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【アジア各国のZ世代】ベトナム編:Z世代女性に人気な飲料 ~日本発祥との融合~

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①今ベトナムの若者の間で人気を集めている飲み物とは?

2024年時点で人口が1億人に達し、東南アジアの中でも勢いのある国として注目されているベトナム。コーヒーや蓮茶はベトナムを代表する飲み物として知られているが、実際にベトナムのZ世代はどんな目的や理由で飲み物を選んでいるのだろうか。そして今、若者の間で最も人気のある飲み物が、実は日本発祥の〇〇と東南アジアならではの飲み物を組み合わせたものだということをご存じだろうか。今回は、現地のリアルなトレンドを踏まえながら紹介していく。

②ベトナムのZ世代を中心に高まる日本酒人気

Intageが保有する生活者データベースGlobal Viewerによると、ベトナムのZ世代女性が飲み物を選ぶ際に「製造地」や「天然素材」であるかを重視する割合が高い。特定の飲料に限らず、紅茶やハーブティー、牛乳、ワインなどのアルコール類を含め、ほとんどの飲料を選ぶ際の決め手として重要視されている。例えば、野菜飲料では「製造地」を重視する割合が26.7%、「天然素材」であることを重視する割合が54.0%と、東南アジアの他国と比べても高い傾向がみられる。

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H701.購入時重要点:飲料カテゴリー(出典:インテージGlobal Viewer(2024年))

ベトナムのZ世代女性が飲み物を選ぶ際に「製造地」や「天然素材」を重視する背景には、いくつかの要因が考えられる。近隣国である中国産の偽物や低品質な製品が市場に出回る中で、消費者はより慎重になっている。
現在も中国から輸入される製品の中には、品質が保証されていないものや偽物が含まれている場合がある。
そのため、情報に敏感なZ世代は、SNSやインターネットを通じて他の消費者のレビューや評価を参考にする傾向が強い。信用できるアカウントから発信される情報を基に、製造地が明確で信頼できるブランドの製品を選ぶことが、安心感を得るための重要な手段となっている。

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次に、健康志向の高まりも影響している。Z世代は健康に対する意識が非常に高く、添加物や化学成分を避ける傾向がある。天然素材を使用した飲み物は健康に良いとされるため、選ばれることが多い。
実際にベトナムの若者に話を聞いたところ、市場や路上で販売されている飲み物を避ける傾向があるという。理由としては、「安価なため品質や衛生面に不安がある」「どこで作られたものかわからない」といった点が挙げられた。製造地が不明確で品質に疑念を抱くことが、購入を控える要因になっている。
ベトナムでは至るところにカフェがあり、近年では若者向けのおしゃれなカフェも増加している。そのため、写真映えせず、かつ原材料が不明瞭な市場や路上の飲み物を購入するケースは今後さらに減少していくだろう。

アルコール類でもソフトドリンク同様に「製造地」を重視すると回答。アルコール類で日本酒は特に多く、他の東南アジアと比べて44.2%と圧倒的に差をつける結果となっている(Global Viewerデータより)。

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購入時重要点:飲料カテゴリー(出典:インテージGlobal Viewer(2024年))

ベトナムのZ世代に日本酒の人気が高まっている理由はいくつか考えられる。ここ数年、ベトナムでは「おまかせ鮨」のブームが見られ、高級寿司店での日本酒とのペアリングが注目されている。日本酒は、その多様な風味と料理との相性の良さから、特別な食体験を提供する飲み物として評価されている。実際、日本酒の消費量は2015年の12万リットルから、2020年には20万リットル以上に増加している*1。

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飲料カテゴリーの中でも「日本酒」は特に製造地が重視されており、おまかせ鮨の店に行く際は、日本人シェフがいるかどうかや、日本酒が本物かどうかを確認するケースもある。
また、日本酒は適量であれば健康に良いという印象が持たれており、低アルコールの日本酒が好まれる傾向がある。女性の場合、甘くて飲みやすい日本の梅酒を好むZ世代のベトナム人女性が増えている。
そんな梅酒の中でも、奈良県の梅乃宿の「あらごし梅酒」は、ベトナム国内で梅酒を取り扱う店で多く見かける。梅の香りと優しい甘さが特徴で、ベトナム人女性に人気のブランドとなっている。


また、日本酒の人気が高まっている背景には、SNSの影響もある。美しい日本酒の瓶や、料理とのペアリングを楽しむ様子がSNSでシェアされることで、視覚的な魅力が日本酒の人気をさらに押し上げていると考えられる。
さらに、ベトナムの経済成長に伴い、若者たちの可処分所得が増加し、高級な飲食体験を楽しむ余裕が生まれた。これにより、日本酒を楽しむ機会が増え、特に高級店での体験が人気を集めている。

