【アジア各国のZ世代】健康と環境意識の高いベトナムZ世代~注目されている「ヴィーガンコスメ」~
①ベトナムで人気のヴィーガンコスメ事情
「美」と「健康」への意識が高いベトナムの若い女性たちの間で、今最も注目されているのがヴィーガンコスメだ。ヴィーガンコスメとは、動物由来の成分を一切使用せず、動物実験も行っていない化粧品のこと。
ベトナム国内ブランドから海外ブランドまで幅広く流通しており、今後も若い世代を中心にさらに広がっていくことは間違いない。今回は、ベトナムで人気のヴィーガンコスメブランドと、その魅力について掘り下げる。また、ベトナムの若者がなぜヴィーガンコスメを選ぶのか、美容業界におけるリアルなトレンドとともに紹介していく。
②2025年のベトナム化粧品トレンドは「ヴィーガンコスメ」
インテージが保有する生活者データベースGlobal Viewerによると、51%のベトナムZ世代女が化粧品を選ぶ際に「化粧品購入時、成分や効果効能をよく調べる」。これは東南アジアを含めデータベースが保有する10カ国の中で最も高い結果となっている。
C13S4.美容に関する考えた方・価値観TOP1(出典:インテージGlobal Viewer(2024年))
ベトナムのZ世代の女性たちは、ブランドよりも成分や効果を重視する傾向が顕著に出ている。化粧品を購入する前に、SNSやオンラインレビューを通じて、製品の成分を徹底的に調べることが一般的になっている。肌に優しい自然由来の成分や効果が期待できる成分に注目し、有害な成分は避ける傾向が強い。
この背景には、ベトナムでは特にネット通販で偽物が出回ることが少なくないという事情がある。そうした経験から、購入時にはより慎重になる傾向があると考えられる。
ヴィーガンコスメがトレンドになっているだけでなく、環境問題や倫理的な考えを持つベトナム人女性たちのライフスタイルの表れでもある。ヴィーガン製品は、動物由来の成分を一切使用せず、動物実験も行っていないことが確認されている。これは、単に製品の効果だけでなく、倫理的価値観や社会的責任(環境問題など)を重視する新世代の消費者のニーズを満たしている。
2024年6月に発表されたPRO Vietnamと市場調査会社TGM Researchによる共同研究*1「ベトナムにおける廃棄物源泉分別に関するオンライン研究プログラム」によると、ホーチミン市やハノイなどの大都市圏では、環境問題への意識が高い層を中心にヴィーガン製品への関心が高まっていると報告されている。
しかしながら、ベトナム全体で見ると、若者の環境問題への意識はまだ低い水準にあるとされる。その一方で、環境問題に関心を持つ若者たちは、ヴィーガン製品の選択やコミュニティ形成といった形で積極的に行動を起こしている。
1 https://tgmresearch.vn/tgm-pro-vietnam-bao-cao-phan-loai-rac-tai-nguon.html
興味深いのは、ヴィーガン製品が単に「エシカル」な選択肢ではなく、「おしゃれ」や「トレンド」としても若者に受け入れられている点だ。当初は流行として取り入れていたとしても、それが環境問題への意識を高めるきっかけになる可能性がある。
企業は、ヴィーガン製品を「倫理的な製品」としてだけでなく、「スタイリッシュで魅力的な商品」としてもアピールすることで、より幅広い層の若者にリーチできる。ヴィーガン製品の普及は、動物愛護や環境保護に貢献するだけでなく、若者の意識改革を促す可能性も秘めている。
企業がファッション性と倫理性を両立させた製品開発やマーケティング戦略を展開することで、ヴィーガン製品への関心を高め、持続可能な社会の実現に貢献できるのではないか。
効果や効能についても、単に「保湿」や「美白」といったキーワードだけでなく、具体的な使用感や実際の効果に関する情報を収集する傾向がある。そのため、ベトナムの化粧品市場では、成分や効果効能を明確に表示するヴィーガンコスメ製品が人気を集めている。
また、米国のヘルス&ビューティー業界で10年以上の経験を持つ BERA Group のCMO Diep Nguyen 氏は、ベトナムのニュースサイト「Tai Chinh & Thuong Hieu」のインタビュー*2で、2025年の化粧品トレンドは、自然で安全かつ環境に優しい成分を使用したヴィーガンコスメが注目されると語っている。
他の美容トレンド記事でも、2025年にはナチュラルコスメやヴィーガンコスメが流行すると予測されており、今年は間違いなくベトナムで広がるコスメトレンドとなるだろう。
