【アジア各国のZ世代】手軽に楽しく健康を管理する韓国Z世代
パンデミック以降、韓国では健康を意識する若い世代が増えている。楽しみながら健康を管理する「ヘルシープレジャー」がトレンドとなり、ゼロシュガーなど健康に害となる成分や要素を取り除いた商品が人気を集めている。また、手軽に必要な成分を補給できるサプリメントの需要も拡大している。
さらに最近では、特定の健康法やウェルネス活動に深く没頭する「ヘルスディギング族」と呼ばれる人々も登場している。自分に合った健康管理の方法を模索しながら、無理なく、簡単に実践するZ世代が増加している。
① Z世代がウェルネスに接するきっかけを作った「OLIVE YOUNG」
インテージが保有する生活者データベース「Global Viewer」の「関心のあるカテゴリー」を見ると、韓国で特別に高い数値を示しているカテゴリーは無いものの、他国と同様に「食/飲料」「美容」「健康」が1位から3位を占めている。
(Banner:SC5. 関心のあるカテゴリー (SA) : 1st)
美容大国と呼ばれる韓国で「美容」が19.7%にとどまっている点はやや意外だが、Z世代とはあまり関係がなさそうな「健康」が15.9%を占めており、「美容」と3.8ポイントしか差がない点にも注目したい。
これは、韓国の美容・コスメ業界で「アンチエイジング」から「スローエイジング」へとトレンドが移行している影響と考えられる。老化に抗うのではなく、自然なプロセスとして受け入れ、それをゆっくり進行させるという考え方であり、適切なスキンケアはもちろん、体の内側から健康を保つことが重視されている。
つまり、最新の美容トレンドを実践する上でも「健康」は欠かせない要素であり、「ヘルシープレジャー」や「ヘルスディギング」といった考え方に加えて、「スローエイジング」を実践する上でも「健康」がキーワードとなっている。
手軽に健康を管理するため、ビタミンやプロバイオティクスなどの健康機能食品の需要が増加している。しかし、韓国には日本のようなドラッグストアが存在しないため、従来は薬局や大型スーパーマーケットのサプリメント売場、あるいは健康機能食品専門店で直接購入する必要があった。こうした店舗では、売場の店員自身がおすすめするサプリメントを強く勧めてくることも多く、じっくりと商品を選べないこともあった。
このような状況を変え、Z世代が気軽にサプリメントを購入できるきっかけをつくったのが「OLIVE YOUNG」である。
OLIVE YOUNGは、全国に1,300店舗以上(※1)を展開する韓国No.1のヘルス&ビューティーストアであり、CLIO、rom&nd、3CEなどの人気コスメブランドを揃え、若い女性や外国人観光客から圧倒的な支持を集めている。
以前はセレクトコスメショップという印象が強かったが、コロナ禍以降はWケア(女性健康商品)やサプリメント、インナービューティー、健康食品などの商品ラインを拡充し、ウェルネスを前面に押し出す戦略を展開している。
※1 2024/12/4 ヘラルド経済
https://biz.heraldcorp.com/article/10008379?ref=naver
店舗内にはサプリメント&インナービューティー関連商品専門のコーナーがあり、種類も豊富。
2023年の半ばから、液体と錠剤(サプリメント)が1本になった二重製剤型のマルチビタミンをよく見かけるようになり、いま現在も流行している。中でも、ビタミン10種とミネラル7種、ベータカロテンを加えた計18種の栄養素を一度に摂取できる「I’m vita イミューンショット」(34,900ウォン/16本入り)や、ドイツのプレミアム健康機能食品ブランド「orthomol immune マルチビタミン&ミネラル」(34,900ウォン/7本入り)が人気を集めている。
二重製剤型の商品は、携帯性に優れ、水が無くても摂取できる点や、1日1回の摂取で効果が期待される点など、忙しい現代人の生活スタイルに適している。美味しく、手軽に健康管理ができるという点が「ヘルシープレジャー」の考え方とも重なり、大ヒットにつながっている。
OLIVE YOUNGではオフライン売場のほか、モバイルアプリ内にウェルネス専門館「ヘルス+(プラス)」をオープンし、いつでもどこでもウェルネス商品を購入できるよう利便性を高めている。「ヘルス+」では、健康に関する情報やおすすめアイテムなど、さまざまな有益なコンテンツも公開している。
また、性別、年齢、健康状態(妊娠中)、対象部位(目、皮膚、腸、筋肉など)、商品効能(抗酸化、免疫管理、体脂肪管理など)といったさまざまな角度から検索できる「自分に合うサプリメント探し」機能が備わっており、消費者の特性に最適化された商品を見つけることができる。
人気商品を中心に日替わりでセールを実施しているのも魅力の一つ。メイン画面の「今日の特価」コーナーを開けば商品を一目で確認でき、アプリに会員登録すると毎月さまざまなクーポンが配布され、よりお得に購入できる。
ウェルネス分野を拡大した結果、OLIVE YOUNGの2023年における健康機能食品の売上は、前年に比べて45%以上増加した。(※2)
ここ最近、コンビニやダイソーでも健康機能食品の販売に力を入れている。オンラインでは箱単位での購入が必要な商品も、コンビニでは1個から購入することが可能。ダイソーでは市販価格の6分の1程度となる3,000~5,000ウォンで購入できることから、健康機能食品やサプリメントの摂取はこれまで以上に日常化し、今後さらに若年層へと広がっていくと考えられる。
※2 2024/11/27 ソウル経済
https://www.sedaily.com/NewsView/2DH0B63SRK
② 進化するヘルシープレジャーマーケティング
コロナ禍以降、カロリーを抑えた健康的な簡便食や砂糖不使用の商品が次々と登場し、ゼロシュガー/ゼロカロリーの炭酸飲料は大ブームを経て広く定着した。
日本ではコカ・コーラゼロなど砂糖不使用のRTD商品(すぐに飲めるもの)はかなり前から普及していたが、韓国では「ゼロカロリーはまずい」というイメージが根強く、2020年頃までは一般的ではなかった。
