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インドネシア・ジャカルタのキッチン事情:SEC(社会経済クラス)別でどう違う?

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経済成長と人口拡大が著しいインドネシアの首都ジャカルタ。社会経済クラス(SEC)による生活水準の差は大きく、同じジャカルタ内でも、SECにより暮らしぶりは大きく異なる。本記事では「キッチン・食」にフォーカスを当て、インテージの海外生活者ビジュアルデータベース「Consumer Life Panorama(通称:CLP)」の実際の写真を元に、ジャカルタのSEC上位層とSEC下位層のキッチン環境・食生活の違いを考察していく。

※本コラムにおいて、社会経済クラス(SEC)を世帯月支出で以下のように定義している。
SEC A:IDR 6,000,000以上
SEC B:IDR 4,000,001~6,000,000
SEC C:IDR 2,500,001~4,000,000
SEC D:IDR 1,750,000~2,500,000

海外(特にアジアなど新興国)においては、SECによる生活水準の差が先進国と比べてはるかに大きいため、マーケティングにおけるターゲット設定の重要な基準の一つとなる。ターゲットとするクラスの生活者が、実際にどのような住環境で暮らしているのかイメージするのに、本稿が参考になれば幸いだ。

インドネシアの家庭では何料理を食べているのか

そもそもインドネシアでは、どのような料理が食べられているのだろうか。
以下は社会経済クラス(SEC)ごとに普段自炊している料理のジャンルを聞いた結果である。インドネシア料理が中心だが、中華料理を始め西洋料理や日本料理も作っていることが分かる。特に、SEC上位層ほど海外の料理を作っている傾向が見られた。 (中華料理については、インドネシアのSEC上位層は中華系人口が多くを占めることも要因の一つと考えられる。)

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出典:インテージGlobal Viewer(2024年)

インドネシアのキッチン事情

<SEC上位層(A・Bクラス)-様々なキッチン家電を揃え、健康を意識した食事->

まずはSEC上位層(A・Bクラス)のキッチンを見ていこう。
はじめに電子レンジに着目してみると、日本では大半の世帯が持っているであろう電子レンジは、上位層でも半数程度の所有率である。
SEC上位層のうち電子レンジを保有している世帯では、比較的新しく多機能そうな見た目の電子レンジを所有しているケースが多かった。

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出典:インテージConsumer Life Panorama
ジャカルタのSEC上位層が保有する電子レンジ。
様々なボタン・メニューがあり機能が多岐にわたっている機種。

特にジャカルタでは、安価な屋台や食堂が充実していることに加え、近年はフードデリバリーサービスも普及している。その都度温かい料理を手軽に取ることができるため、電子レンジの普及率が低いと考えられる。
また、コロナ禍以降そのニーズが急速に増しているとはいえ、冷凍食品の普及が比較的進んでいないこともその一因といえる。群島国家という地理的特性上、冷凍食品の輸送が容易ではない。そのため、電子レンジで温めて食べるだけの冷凍食品がそこまで浸透していないことが容易に想像できる。

続いて冷蔵庫の中を見てみよう。
温め直しのニーズは低いものの、料理を保存できる冷蔵庫の所有が少ないわけではない。実際にSEC上位層では全ての家庭が冷蔵庫を所有している。
冷蔵庫の中身は、調味料や野菜・果物などが一般的。電子レンジを保有している家庭では、タッパーなどで調理済みの料理を保存している家庭も見られた。

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出典:インテージConsumer Life Panorama
ジャカルタのSEC上位層世帯の冷蔵庫の中。
電子レンジを保有している世帯では、タッパーに入った食べ物も見られる。
 