③今もっとも人気があるのは日本の抹茶との組み合わせ

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以前からベトナムでも抹茶を使った飲み物はカフェで販売されていたが、ドリンクの種類のひとつに過ぎず、特別に注目されることはなかった。しかし、2024年後半から抹茶を使ったドリンクがベトナムのZ世代の間で人気を集めている。
このブームのきっかけは、隣国タイでの流行だった。現在ではベトナムの若者にも広く受け入れられ、抹茶ドリンクは鮮やかな緑色や美しい盛り付けがSNS映えすることから、特にInstagramやTikTokなどのプラットフォームで話題になっている。こうした視覚的な魅力が、多くの若者に「試してみたい」と思わせる要因となっている。
また、抹茶の多様な味のバリエーションも人気の理由のひとつ。甘さと苦味のバランスが良く、さまざまなフレーバーと組み合わせやすいため、アレンジの幅が広い。例えば、抹茶とミルク、フルーツ、さらにはスパイスを組み合わせた新しいドリンクが次々と登場し、消費者の好奇心を刺激している。

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特に2024年後半から、ベトナムのZ世代で最も人気があるのは「抹茶×ココナッツジュース」だ。東南アジアではお馴染みのココナッツジュースの澄んだ白と、泡立つ鮮やかな緑の抹茶のコントラストが映えることから、今注目のドリンクとしてベトナムのトレンドサイトでも取り上げられている。
実際に飲んでみると、ココナッツジュースのすっきりとした甘さと、クリーム状になった抹茶特有の深みが合わさり、見た目だけでなく味の良さも流行の理由のひとつとなっている。

健康意識が高いベトナムでは、抹茶は健康に良い飲み物として広く認知されている。抹茶には抗酸化物質、特にカテキンが豊富に含まれており、老化防止やがん予防に役立つとされている。さらに、ストレスを軽減し、集中力を高める効果があるL-テアニンも含まれているほか、血糖値の調整や減量をサポートする働きもある。そのため、ベトナムでは「健康的な飲み物」として受け入れられ、甘いドリンクでも罪悪感なく楽しめる点が人気の理由になっている。
かつてのベトナムでは、カフェで提供される抹茶は安価で低品質なものが多かった。しかし近年では、日本から取り寄せた本物の抹茶を使用する店が増えており、味や品質の面でも安心して楽しめるようになった。

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ベトナム全土に展開するカフェチェーンPhê Laでも、2024年後半頃から抹茶ココナッツドリンクの販売が開始された。このカフェでは、ウーロン茶などの茶葉を使用したミルクティーをはじめ、コーヒーには厳選されたベトナム産のコーヒー豆を使用。伝統的なベトナムコーヒーからモダンなアレンジまで、多彩なメニューが揃っている。

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洗練された内装もおしゃれで、Z世代に人気のカフェとなっている。どの店舗も常に満席に近い盛況ぶりで、今後のさらなる展開が期待される。

(MATCHA COCO LATTE:60,000ドン)

ベトナム南部のベンチェー(Ben Tre)産のココナッツミルクをベースに、ウーロン茶と抹茶をブレンドしたオリジナルの抹茶クリームは、なめらかで口当たりがよく仕上がっている。

最近では本格的な抹茶を提供する店も増えており、今後も抹茶を取り入れた店舗が増えることが予想される。これらの要因が相まって、抹茶を使ったドリンクはベトナムのZ世代にとって人気の選択肢となっており、今後もそのトレンドは続くと考えられる。

④おわりに

現在も、昔と同様に低価格の路上カフェは好まれているが、経済の発展とともに、Z世代の間でも飲み物へのこだわりが重視されつつあると感じられる。日本酒をペアリングとして取り入れ、特別感を演出する流れもその一例だ。
また、抹茶をそのまま楽しむのではなく、ラテやココナッツジュースと組み合わせるなど、アレンジを加えた新しい飲み方が人気を集めている。こうした新しい飲み物や楽しみ方の提供が、Z世代のベトナム人に受け入れられているようだ。
時代の移り変わりに少し寂しさを感じるが、今後どのような飲み物がベトナムで受け入れられていくのか関心が高まった。

    1 https://www.jetro.go.jp/view_interface.php?blockId=36038857

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  • TNCライフスタイル・リサーチャー

    執筆者プロフィール
    TNCライフスタイル・リサーチャー

    ベトナム在住歴15年。旅行や生活情報などベトナム情報を発信している子育て主婦。ベトナムの好きな飲み物はカフェスーダー(練乳入りベトナムコーヒー)

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。Global Market Surferのサイト作りを担当。

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