しかし、「ヘルシープレジャー」や「スローエイジング」といったトレンドの浮上により、アルロースやステビアなどで甘みを出したゼロシュガー/ゼロカロリー商品の需要が拡大。RTD飲料、菓子、酒類に加え、アイスクリーム、栄養ドリンク、缶詰、ZERO SUGAR(糖類 0)のインスタントラーメンまで登場している。
このようなゼロシュガー商品のCMには、NewJeansやLE SSERAFIMなどの人気ガールズグループやアイドルが起用されることが多く、Z世代を主要ターゲットとしていることがうかがえる。
ブームとなった背景には、代替甘味料技術の発達も大きく関係している。砂糖を使用しなくても、既存商品に劣らない味を再現できるようになったことで、ゼロシュガー商品に対する抵抗感が薄れていった。
(Banner:D4S1. 飲料カテゴリー別 購入時重視点【ベース:各カテゴリー過去1か月飲用者】 : 炭酸飲料)
(Banner:F9S2. 食品カテゴリー別 購入時重視点 (MA) : お菓子・ジャム)
「購入時重要視点」を見ると、「炭酸飲料」に関して「低カロリー」と答えた割合は31.3%で、10カ国の中で最も多かった。「味・風味が良い」は他国と比べて特に高い数字ではなかったものの、約半数の47.5%が重要視している。また、「お菓子・ジャム」のカテゴリーでは「味・風味が良い」が56.4%で10カ国中1位、「低カロリー」も17.3%で3位となっており、ゼロシュガー商品が多く発売されている炭酸飲料や菓子の購入時には、低カロリーでありながらも美味しさが重視されていることがうかがえる。
ゼロシュガーブームはZ世代の飲酒文化にも変化をもたらした。果糖を使用しないゼロシュガー焼酎「セロ」(1,800ウォン/360ml)は、さっぱりとして柔らかい味わいが特徴。
麦と米が主原料の希釈式焼酎(日本の甲類焼酎)であるが、焼酎本来の味を出すために蒸留式焼酎(日本の乙類焼酎)を加えることで、焼酎固有の味を活かした点が支持され、大ヒットとなった。発売から約2年で累積販売本数は5億本を突破し(※3)、ゼロシュガー焼酎は今や若者たちの「常識」となっている。2024年4月からはアプリコット果汁を加えた「セロ アプリコット」(1,900ウォン/360ml)も発売され、商品ラインナップの拡大が進んでいる。
※3 2025/3/12 ニュース1
https://www.news1.kr/industry/distribution/5716925
https://www.instagram.com/p/DGweDDMSbgF/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA
ロッテウェルフードの無砂糖・無糖類ブランド「ZERO」シリーズは、これまでお菓子をはじめ、アイス、乳加工製品などさまざまなカテゴリーで21種類の商品を発売している。従来の商品と比べて味や品質が劣らない商品を実現するため、長い時間をかけて開発を進めてきた。2024年には500億ウォン以上の売上を記録し、発売初年度(2022年)と比べて約214%の成長率を達成(※4)。国内でのゼロシュガー食品の定着を後押しした。
※4 2025/3/10 ハンス経済
https://www.hansbiz.co.kr/news/articleView.html?idxno=737655
2024年6月には、大手食品メーカーのハリムから、「ゼロ小麦粉」の「oh!今日のタンパク プロテインクッキー」(3,000ウォン/40g)が発売。小麦粉の代わりに100%国産米粉を使ったグルテンフリー商品。チョコレートとバターの深い風味とクッキーのサクサクした食感をそのまま楽しみながら、良質なたんぱく質と食物繊維も摂取できる。
ゼロ小麦粉の商品はクッキーのほか、他社から乾麺やロールケーキが発売されていて、これからも商品が増えていきそうだ。
https://www.instagram.com/p/C8lH6kIIUwf/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA
そのほか、「ゼロカフェイン」「ゼロアルコール」などの商品も数多く登場しており、ゼロシュガーから始まったゼロ食品ブームは、次の段階へとアップグレードしつつある。
おわりに
韓国では年齢を重ねてもスタイルを維持し、お洒落を楽しんでいる人が多く、日本に比べて美意識が高いと感じる。美容整形で有名なのも、それだけ「美しくありたい」と思う女性が多いからだろう。
健康やウェルネスに対する関心が高まったことで、肌の健康、腸の健康、体重管理など、ビューティーと関連付けた健康ニーズが強まっている。このような「健康=美しさ」の傾向は今後も加速していくだろう。それに伴い、Z世代の健康トレンドはさらに浸透し、定着化していくものと予想される。
Global Viewerとは
インテージがストックする11カ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリー(※)に関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。
※カテゴリー例:
食品・飲料、パーソナルケア・化粧品、ハウスホールドケア、育児・介護、モビリティ、家電、スマートホーム、住宅、エンタメコンテンツ(ゲーム・音楽等)、金融、保険、旅行(訪日)、オンラインサービス 等
本記事でご紹介したような国別比較分析のほか、1か国における属性別分析(性年代・収入等)なども可能。
詳細はこちら。
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執筆者プロフィール
TNCライフスタイル・リサーチャー
韓国在住14年目の主婦。韓国人の夫とともに海に囲まれた仁川・永宗島で暮らしている。趣味はカフェ巡りと日本旅行。
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編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。Global Market Surferのサイト作りを担当。
- 2025/04/18
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