2 https://taichinhthuonghieu.com/xu-huong-my-pham-2025-theo-nhan-dinh-cua-cmo-diep-nguyen-bid558.html
② ベトナム国内で生産されているものに限らず、海外製品も人気
ベトナムのZ世代は、ヴィーガンコスメを選ぶ際に特に国内ブランドにこだわらない。成分や効果が自分に合うかどうかを重視する傾向がある。
ベトナムでは、ハノイ市やホーチミン市などの主要都市を中心に輸入化粧品が多く販売されており、若者たちは海外製品の情報を素早くキャッチする。特に、長年人気のある海外の有名ブランドは信用度が高いため、選ばれやすい傾向にある。
アルコール不使用の化粧水をはじめ、自然由来の原材料を使用したヴィーガンフェイスマスク、洗顔料、クレンジングなど、誰もが楽しめるヴィーガンスキンケアを豊富に取り揃えるLUSH。100%ベジタリアン対応のブランドだが、ヴィーガン対応の商品も多く展開している。
2023年6月にホーチミン市でベトナム初上陸。2025年2月現在、ハノイ市とホーチミン市に5店舗を展開し、ベトナムのZ世代の心をつかんでいる。
全製品がヴィーガン認証を受けているイギリスのヴィーガンコスメブランドBODY SHOPは、ベトナムの主要都市にあるショッピングモールの至るところに店舗を構えるほど広く展開している。
生活者データベースGlobal Viewerのデータによると、特に欧米の化粧品ブランドが「品質が良い(50.3%)」「信頼できる(41.5%)」と、Z世代のベトナム人女性から高く評価されており、日本の化粧品ブランドをやや上回る結果となる。
現在、日本のナチュラルコスメやヴィーガンコスメで、特にベトナムで広く認知されているブランドはない。しかし、今後、日本のナチュラルコスメやヴィーガンコスメの市場進出が進むことを期待したい。
C14S4.各国化粧品ブランドのイメージ(出典:インテージGlobal Viewer(2024年))
③ 日本にも進出したブランドも!ベトナムのヴィーガンコスメ注目ブランドTOP3
ベトナムで注目度が高まるヴィーガンコスメだが、近年ではベトナム発のヴィーガンコスメブランドも人気を集めている。その中でも、特に注目のベトナムのヴィーガンコスメブランドを紹介する。
ベトナム産ヴィーガンコスメブランドの中でも最も有名なのがCocoon Vietnam(コクーン ベトナム)。ベトナムの豊かな大地で育まれた植物の力を活かし、高品質な製品を提供している。その卓越した品質は国内外で高く評価され、2024年の「ELLE BEAUTY AWARDS」では「ベストスキンケア製品」「ベストナチュラルブランド」「ベストイノベーション」の3部門を受賞した*3。
3 http://doisongvanhoa.com/tin-tuc/giai-thuong-elle-beauty-awards-2024-15086.html
地元ベトナム産の植物由来成分を活用した製品を、4つのカテゴリーで製品を展開している。
ターメリック美容液
22%という高濃度のビタミンC誘導体と、古来より健康や美容に重宝されてきたターメリックを配合。相乗効果で、肌本来の輝きを引き出す美容液。ビタミンC誘導体は、メラニンの生成を抑制し、肌のトーンを明るくする効果が期待される。さらに、抗酸化作用に優れたターメリックは、肌の老化を防ぎ、健やかな状態を保つ。
ダクラク省ベトナムコーヒーシリーズ
ベトナム中部のダクラク地方は、香り高いコーヒー豆の産地として知られている。そのダクラク産コーヒー豆を贅沢に使用したスクラブ。コーヒー豆に含まれる天然のカフェインには、リラックス効果だけでなく、血行促進効果も期待できる。コーヒー豆の粒子が古い角質を優しく取り除き、つるつるとなめらかな肌へと導く。さらに、敏感肌にも優しい処方で、幅広い肌タイプに対応している。
ウィンターメロンスキンケア
冬瓜を使ったスキンケアシリーズ。2024年ELLE BEAUTY AWARDSで最優秀スキンクレンジング製品賞を受賞。カボチャエキス、ペニーワート、ティーツリーオイルを配合しており、脂性肌やニキビができやすい肌に特に効果的。
ポメロヘアケア
アルコール不使用の柑橘系ヘアケアシリーズ。ビタミンB5、キシリシン、アミノ酸を配合し、抜け毛を減らすだけでなく、栄養が髪の内部に浸透し、ダメージを受けた髪を修復する。仕上がりは弾力がありながらも、ふんわりと柔らかい。
