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<駐在員コラム>【アメリカ】US市場で日本の電気自動車に求められること

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アメリカ市場で日本車BEVに求められるのは、Affordable, Reliableな”日本車らしさ”。
5年後に訪れると予測されるBEV拡大期は、(出遅れた)日本車メーカーにとって最大・最後のチャンス。

(1)アメリカのEV市場の現状

筆者の居住しているロサンゼルスでは、カルフォルニア政府の積極的な施策のもとでBEV車の普及が進み、EVチャージャーが街の多くの場所に設置され、2022年には新車販売のうちBEVシェアが5%を超えました。
全米に先駆けて、BEV車の新車販売が拡大期へ移行していく段階が近づいていると感じています。

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 写真:ロサンゼルス近郊のショッピングモール内駐車場、Teslaチャージャー(20台並列)の様子(筆者撮影)

2022年度に、アメリカ最大の非営利消費者団体である「Consumer report」実施の全米調査の結果によると、71%のアメリカ人ドライバーは、次の購入車としてBEVを検討しており、アメリカの車購入周期を考えると、将来5年後にはBEV車の大きな需要期が訪れることが予測されます。

71%が次の購入車にBEVを検討

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  出典:Consumer Report, BEV National representative survey(January/February 2022) -Q6

一方で、EV市場の大きなトレンドの中で、日本車メーカー各社が出遅れている点も事実です。
2022年開催のLAモーターショーでは、アメリカ車メーカーを始め、欧州車メーカー、韓国車メーカーが新しいBEVモデルを発表し注目を集めたのに対して、日本車メーカーは、ハイブリッド/PHEV車が中心で、BEVの開発が遅れているのでは?という印象が強かった点は、ジャーナリストからも指摘されていました。

(2)日本車メーカーのチャンスは?

アメリカBEV市場でのアーリーアダプターの取り込みが遅れた日本車メーカーにとって、今から世界を驚かすようなイノベーション技術やハイエンドクラス車を志向しても勝ち目は薄い、と筆者は予測しています。

一方で、もともとガソリン車での大衆車・ミッドクラスに強みがある日本車メーカーにとっては、BEV車においても、これからアーリーマジョリティ市場に移行していき、消費者のニーズがより大衆車へと変化してくる5年後を見据えた今のタイミングが、BEV車のシェアを拡大する、最大・最後のチャンスであると考えます。

同じくConsumer Reportの調査結果から、アメリカ消費者の、BEV購入のペインポイントは「チャージー場所」「走行距離」「価格」であるとわかります。このうち「価格」について内訳をみると「車両価格」「メンテナンス価格」がTop2です。

あなたのBEV車の購入を妨げている要因は? 

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  出典:Consumer Report, BEV National representative survey(January/February 2022) -Q8

上で「コスト」と答えた方に、具体的にはどのポイント?

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BEVの普及が進むアメリカでも、まだ一般消費者にとっては「価格が手ごろ」「充分な走行距離があり」「メンテナンスに不安がない」BEV車がないことが、購入のネックになっていることが明らかです。
アメリカのマジョリティにとっては、現状のBEV車はまだまだ価格が高く「欲しいけど躊躇する」存在といえます。

一方で、これらのペインポイントは、ガソリン車市場では現在の日本車メーカーが強みとしている部分と重なります。
つまり日本車メーカーにとって、今後のBEV拡大期で、ガソリン車と同じようにBEV車でも「価格が手ごろで」「耐久性・品質に優れた」ミドルクラスのモデルを提供できれば、BEVシェアを獲得する大きなチャンスがある、と考えます。

現在アメリカで生活していると、以前に増してHyundai, KiaがBEV車の新モデルの広告を目にするようになり、実際に街でもKiaのBEV車を目にする機会が増えています。
日本車メーカーにとっては、次の拡大期で勝負するための時間はあまり残されていないのかもしれません。
まだ決定的なミドルクラスBEV車が存在しないなかで、ゲームチェンジ的な象徴となるBEVモデルを、いずれかの日本車メーカーが発表してくれると、期待を込めて注視しています。

(3)インテージUSAのLA自社ファシリティのご紹介

インテージUSA社では、昨今のアメリカにおけるBEV車の新モデル評価テスト調査(カークリニック調査など)の案件増加を背景に、2022年10月、アメリカ最大のBEVマーケットエリアであるロサンゼルスに、車両テストのために最適化した大規模調査会場として、自社保有ファシリティ「LA Product Studio」をオープンしました。
設備内には、5,000sqftの展示エリアに加え、車両展示用の照明設備、EVチャージャーも完備し、大規模な車両展示調査にも余裕で対応可能です。

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アメリカでのマーケティングリサーチ調査をお考えの際には、ぜひインテージ担当者へ問い合わせください。
自社保有施設紹介HP:https://laproductstudio.com/


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    砂塚 雅司(すなずか まさし)

    アメリカ・ロサンゼルス在住。インテージUSA社Automotiveリサーチチーム責任者。
    日本・アメリカ両国でのリサーチ経験を踏まえ、本人の視点からみたアメリカの今のリアルな情報を発信しています。

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