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【アメリカ:地球の暮らし方】自立意識の強いアメリカ流育児

子育ての仕方は国によってかなり異なる。同じアジアの日本、中国、韓国でも文化の違いでそれぞれの特徴を持っている。ましてや太平洋をまたがるアメリカは、多種多様な文化が交わり、独自の育児の仕方が形成されている。今回はConsumer Life Panoramaに登録されているアメリカの生活者を中心に、アメリカ流育児の特徴について解説していきたい。

何よりも自立意識を重視する

国民性の日米間の大きな違いについて、よく日本は協調性を重視するのに対して、アメリカは「個」を重視すると言われている。このような違いは学校教育だけではなく、家庭教育にも表れている。よく言われるのが、アメリカの家庭では、自立意識を育てるために、小さいころから子どもに意見を聞いたり、責めるのではなくほめることが多かったりするということだ。


実は、このような自立意識を育てることは、子どもがまだ赤ちゃんの頃から既に始まっているのだ。日本では、赤ちゃんのベビーベッドはパパママの寝室と同じ部屋に置くことが一般的だ。一方で、アメリカは日本と異なり、子供が1か月の時から自分の部屋が与えられることもある。それは、早い段階から自分一人で寝ることに慣れさせるのが目的だそうだ。そのために、子どもが生まれる前から部屋を用意してあることも特別なケースではない。


さらに、赤ちゃんは夜によく夜泣きをするが、泣いた時にすぐに対応する日本のパパママと違って、アメリカ流の子育てはすぐには駆けつけずに様子を見る。すると、泣き疲れて自力で寝ていくことを覚えるという。とはいえ、もちろん完全に放っておくのではなく、赤ちゃんの部屋にベビーモニターを設置する家庭も多い。随時赤ちゃんの様子を確認できるように事前準備をきちんとして、何かある時には、駆け付けられるようにしている。この違いには、アメリカの住宅は日本より総じて面積が広いため、日本のように「ご近所迷惑」を心配しなくてもよいという事情もあるかもしれない。

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赤ちゃんの部屋と部屋に着けているベビーモニター(US_29
出典:Consumer Life Panorama 
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自分の時間も重視する育児の仕方

先ほど、アメリカの家庭では、子どもが小さいごろから個人の部屋を用意することについて説明したが、実はその理由は子供の自立意識の形成を促すだけではなく、良好な夫婦関係を保つという目的もある。よく子供を持つ夫婦の悩みごととして、子育てをめぐってもめることが多いと言われる。それは、子どもを持つと自然に生活の中心が子どもになり、夫婦2人で過ごす時間が疎かになることも多いからだ。アメリカでは、子どもが生まれてからも、自分や夫婦の時間が大事だという認識を持つ世帯が多いらしい。


とはいえ、共働き世帯が多い一方で、産休育休が短いアメリカでは、育児しながら自分の時間を作るのは容易ではない。そのため、以下の2つの面から工夫をしている家庭も存在している。


まず、経済的に余裕を持つ家庭では、ベビーシッター・ナニー(家政婦)を雇う。日本でベビーシッターや家政婦を雇う感覚とは違って、アメリカではナニーがより一般的なサービスとして利用されている。依頼の内容は、子どもの世話だけというケースもあれば、掃除などの家事のために依頼するケースもある。また、良好な夫婦関係を維持するために時々夫婦2人でのデートをする際にナニーに子供の世話を依頼する家庭もいるのだ。


もうひとつの方法は、近所の知り合いにお願いすることだ。実は、アメリカ人の多くは引っ越しの際にネイバーフッドのことをかなり重視する。それは、子どもに安心安全な環境を作るという目的だけではなく、仲のいいご近所さんと、急用のときに子どもを少しの間見ていてもらったり、芝刈りを手伝ってもらったりと、良好なGive and takeの関係を築くという目的もあるのだ。

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住み込みの家政婦(ナニー)の部屋(左)と家事をしている家政婦(右)(US_59
住み込みのナニーを雇うのは裕福な家庭に限られるが、パートタイムのナニーを依頼するのは日本よりも一般的。
出典:Consumer Life Panorama 
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このように、アメリカでは、子どもは親からは独立した個人として捉えるのが一般的で、そのために、小さい頃から自立意識を育てるために、個別の部屋を早い段階で用意している。また、それと同じ意味で、親も自分がずっと子供のために時間を使うのではなく、自分自身の時間も重視し、そのために先ほど挙げたような方法で子どもから離れる時間を作っている。いずれにしても、そこには「個」を重視するという価値観が根底にありそうである。

Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、生活行動動画をご覧頂くことができます。


本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。海外生活者の理解を深めるのにご活用いただけるサービスです。


Consumer Life Panoramaデモサイト:http://consumer-life-panorama.com/demo/
Consumer Life Panoramaの概要はこちら:https://www.global-market-surfer.com/solution/
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  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。アメリカの子育てを見ると、中国親の育児スタイルはやや過保護気味な気がする。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    高浜 理沙(たかはま りさ)

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。わが子が0歳の頃、夜中に泣いてもすぐには対応しないアメリカ式子育てを実践しようと試みたものの、同室で寝ていたため自分の睡眠を優先してしまい断念し、アメリカ式子育てには広い家が不可欠と実感。

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