を特別視するような言葉ない。

辛いタイ料理が定番

一日のうちでメインの食事となる夕食には、主食の白米に、おかずやスープを計2〜3種類ほど用意する。肉や魚、野菜を揚げたり炒めたりして調理することが多い。
ブアさんの家族は、ブアさんが作る「ガパオライス(バジル炒めご飯)」と「トムヤムクン(レモングラスが香るエビ入りスープ)」が大好きだという。タイ料理には辛い味付けが多いく、子どもたちは小学高学年くらいから、少しずつ辛い味に慣れていき、大人になるまでに激辛レベルに到達する。ブアさんの子どもたちは小さいため、辛いものを食べることができない。ガパオライスを作る場合には、まず子ども用に取り分けて辛味をつけずに調味し、残りを大人向けに唐辛子などを加えて辛くしている。

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 ブアさんのガパオ子ども用・大人用

著者のタイ人の夫も料理が大好きだ。週末などによく作る料理の一つが、タイ風豚バラの角煮「カイパロー」。パクチーの根とニンニク、白コショウを石臼で潰したペーストが味の決め手。タイ料理でお馴染みのパクチーは、葉よりも根が大事で風味付けに使われるため、市場では束ねた根だけが売られている。このペーストを炒め、パームシュガーを熱して香りを点てたところに、豚バラ肉を加える。肉とゆで卵、厚揚げを八角やシナモンと一緒に1時間ほど煮込んで完成。夫はYouTubeのレシピサイトで情報収集し、豚バラの代わりに豚足を買い込んで作ることも。男性は手の込んだ料理にのめり込みがちのようだ。

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 「カイパロー」の豚足バージョン

手軽に揚げ物ができるエアフライヤーが人気

自宅屋内のキッチンで料理をするブアさんだが、本当はもう一つ屋外にコンロが欲しいと言う。揚げ物でコンロが油まみれになり、掃除が大変だからというのが理由だ。タイでは、匂いや油はねが気になるガスコンロは屋外か半屋外に置かれることが多いが、バンコクではスペースの確保が難しい。
コロナ禍のタイでは、料理が自宅でのレクリエーションとしてブームとなった。当時、手軽に揚げ物ができる、と話題になったのが、エアフライヤーだ。自宅では作りにくい揚げ物料理、豚バラ肉の大きな塊をカリカリに揚げる「ムーグロープ」などを自宅で作れる、とネット上で盛り上がった。ブアさんも、コロナ禍にエアフライヤーを買いました、買ってよかったですよ、と話す。今でも、揚げ物や魚を焼いたりするのに活躍しているという。

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 ブアさん家のエアフライヤー

大皿にならぶ料理を家族で囲む

食事のときは、ご飯を各自の平皿に盛る。食卓の中央に、おかずが盛られた大皿が並び、銘々好きなおかずをご飯の上にのせて一緒に食べる。タイの人たちは、スプーンとフォークで食事をする。魚の骨やエビの尾も、スプーンとフォークで器用に外して食べ、手を使うことはあまりない。家族揃って食事を囲む家庭が多いが、バンコクの忙しい共働き家庭では、帰宅途中で外食、子どもたちだけで買ってきたもので済ますこともあるようだ。

食べ終わった食器は手洗いをする。夫婦どちらか手が空いている方がする。タイのキッチンの不思議は、二層式のシンクが多いことだ。ブアさんは昔、学校の授業で、食器を洗うときには盥を二つ用意して、一つの盥で洗剤を使い、もう一つの盥に移してすすぐ、と習ったとか。その名残と思われるが、実際には片方しか使っていないそうだ。

バンコクのタイ人女性たちは、経済的な理由のほか、社会的な立場のために、結婚後も仕事を続ける。両親が働くのを見て育っているため、結婚後、当然のように互いに助け合って家事を担う。忙しいタイの共働き家庭でも、普段の食事の支度を負担と捉えずに、好きな人が好きなものを作る、外食や中食を挟んで気楽にやる、というのが、タイ・スタイルのようだ。


  • TNCライフスタイル・リサーチャー

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    TNCライフスタイル・リサーチャー

    タイ人の夫と3人の子どもとバンコクに住んで16年。TNCライフスタイルリサーチャーのほか、日タイ翻訳の仕事をしています。辛いタイ料理にも慣れてきて、タイ人にとっての“やや辛い”は食べられるようになりました。

  • Intage Inc

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    チュウ フォンタット

    マレーシア人リサーチャーです。15年前から来日し、今も東京を拠点とし、東南アジアをはじめ海外のインサイトについて発信しています。


     

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