Cocoon Vietnamは積極的にインフルエンサーマーケティングを取り入れ、ブランドの認知度を向上。ベトナムの有名インフルエンサー「Khoai Lang Thang」「Đào Bá Lộc」「Trinh Phạm」、さらにラッパーの「Suboi」などを起用し、Z世代の若者たちに強くアピールしている。
2024年12月には、日本市場にも進出。神戸マルイのポップアップストアで先行販売を実施し、多くの注目を集めた。今後は日本市場のみならず、世界へとその勢いを拡大していくことが期待される。
アロマ専門家のHuynh Hai Yen氏によって2013年に設立されたコスメブランドNauNau(ナウナウ)は、ベトナムの天然素材を使用し、環境に配慮した製品を展開している。
ベトナム南部の山岳地帯に位置するラムドン(Lam Dong)省に独自のハーブ農園と製造工場を所有。製品の品質を徹底管理するため、自社でハーブの研究・生産を行っている。
NauNauの製品は、ベトナムの気候、土壌、肌の特性に基づいて研究・開発されており、ベトナムの若者から高い評価を得ている。また、シンプルながら洗練されたデザインもブランドの魅力のひとつだ。
NauNauのオーナーであるHuynh Hai Yen氏が創設した香水専門ブランドY25- Artisan De Parfumの「ベトナムの香り(Scents of Vietnam)」シリーズの人気が高い。
このシリーズでは、ハノイ(首都)、ニャチャン(海の街)、フエ(古都)、ホーチミン市(南部最大商業都市)など、それぞれの都市の特色を表現した香りを楽しめる。ベトナムのお土産としても評判だ。
※「Y25- Artisan De Parfum」はNauNauでも販売。
ハノイ薬科大学の薬剤師チームによって設立および開発されたヴィーガンコスメブランドCococherry Mộc An(ココチェリーモックアン)。緑茶、コーヒー、ゴーヤ、ターメリック、グリーンバター、米ぬか、ココナッツなどのさまざまな種類の栄養油などの天然原料が豊富で豊富なベトナム産の原材料を使用。
製品を作る上での考え方として、不要な添加物を最大限に排除すること。ベトナムの人々にとって最も安全で効果的な天然スキンケア製品として、Z世代のベトナム人女性たちからも強い支持を得ている。
④ おわりに
ベトナムのZ世代を中心に広がるヴィーガンコスメのトレンドは、単なる一時的なブームではなく、持続可能な社会への意識の高まりと、それに伴う消費行動の変化を反映したものだ。
もともとベトナムは仏教徒が多い国であり、陰暦の新月と満月の日(毎月1日と15日)は菜食の日とされている。そのため、ヴィーガンに対する抵抗感が低いことも、このトレンドが広がった理由のひとつだろう。
また、ベトナムではSNSマーケティングが急速に発展しており、Z世代に向けた効果的なマーケティング戦略がヴィーガンコスメの人気拡大に寄与している。
さらに、ヴィーガンコスメ市場の成長は、関連産業にも波及する可能性がある。たとえば、天然原料の栽培・供給、エコパッケージングの開発、クリーンビューティーを推進するサロンやスパの拡大など、今後さらなる市場の広がりが期待される。
ベトナムの若者にとって、ヴィーガンコスメは今のところ「おしゃれ」「トレンド」「安全性が高い」といったイメージで広がっている。しかし、今後はそれだけでなく、環境問題や倫理観(動物実験を行わないなど)への意識が高まり、より深い理解と共感が広がっていけば良いと感じる。
もちろん、ヴィーガンコスメは単なる流行ではなく、使用する原材料や品質、効果の面でも魅力的な商品が多い。ヴィーガンコスメでなくても使ってみたいと思うほど、優れた製品が次々と登場している。ベトナムのヴィーガンコスメ市場は、まだ成長の初期段階にあるが、その潜在力は計り知れない。
Global Viewerとは
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執筆者プロフィール
TNCライフスタイル・リサーチャー
ベトナム在住歴15年。旅行や生活情報などベトナム情報を発信している子育て主婦。ベトナム産のコスメに興味を持ち始め、現在色んなベトナムコスメを比較して楽しんでいます。
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編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人。Global Market Surferのサイト作りを担当。
- 2025/03/17
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