また、SEC上位層は半数以上がミキサー・ジューサーを所有していた。
インドネシア料理では香辛料を多く使うため、ミキサーを使って「サンバル」(唐辛子ベースのソース)などの調味料を作る調合する。また、南国フルーツを手軽に摂取できることや近年の健康志向の高まりから、ジューサーを使って自宅でフレッシュジュースを作る家庭も多い。加えて、風邪のひき始めなどに自然療法として飲まれる伝統飲料「ジャムウ」を作る際に、ショウガやウコン、ハチミツなどをブレンドするのにも使われるそうだ(ジャムウについての詳細は、過去コラム参照)。

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出典:インテージConsumer Life Panorama
ジャカルタのSEC上位層世帯が保有しているミキサー・ジューサー。

SEC上位層でエアフライヤーを所有する家庭がいくつか見られたのも、健康意識の高まりからだろう。インドネシア料理は揚げ物料理が多いため、ヘルシーに調理できるエアフライヤーは重宝される。

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出典:インテージConsumer Life Panorama
ジャカルタのSEC上位層世帯が保有しているエアフライヤー。

料理でも使われる飲料水はどうだろうか。
インドネシアでは煮沸消毒をしないと水道水を飲むことができない。
そのため、飲料水としてミネラルウォーターを購入することがほとんどである。
SEC上位層では、ウォーターサーバーを設置している家庭が多くみられたが、ケトルややかんも同様に使用されている様子であった。

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出典:インテージConsumer Life Panorama
ジャカルタのSEC上位層世帯が保有しているウォーターサーバー、ケトル、やかん。

<SEC下位層(C・Dクラス)-料理は都度食べきれる量を調理する->

SEC上位層では半数が所有している電子レンジは、SEC下位層の家庭では保有する割合が下がる。そのため、食事は外食や中食で済ませるか、自宅で調理をする場合は都度食べきれる量を調理している。

冷蔵庫は上位層と同様、ほぼ全世帯が所有していたが、庫内の様子は異なる。
食材や調味料のみが保存されているケースが多く、調理済みの料理を冷蔵している家庭は上位層よりも少ない印象だ。調理済みと見られる鍋を直接冷蔵庫に入れている家庭も見られたが、電子レンジがない代わりにコンロで再加熱するのだろう。

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出典:インテージConsumer Life Panorama
ジャカルタのSEC下位層世帯の冷蔵庫の中。
野菜や卵などの食材が多い他、鍋がそのまま入れられている。

SEC上位層で半数以上が所有していたミキサー・ジューサーだが、SEC下位層ではあまり所有されていないようだ。
エアフライヤーに関しては所有している世帯は確認できなかった。

飲料水事情については、SEC上位層同様にウォーターサーバーを所有している世帯が多い。
一方で、SEC上位層と比較すると、下位層ではケトルややかんを使う家庭が多いようだ。

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出典:インテージConsumer Life Panorama
ジャカルタのSEC下位層世帯が保有するウォーターサーバーややかん。

おわりに

SEC別にみたインドネシアのキッチン環境の違いはいかがだっただろうか。
今回のコラムでは割愛したが、インドネシアの中間~富裕層ではメイドを雇うことも珍しくない。そのため、メイドに炊事をすべて任せるケースもあれば、炊事以外の家事をメイドに頼み、自身は時間をかけて料理を楽しむケースなどもあるため、様々な食事スタイルが考えられることを念頭に置いておきたい。

Consumer Life Panoramaとは

世界18か国1000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者理解に役立つ。
詳細はこちら

本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    大塚 早紀

    2022年インテージ入社。電機業界を中心にDCG領域のマーケティング・リサーチに携わる。

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    編集者プロフィール
    高浜 理沙

    日系のFMCGメーカー(化粧品、ベビー用品、食品・飲料等)のアジア・欧米でのマーケティング・リサーチ支援に従事したのち、2019年より現職にて、日系企業の海外マーケティング・リサーチのためのソリューション開発や、セミナー等の対外発信を行う。
    子どもが生まれてからは、家族と自身の心身の健康をいかに保つかが最大の関心事で、様々なグッズ・サービスを試している。

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    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
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